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生まれ変わった東京電力? ホールディングカンパニー制の中で廃炉部門はモチベーションを保てるのか

吉川彰浩一般社団法人AFW 代表理事
東京電力ホールディングスwebより、福島第一原発の廃炉はホールディングスに所属

4月1日、東京電力株式会社は名称の上ではなくなりました。ホールディングカンパニー制として組織の在り方は生まれ変わろうとしています。

筆者も務めていた会社が、ハーモニックTと呼ばれた馴染みのロゴがなくなり、時代の移り変わりを感じています。

電力自由化、発送電分離は電力事業者の中では想定されていたことであり、電力事業者としては初のグループ化としてニュースに流れたのが、東京電力のホールディングカンパニー制です。

筆者は、電力自由化ではなく廃炉・原発事故への責任を切り口に、東京電力の生まれ変わりを綴りたいと思います。

・東京電力という「名」を残した意義

ホールディングカンパニー制の以降に伴い、社名を変えることは恐らく内部でも検討にあがっていたと思います。東京電力=原発事故という直結される連想の中、電力自由化を控え社名に東京電力という名を消すことも経営戦略としてはあったのではという推測です。

しかしふたを開ければ、ロゴは一新したものの東京電力という名は消えていません。これは福島県の復興、被災された方々への賠償、原発事故並びに廃炉から逃げない、そうした意思表示ではないのかと。

ホールディングカンパニー制となっても、当然の事ながら原発事故への責任は変わらず負いつづけていくものです。東京電力という名を遺した意義は、原発事故への責任をしっかりと果たしていくという意義であって欲しいと願うばかりです。

・ホールディングカンパニー制の中で、東京電力はどう変わるのか

まずは簡単なホールディングカンパニー制で東京電力はどう変わるのか、まずはこちらから

新しく分社化された株式会社は3つ。東京電力フュエル&パワー、東京電力パワーグリッド、東京電力エナジーパートナーです。それぞれをざっくりと説明すれば、

燃料調達事業と火力発電所が発電事業を営む、東京電力フュエル&パワー

送配電事業を営む 東京電力パワーグリッド

電気を販売する事業を営む 東京電力エナジーパートナー

東京電力が行っていた事業を再編しただけでなく、各事業ごとにあった負債も分配されています。

これまで東京電力株式会社という同じ会社だった人間が、4月1日で別会社の人間になります。競争原理も働き、東京電力フュエル&パワーと東京電力エナジーパートナーは、電気を売り買いする関係になります。それぞれの会社で当たり前に黒字を出さなくてはいけないので、フュエル&パワー側は発電した電気を高くエナジーパートナーに買ってもらいたいわけですし、エナジーパートナーとして電気を安く仕入れ売りたいわけです。

利益会社でありながら公益事業の有様だった東京電力は、一般企業と同じく厳しい競争社会に飛びこんでいくことになります。東京電力はつぶれないは絶対ではなくなりました。分社化した各会社は一般企業と同じく、負債を抱え利益を挙げられなければつぶれることは現実問題としてあることになります。

その中で異彩を放つのは、東京電力パワーグリッドです。こちらは送配電事業ですから、競争原理を持ちこむことができません。なぜなら電力は停めてはいけないものだからです。事業にならないなら辞める、そんな分けにはいきません。電力事業は本質的には公益事業なのですから。こちらは国により規制されます。電力自由化により東京電力以外の電力事業者が送配電を共有することもあり、中立性が担保されなければいけないからです。

東京電力パワーグリッドのロゴマークがTEPCOでない事には理由があるのです。

ここで廃炉を切り口とすると、東京電力が福島第一原発の負債はどうしていくのか?ここは抑えておきたいと思います。分社化した各会社の株式は、持株会社である東京電力ホールディングスが100%持っています。各会社がこれから上げていく収益は、配当等を通して東京電力ホールディングスに支払われます。東京電力ホールディングスが廃炉を進めるために借りた負債を返していく形になります。

・東京電力ホールディングカンパニー制導入の中で廃炉はお荷物?

