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「新入社員教育」基本のキホン ~「わからないことがわからない」への対処法

横山信弘経営コラムニスト
新入社員に正しく教育しているか?(写真:アフロ)

新入社員の最初の半年

10月に入りました。4月に入社した新入社員は社会人となり、ちょうど半年を過ごしたことになります。

「まだ半年」と思う人もいれば、「もう半年」と受け止める人もいることでしょう。現場に入ってコンサルティングをする私からすれば、この最初の半年間で、その人の仕事人生が大きく変わると言っても過言ではないと思っています。よく「最初が肝心」と言いますが、まさにその通り。この半年で得たものは、その後の人生に大きく生きてきますし、この半年で失ったものは、その後の人生でなかなか取り戻すことができないでしょう。

新入社員に何を与えるのか?

新入社員に、真っ先に与えるべきことは「考える習慣」だと、私は考えています。

人が何らかの意思決定をする場合、必ず「考える」というプロセスを経ます。もう少し噛み砕いて解説すると、「考える」とは「脳がデータ処理をする」という表現に変換できます。つまり正しく「考え」て「意思決定」するためには、脳の処理能力と処理データの精度に左右されると言えるのです。

もともと脳の処理能力が高い人は問題ないでしょうが、新入社員にそれを求めるのは酷です。本人たちは「それぐらいできる……」と思うでしょうが、組織の目的と、そこに関わる組織人たちそれぞれの思惑、そして新入社員ではどうにもならない、その組織特有の風土やシステムを意識しながら最適解を「考える」というのは、並大抵の処理能力では叶いません。

筋力と同じで、まずは処理能力をアップさせるためのトレーニング(筋トレに似ている)は不可欠。最初の6ヵ月間は、このトレーニング期間だと思い、それなりに脳に負荷がかかるような仕事をする必要があります。学生アルバイトでもできるような、考えなくてもできる単純作業はダメ、ということです。

そして次に、「処理データの精度」です。社会に出たばかりの新入社員に、正しい意思決定をするための精度の高いデータや知識はありません。このことは、とても重要です。新入社員の多くは、無垢な存在。ピュアな心情を持っているのです。

「いいか、大それた夢は見ないほうがいい」

「頑張っても、給料が増えるわけでもない。頑張るだけ損だろ?」

「この会社ではやりがいを感じられない。お前もそのうち、きっとわかる」

正しい教育を受けていない先輩社員たちのこのような無邪気な発言に、良くも悪くも強い影響を受けます。

「最近モチベーションが上がらないから、どうしても仕事に身が入らない」

と先輩がつぶやけば、

(そうか、仕事に精を出すためには、モチベーションとやらが必要なのか)

と思い込むことでしょう。

「わが社は特別だから、その本に書いてあることは当てはまらないよ」

と上司が言えば、

(そうか、わが社は他社と違って、特別なんだ)

という先入観を抱きます。

「大きな夢を持っても疲れるだけ」「頑張るには内発的動機付けが必要」「意味のない仕事をやってもしょうがない」……など等。無垢で純粋でピュアだった心情が、徐々に汚れていきます。そしてまっすぐだったはずの思考パターンにもバイアスがかかり、偏った思い込みフィルターを通して現実を目の当たりにし、ガッカリすることになるのです。「採用面接で人事の人に言われたことと全然違う」と、愚痴のひとつも出てくるでしょう。

新入社員には、正しい意思決定する判断材料が決定的に少ないことを知るべき

紛れもない事実は、社会人としての常識、その会社における業務内容、どうすれば自分のやりたい仕事を任されるかの手順……といった一連の「データ」「知識」は、まだ経験のない新入社員の脳の長期記憶には存在しない、ということです。そして、その会社ですでに働いている上司や先輩社員の脳の長期記憶に、暗黙知としてでもそれらのデータや知識があるか、というと必ずしもそうではありません。

6年以上、年間5000名以上の経営者やマネジャーに講演やセミナー、現場で接した経験からして、私は断言します。先輩や上司たちの多くも、精度の高い「処理データ」を持っていないのです。だからこそ、彼ら彼女らも新入社員の教育に困っています。どう躾し、どう手助けし、どう成長させたらいいか、日々頭を悩ませています。

しかし残念ながら、会社側がそれを理解しているかというと、ほとんどそのような意識はありません。新入社員に仕事を教えるのは先輩や上司の役割である。よほど特殊な技能でない限り、外部の専門家に頼るという選択肢がないのです。

合言葉は「OJT(オージェイティー)」

専門の技能ならともかく、ビジネスパーソンとして一般的常識や知識――経営とは何か、会計や財務とは何か、マーケティングとは、マネジメントとは、人はどのように行動を変え、どのような報酬を得ることで幸福感を覚えるのか、会社はなぜ存在するのか――このような大切なことを、身勝手な先入観なしに教えてくれる先輩社員はほとんどいません。もちろんOJTで教えられるような代物でもないのです。

ほとんどの先輩は何も教えずに、

「わからないことがあったら、いつでも言って」

と優しく声を掛けてくれるだけです。これは、

「私は何を教えていいかわからないから、私が何を教えていいか、新入社員のあなたが私に教えてね」

と言っているのと同じです。

したがって新入社員は自分自身で、精度の高いデータや知識を手に入れ、新入社員しか持ちえないピュアな心情に「抗菌加工」すること。これは自分の大きなポテンシャルが萎まないようにするためにも、大変重要です。意識の高い会社に就職できたら、OJTなどに頼らず、外部の専門講師などに頼って専門教育を受けることができるでしょう。しかし、それが叶わないなら自分で知識武装する努力をしましょう。会社や上司に不満を持たないためにも、自分で自分を律することが重要です。自分のキャリアは自分で作り上げていく時代なのです。

つまり新入社員教育は、新入社員自身が、自分に向けてやるべきだ、というのが私の考えです。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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