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「質問の答えになっていないかもしれませんが」と平気で言う人のジコチュー感覚

横山信弘経営コラムニスト
質問の答えになっていないかもしれないことを、なぜ言うのか?(ペイレスイメージズ/アフロ)

講演の質疑応答でよく見られる

経営者や学者の講演会を聴きにいくと、最後に「質疑応答」があるときがあります。聴講している人が、

「大変興味深い講演ありがとうございます。さて社長にひとつ質問がございます。御社がこのように成長してきた理由をひとつ挙げるとすると、何があるでしょうか? ぜひ教えていただきたいと存じます」

このように質問すると、

「当社が成長してきた理由をひとつ挙げるとすると、やはり当社の理念にもありますとおり、真心を持って商品を開発し、誠実にお客様に向き合う。この考えを社員に徹底させてきたからではないでしょうか」

こう返ってくる。これが普通の受け答えです。質問に対する答えがキチンと噛み合っています。しかしたまに、こう返す人がいます。

「当社が一番成長してきた時期は、ちょうどITバブルの時代と重なってましてね。あの時代は何をやってもうまくいきました。仕事がドンドン来ましたから、若い人を採用することに一番注力しましたね。ただ人を増やすと利益が出なくなります。そこで同時にコスト削減にも力を入れて……。そうですね、たぶん販管費を抑制したんじゃないかな。あの時期は。ITバブルの波になんとか乗ることができたのはよかったですが、当社の成長はやはり講演でも話したように、その前に立ちあげた新事業が軌道に乗ったことでしょうかね。あれがやっぱり一番でしょう。質問の答えになっていないかもしれませんが、そういうことです」

ご自身が最後に付けたしているとおり、質問の答えになっていません。ところが質問の答えになっていないのにもかかわらず、平気でこのような受け答えをする人がとても多いのです。「質問の答えになっていないかもしれませんが」と言う人の受け答えには3つの特徴があります。

● 質問の論点とずれたことを言う

● 話が長い

● 頭が整理できていない

リアルに聴いていると、何となくごまかされてしまいますが、このようにあらためてテキスト化すると、何を言っているのか本当によくわかりません。私は日々、このように「質問の答えになっていないかもしれませんが」と言う人とばかり接しています。

会議ではもっとヒドイ

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルティングをしています。したがってクライアント企業の経営会議や営業会議に参加することも多い。業績の悪い会社ほど、不毛な議論、無意味な報告事項に明け暮れている場合があるので、私は会議中にいろいろと質問させてもらいます。

「2時間あまり会議をされましたが、参加者に対して現状の報告だけさせておいて、今期の目標に対する施策を何も確認していません。部長、そのあたりをしっかりと聞くべきではないでしょうか」

たとえば私がこのように質問すると、このように返す人がいます。

「その点はですね。私も心得ているところです。たとえば来月には1200万円の案件が確定する予定でして、これが決まれば大きいと思います。ただ、そのためには、お客様の要望通りの生産体制をうちが確保できるかどうかがキモになってきます。横山さんの質問の答えになっているかわかりませんが、私はこのように考えています」

当然、話の論点がずれているので、私はもう一度質問しなおすことになります。「そうですか。なるほど、わかりました」などとは言いません。

「私の質問をもう一度繰り返します。今日の会議では、参加者に対して現状の報告だけさせておいて、今期の目標に対する施策を何も確認していません。2時間近くやっているにもかかわらず、ですよ。課長ひとりひとりに、今後の施策を聞いたほうが良いのではないか、と私は聞いているのです」

このように言ってはじめて、

「あ、そういうことですか。課長ひとりひとりに今後の施策を聞かなくちゃいけないってことですね……。確かに……」

と答えてくれればまだましですが、逆ギレする人も少なくありません。

「課長ひとりひとりに聞かなくても私が答えたからいいじゃありませんか。1200万の案件が決まれば、今期の計画にぐっと近づきます。私はそのことを言いたかったんですよ」

などと。

こちらは会議の「あり方」に言及しているのですから、完全に論点がずれています。話が噛み合わないのです。

話を噛み合わせるために

質問には、必ず話の論点となる「幹」があります。そして「幹」から「枝」が出ており、「枝」から「葉」が出ています。重要なことは、「幹」「枝」「葉」――それぞれが「センテンス」であることです。「ワード(単語)」ではありません。センテンスは、複数のワードを繋げて構成されています。センテンスは「線」であり、ワードは「点」だと考えるとわかりやすいでしょう。センテンスの構成要素が合っていけば、話は噛み合いますが、ワードが合っているだけだと、その「点」を中心に話が捻じれていきます。

「会社の成長」というワードだけを受け止めると、そのワードを切り口に思いつくことを言ってしまいます。「今期の目標に対する施策」という「枝」の部分に注目してしまうと、会議のあり方という「幹」の部分を忘れてしまいます。

「質問の答えになっていないかもしれませんが」とばかり言う人は、日ごろから頭の整理ができていません。相手の話を「要約」して受け止められませんし、自分の話したいことを優先して話す悪癖があります。特に経営者や管理者などは、「質問の答えになっていないかもしれませんが」と言ってごまかさないよう、話の「要約力」を身に付ける必要があります。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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