これは経営の中のお話しです。決して廃炉で働く方を貶めるために表現した分けではありません。しかし全体経営の中で廃炉は負債としか表現方法はありません。収益を生まないからです。

ここが筆者は一番気にかかるところです。電力自由化、発送電分離に備えて会社が変わる中、経営戦略の中で廃炉が東京電力の中で持つポジショニングは健全な廃炉を望む私達にとって、とても厳しい立場にあると言えます。

仮の話で言えば、東京電力社内の中で廃炉はお荷物でしかない、そんな風潮ができあがってしまうのではないかと危惧しています。そうなってしまった場合、廃炉は健全に進むのか、ホールディングカンパニー制導入には廃炉を切り口とすれば、そうしたリスクがあることを私達は知っておく必要があります。

・福島第一廃炉推進カンパニーで働く社員はモチベーションを保てるのか

福島第一廃炉推進カンパニーという言葉を初めて聞いた方も多いと思います。簡単に言えば、福島第一原発の廃炉をお仕事にしている部門です。福島第一廃炉推進カンパニーは東京電力ホールディングスに属します。

福島第一原発は発電所ではなく、廃炉をする場所に変わりました。事業所として福島第一原子力発電所は、内部的には福島第一廃炉推進カンパニーが廃炉を行う場所に変わっています。

ここで筆者が取り上げたいのは、前述した危惧するお荷物感の中で本当に福島第一廃炉推進カンパニーの社員は、廃炉を健全に円滑に進めるためモチベーションを保てるのかということです。

どういった社員なのか、これが肝になります。それは原子力発電所で電気を作っていた社員達です。

原発事故後、初めて触れる廃炉という作業に、電気を作る仕事から事故処理・放射性廃棄物の処理というまったく違う仕事内容に心がついていっているのかが危惧するところです。

マインドセットし直す、そんな言葉が妥当かもしれませんが果たして上手くいくのでしょうか?社会一般には原発事故の責任を追及し続ける場所でもあります、社員の言葉・思いを代弁すれば「電気を作ることに誇りを持っていたのに、廃炉に誇りを持てない社会風潮の中、廃炉に誇りを持てといっても。。。。」そこにきてのホールディングカンパニー制です。まるで置いてけぼりをくったような気持ちもあるでしょう。

ここまで書くと、社会の皆さんは原発事故を防げなかった責任追及として自業自得ばりに思うかもしれませんが、被災された方々、福島第一原発の状況に不安を抱える方々、原発事故による風評被害で苦しむ方々の一日も早い安息のためには、廃炉が健全に進むことが第一におけば、廃炉を担い、廃炉現場で汗をかく協力企業の方々を統括する福島第一廃炉推進カンパニーの社員がモチベーションを保つ・上げることは重要です。

東京電力、いや今は東京電力ホールディングスは福島県の復興・原発事故への責任を果たしていくために、福島第一原発廃炉推進カンパニーの社員のモチベーションを保つために、社員を守る義務があります。その姿はリニューアルしたHPでは伺い知ることは出来ません。

福島県の復興、廃炉の健全な歩みと責任、これらが本当に果たされる為にも福島第一原発廃炉推進カンパニーの社員がモチベーションだけでなく、廃炉作業に誇りを持てるよう、東京電力ホールディングスは力を入れていかなければなりません。

人は石垣、人は城。その先に原発事故の責任を果たす、向き合うがあります。

東京電力ホールディングカンパニー制の導入において、廃炉部門の在り方は重要です。経営戦略から切り離して重要なポジションとしてグループ内で扱われる必要があります。

私達の生活に原発事故からの廃炉は直結しているのですから。

一般社団法人AFW 代表理事

1980年生まれ。元東京電力社員、福島第一、第二原子力発電所に勤務。「次世代に託すことが出来るふるさとを創造する」をモットーに、一般社団法人AFWを設立。福島第一原発と隣合う暮らしの中で、福島第一原発の廃炉現場と地域(社会)とを繋ぐ取組を行っている。福島県内外の中学・高校・大学向けに廃炉現場理解講義や廃炉から社会課題を考える講義を展開。福島県双葉郡浪江町町民の視点を含め、原発事故被災地域のガイド・講話なども務める。双葉郡楢葉町で友人が運営する古民家を協働運営しながら、交流人口・関係人口拡大にも取り組む。福島県を楽しむイベント等も企画。春・夏は田んぼづくりに勤しんでいる。

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