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清宮だけじゃない! センバツの主役/その1 安田尚憲[履正社]との対話 Part1

楊順行スポーツライター
2014年のセンバツでは準優勝だった履正社(写真:岡沢克郎/アフロ)

やすだ・ひさのり●履正社●三塁手●188cm95kg●右投左打●履正社では1年秋から三塁の定位置を獲得し、2年夏は四番として大阪大会優勝に貢献。甲子園では3試合で12打数4安打を記録した。通算45本塁打。

……いよいよセンバツです。清宮については、もうさんざん聞かれていることでしょうから……。

「かまいませんよ(笑)」

……いや、あえて別の質問からいきましょう。アンケートを見ると、野球以外の特技が「日本史」。

「好きなんです。お父さん(功さん)が日本史の先生なので、家に歴史小説が多くあって。司馬遼太郎などですね」

……ほぉ、司馬遼。小学生にはちょっとむずかしいですよね。

「最初はマンガから入ったんです。で、わかりにくいところは勉強してから読みました。だから日本史は得意なんです。文系クラスなんですが、この前の試験では97点でした」

……! そりゃすごい。時代的には、どのあたりが好きですか。

「やっぱり幕末と戦国ですよね。大河ドラマでやっていた真田幸村には惹かれます。真田一族が、なんというか義に殉じたところ、負けるとわかっているのに信念を貫いたところがカッコいいな、と。それでいて、抜け目なく一族の生き残りにも手を打っているんですよね。そのへんが戦国時代のしたたかさというか」

……ふむふむ。

「三国志もけっこう好きでした。図書館で借りて読んだと思います」

……たぶん、吉川英治かな。となると、水滸伝なんかはどうですか。

「砦にこもるやつですね」

……梁山泊です。北方謙三さんの水滸伝、登場人物が何百人もいて、文庫で十数巻もあるんだけど、これがおもしろい。侍ジャパンの小久保裕紀監督が文庫版の解説を書いています。

「へぇ〜、そうなんですか。時間があったら、一度読んでみたいですね」

野球の師匠は兄です

……それはそれとして、やはり清宮の話題にもふれさせてください。昨秋、直接対決となった明治神宮大会の決勝では、お互いにホームランを放ち、結局履正社が優勝。

「まさか決勝で当たるとは思いませんでしたが、打席を見ていると清宮は、タイミングの取り方や待ち方が、自分の間合いなんですよね。どんな球に対しても突っ込まず、開かない。まだまだ向こうが上ですが、自分も体の大きさと飛距離では負けない気持ちでやっていきます」

……そもそも、清宮の名前を初めて意識したのはいつごろですか。

「名前は、中学1年くらいから知っていました。兄ちゃん(三菱重工名古屋野球部主将・亮太)はPL学園時代、1学年下のマエケン(前田健太)さんの球を受けていて、知り合いなんです。そのマエケンさんが、テレビ番組で清宮と対戦するのを見たのが最初です。それで高校に入った1年の夏、こっちは練習で汗まみれになっているのに、同じ1年の清宮は甲子園で大活躍……。そういう相手と対戦できたのは、すごくいい機会でした」

……話に出た亮太さんは12歳上と、だいぶ年が離れていて、「自分の野球の師匠」なんでしょう?

「中学時代までは、(三菱重工名古屋が)都市対抗に出たときなど、よく応援に行っていました、ボールとグラブを持って遊んでいた3歳のころから手ほどきしてくれ、小1のときに左打ちを勧めてくれたのは兄ちゃんです。"いまは左打ちが隆盛だけど、その対策として左投手が多くなる。すると右打者が有利になるけど、時間がたてばまた左の時代がくる"と考えたんだそうです。小さかったので、左打ちの苦労もなにもなかったですね。ただ、いまもまだ左打者が多く、右の長距離砲が貴重じゃないですか。兄ちゃんも"失敗だったかな"と(笑)。ただ正月に会ったとき、"これからは注目されているからこそ、打撃はもちろん守備、走塁、誰でもできる全力疾走もしっかりやれ"などと助言されました」(続く)

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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