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“働くママ”だけの制度ではない「子ども・子育て支援新制度」がいよいよ今日からスタート!

吉田大樹労働・子育てジャーナリスト/グリーンパパプロジェクト代表
子ども・子育て支援新制度のシンボルマーク

今日から2015年度が始まるが、本日から新たな子ども・子育て支援制度がスタートする。

消費税増税分を財源にしている制度であるため、子育て世代だけではなく、国民1人ひとりの理解が必要とされる制度ではあるが、まだまだ広く理解されているとは言えない状況だ。十分理解されていない理由の1つとして、「待機児童の解消」というところが前面になってしまい、“働くママ”のための制度という見方が強くなってしまっているということだろう。

もちろん待機児童の解消は重要なテーマの1つだが、それだけではないということを是非知ってもらいたい。

まず、在宅で子どもを育てる、いわゆる子育て中の“専業主婦”の方々にとっては、地域子ども・子育て支援事業が強化されるということだ。特に専業主婦の方々に関連する取り組みとしては、「利用者支援事業」や「地域子育て支援拠点事業」「一時預かり事業」などがある。

利用者支援事業は今回の新制度で新たに始まる事業で、その目的としては、

子ども・子育て支援の推進にあたって、子ども及びその保護者等、または妊娠している方が教育・保育施設や地域の子育て支援事業等を円滑に利用できるよう、身近な実施場所で情報収集と提供を行い、必要に応じ相談・助言等を行うとともに、関係機関との連絡調整等を実施し、支援

出典:内閣府

するということにある。

事業の内容は以下の2つ。

○総合的な利用者支援

子育て家庭の「個別ニーズ」を把握し、教育・保育施設及び地域子育て支援事業等の利用に当たっての「情報集約・提供」「相談」「利用支援・援助」

○地域連携

子育て支援などの関係機関との連絡調整、連携・協働の体制づくりを行い、地域の子育て資源の育成、地域課題の発見・共有、地域

で必要な社会資源の開発等

出典:内閣府

利用者支援専門員」が配置され、子どもを預けるということについての相談・支援だけではなく、子育てに関する様々な悩みに応えていこうというものである。事業主体としては、行政だけではなく、市町村の判断により地域の子育てNPOなどが担うことも可能で、より密度の濃い相談体制が期待されている。また、「母子保健型」というものもあり、妊娠期から子育て期にわたるまでの様々なニーズに対して総合的相談支援を提供する「ワンストップ拠点(子育て世代包括支援センター)」の整備も進められる。

また、保育所を利用していない0~2歳児を持つ家庭も依然として72.7%(人口推計年報平成25年10月1日)あるとされ、「地域子育て支援拠点」の強化も図られることになる。これまでも子育て親子の交流の場の提供と交流の促進などを進めてきた拠点事業であるが、「出張ひろば」や「地域支援の取組の実施」に対しても補助が行われることになり、より活発に活動することが可能になる。

さらに、家庭において保育を受けることが一時的に困難となった乳幼児を保育所等で一時的に預かる「一時預かり事業」も強化され、例えば、ネグレクトのおそれがあるママがリフレッシュのために利用するということも可能になる。

核家族化が進行し、地域のコミュニティ機能が弱まっている中で、こうした様々な在宅で子どもを育てる家庭に対する事業を強化することにより、悩めるママたちを救い、児童虐待を防止することなどにもつなぐことができるだろう。

こうした事業の実施主体は市町村となっていることから、実際に事業を展開していくためには、地域の住民の関心・声が重要になる。例えば、市町村・都道府県に設置されている「地方版子ども・子育て会議」などの場において議論が積極的に進められることが必要とだろう。

今回の新制度がすべての子育て世帯に対して手を差し伸べるものだということを多くの人に知ってもらいたい。

労働・子育てジャーナリスト/グリーンパパプロジェクト代表

1977年7月東京生まれ。2003年3月日本大学大学院法学研究科修士課程修了(政治学修士)。労働専門誌の記者を経て、12年7月から2年間ファザーリング・ジャパン代表。これまで内閣府「子ども・子育て会議」委員、厚労省「イクメンプロジェクト推進委員会」委員を歴任。現在、内閣官房「「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」に関する有識者懇談会」委員、厚生労働省「子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」委員、東京都「子供・子育て会議」委員などを務める。3児のシングルファーザーで、小・中・高のPTA会長を経験し、現在は鴻巣市PTA連合会会長。著書「パパの働き方が社会を変える!」(労働調査会)。

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