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2016 ドラフト候補の群像/その9 岡崎大輔[花咲徳栄高]

楊順行スポーツライター
雑誌『ホームラン』毎年恒例のドラフト号が発売になりました

この夏の甲子園で、印象に残った会話がある。相手は花咲徳栄・岡崎大輔だ。大曲工との1回戦を6対1で突破し、次戦のクジを引いたときのこと。

「第9日の第2試合を引いてすぐ、"ああ、15日だから黙とう試合だな"とわかりました。2年だった昨夏の3回戦は、第10日第2試合。やはり8月15日で、黙とうにあたったんです。2年連続黙とうなんて……史上初かもしれませんね」

花咲徳栄といえばこの夏、ビッグ3の一角・高橋昂也を擁して3回戦まで勝ち進んだのだが、この高橋がまた、口が重い。マスコミに対してだけかと思ったら、日常でもそう。対照的に饒舌な岡崎によると、

「(高橋は)まったくしゃべりません。ただ、ショートの守備位置でその背中や雰囲気を見ていると、"調子がいいんだな"とわかります。ほかのみんなもそうだと思う」

もっとも、高校日本代表のチームメイトで、宿舎で同部屋だった寺島成輝(履正社)によると、「人見知りなんですよね。確かに無口ですけど、二人でいたらぼそっとおもしろいこともいいますよ」ということになるのだが。

2年連続黙とうは史上初……?

さて、この稿の本題は高橋ではなく、岡崎。1回戦の大曲工戦で5打数2安打と気を吐くと、試合前に黙とうした樟南との2回戦はノーヒットでエラーも演じたものの、広い守備範囲と強肩を披露。さるスカウトは、「いま、プロのファームに入れても遜色ない」と絶賛したものだ。岡崎はいう。

「昨年も、黙とう試合の前には岩井先生(隆監督)から戦争中の話を学んだ。今年は、試合の前々日に『ピースおおさか』(戦争と平和に関する調査研究や展示を行う施設)を見学したんです。本物の防空壕が展示されているのを見て、鳥肌が立ちました。いま野球ができているのは、決して当たり前じゃない。それを再認識することは、たとえば試合でピンチになったとき、"このくらい、なんてことはないじゃないか"という心の強さにつながると思います」

部員が100人を軽く超える花咲徳栄で、1年の秋にはセカンドの定位置を獲得した。2年夏はショートを守り、県大会の打率は4割超。甲子園でも三番を打ち、打率・462をマークしている。準々決勝では、敗れはしたが、優勝した東海大相模を相手に3安打。うち1安打は小笠原慎之介(現中日)からのものだ。これを含め3年のセンバツ、そして夏と出場した3回の甲子園7試合通算では、打率・333だ。

この夏が12打数3安打と、岡崎にしてはふるわなかったのには理由がある。春の関東大会で自打球が下腹部を直撃し、その後1カ月は程度の軽い別メニューの練習だったのだ。それでも、万全ではないながら夏の埼玉大会では打率・423。主将の意地を見せた。

「追い込まれてもヒットが打てるような、粘り強い選手を目ざします」

アピールしたいのはミート力、と本人は続けたが、なにぶんまだまだ細身。スイングはもっと力強くなるはずだ。

●おかざき・だいすけ/内野手/1998年9月17日生まれ/182cm75kg/右投左打

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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