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W杯2次予選シンガポール戦日程はホーム&アウェイを入れ替えか

四方健太郎鎌倉インターナショナルFC代表取締役オーナー
2月に8000人収容のジャランベサールスタジアムでU-22日本代表が試合を行った

4月14日、ロシアワールドカップのアジア2次予選の組み合わせ抽選会が行われ、日本代表はグループEでシリア、アフガニスタン、シンガポール、カンボジアと同組となった。

代表チームにとって、そして現地まで応援に駆けつけるサポーターにとっても、治安が著しく懸念されるシリアやアフガニンスタンでのアウェイゲームの開催の可能性や開催地については気を揉んでいるところだ。

しかし一方で、組み合わせとともに発表された開催スケジュール上、頭を悩ませている国がある。そう、シンガポールだ。

日本代表と自国シンガポールで対戦が予定されている6月16日は、同国にてSEA Games(東南アジア競技大会:オリンピックの東南アジア版)が開催される2週間の最終日にあたる。つまり閉会式が行われる日なのである。人口わずかに550万人程度の都市国家シンガポールでは、国際試合が行えるようなスタジアムは極めて少ない。昨年10月の日本代表vsブラジル代表で使用された新しいナショナルスタジアムは5万5000人を収容する開閉式ドームを持つ最新型スタジアムだが、何を隠そうこのSEA Gamesのために作られたものだ。

最新型のナショナルスタジアム(55000人収容)
最新型のナショナルスタジアム(55000人収容)

ゆえに、現実的に6月16日にワールドカップ予選日本代表戦にナショナルスタジアムを利用することはできない。そうなった場合、代替スタジアムの筆頭に挙がるのがジャランベサールスタジアムという、わずかに8000人しか収容できない人工芝のスタジアムだ。このスタジアムは2004年にワールドカップ予選でジーコジャパンがシンガポール代表と対戦した会場だ。

国全体の人口こそ少ないシンガポールだが、在留邦人の数の多さは世界トップクラスで、外務省への登録者ベースでも3万人を超える。実際にはもっと多くの日本人が住んでいる。先のブラジル戦においても多くの日本人がナショナルスタジアムに駆けつけた。それらに加え、日本や東南アジア周辺国から駆けつけるであろう日本サポーター、およびシンガポールのサッカーファンを鑑みると、この8000枚のチケットについては激しい争奪戦が予想される。

しかしながら、いま別の解決方法がにわかに注目を集めている。それは、日本とシンガポールのホーム&アウェイの日程を入れ替える、というものだ。関係者の話によると、両国サッカー協会の合意があり、AFC(アジアサッカー連盟)に認められれば、その入れ替えは現実になるという。

私が主宰するアジアサッカー研究所では、この入れ替え案は双方の協会/代表チームにとってメリットがあるとみている。

まずは開催スタジアム問題があるシンガポール側の事情だが、この入れ替えにより、SEA Gamesとのバッティングを避け、ドル箱である日本戦を5万5000人収容可能なナショナルスタジアムで行うことができる。10月のブラジル戦ではカテゴリー1のチケットがS$180(約16000円)が設定されるほど高価な入場料だったにも関わらず、5万人以上の観客を動員した。予算を多く持っていないシンガポール協会にとって、そして商売好きなシンガポール人のメンタリティを考えても、みすみすこの「ビジネスチャンス」を逃すとは考え難い。

ナショナルスタジアム内部
ナショナルスタジアム内部

また、日本側のメリットはこうだ。まずは、もし入れ替えた場合のスケジュールを見てみよう。

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<日本代表の予定>

6月11日 国際親善試合(ホーム)

6月16日 W杯予選 シンガポール戦(ホーム)

11月12日 W杯予選 シンガポール戦(アウェイ)

11月17日 W杯予選 カンボジア戦(アウェイ)

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6月と11月はこのように2連戦で行われるが、それぞれの月をホームとアウェイにまとめることができる。これによりチームの長距離移動を減らすことができ、選手のコンディション調整上メリットがある。また、ハリルホジッチ体制になって間がない現在の状況を鑑みると、6月16日のW杯予選初戦を慣れたホームで行うことも良い影響があるだろう。

さらに11月アウェイの2試合の開催国が近い(飛行機で2時間程度)ということも後押しする。また、カンボジアという比較的、練習や滞在環境が良くない国での試合までの調整場所として、ギリギリまで先進国であるシンガポールで調整することも容易にイメージができる。日本からカンボジアまでは直行便がなく、いずれにしてもどこか周辺国を経由せざるを得ないことを考えると、これまたシンガポール経由というのは至極自然な流れである。

シンガポール現地の情報によると、すでにシンガポール協会は日本側に打診をしていると噂されている。おそらく、テレビ放映権やマーケティング権などの契約調整などもあり、すぐには発表されないだろうが、この予定変更(入れ替え)は近々合意され、公式発表されるのではないかと推測される。

また別のサッカー関係者によると、アフガニスタンやシリアなどの治安に不安のある国については、抽選会の前から、代替開催地などが決定されていることが多いのとのこと。その場合、カタールやUAE等の中立国での開催が有力視されている。

さらには、グアム等の小さな国や地域だった場合、当該国の協会が「魂を売り」、自国でのホームゲームを開催せず、相手国で実施するケースもあるのだという。その場合、相手国で行ったとしても入場料収入などを自国の財布に入れられることを条件とすることもあるようだ。

いずれにせよ、 先の14日に抽選会を行い、組み合わせが決まったものの、スケジュールについてももう少し様子を見る必要がありそうだ。

鎌倉インターナショナルFC代表取締役オーナー

立教大学経済学部を卒業後、アクセンチュア株式会社の東京事務所にて、主に通信・ハイテク産業の業務改革・ITシステム構築に従事。2006年より中国(大連・上海)に業務拠点を移し、大中華圏の日系企業に対するコンサルティング業務にあたる。独立後、1年かけてW杯2010年大会に出場する32カ国を巡る『世界一蹴の旅』を遂行し、同名著書を上梓。(あわせて、経済界社より『世界はジャパンをどう見たか?』を上梓。)現在、東南アジアや南アジアなどでグローバル人材育成のための海外研修事業などを行う企業数社を経営。シンガポール在住で日本とアジア諸国をフィールドにしている。

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