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女性が仕事で成功するためには、『あきらめないこと』

五十嵐悠紀お茶の水女子大学 理学部 准教授

前回の記事『笑い声でも舌打ちされる世の中。子連れで公共交通機関を使うためには』では、子連れで街を移動する大変さを書きましたが、女性が仕事と家庭を両立するにあたっても大変なことがたくさんあります。

情報過多の今の時代、情報ばかりが先走ってしまい、『子どもを育てるって難しい』『育児と仕事の両立は私にはできなさそうだわ』などとまだ結婚もしていない頃から考えてしまう人も多いでしょう。

私自身、女子学生にも『子育てとの両立について』はとてもよく聞かれます。まさに結婚前から子育てとの両立ができるかどうかを気にしながら就職活動をする姿が垣間見ることができます。

フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグさんの書かれた『LEAN IN』
フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグさんの書かれた『LEAN IN』

『LEAN IN (リーン・イン) ー女性、仕事、リーダーへの意欲-』

という本をご存じでしょうか。フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグさんの書いた本で、全米大ベストセラーの話題作の和訳とあって、すでに読んだことのある方も多いのではないかと思います。キャリア女性が、実際に育児と仕事をこなす様子が、赤裸々に語られています。

辞めなければならないときまで辞めないで

新しいプロジェクトチームを任されそうなとき、近いうちに子どもが欲しいと思っていたら、どうしますか? 

『女性は自分の能力に対して自信がない』『まだ起きていないことに対して、あらかじめ予定を立てすぎる』ことが挙げられています。まだ起きていない育児との両立を思い描いて、無理だと判断してしまう、そんな女性がいかに多いことか。

この本では、「辞めるかどうかは、本当に必要なときになってから考えてほしい」と書かれています。

「同じテーブルに着く」「手を挙げ続ける」

さまざまな職業について実施された多数の調査の結果、女性は自分の仕事の成果を実際より低く見積もる傾向があるのに対し、男性は高く見積もる傾向があることが判明している。

出典:LEAN IN

とのことで、この本では、以下のようなエピソードが挙げられていました。

質疑応答の残り時間が少なくなったとき、『あと二問だけ質問を受け付けます』と言われて、女性は手を下ろし、男性社員は何人も手を挙げたままだった。

出典:LEAN IN

女性がいかに自分から引っ込んでしまうか、試合を外から見物する人になってしまうか。女性にはもともと日頃から自分を過小評価する癖がついているとのこと。女性が仕事で成功するために必要なことには、まずは同じテーブルにつき、あきらめないことが大事。言われてみれば最もなのですが、意外とできていなかったりするのも事実です。

「パートナーを本当のパートナーに」

もう一つ、以下の文章を紹介しておきます。

『キャリアを左右するような最も重要な決断を1つ挙げろと言われたら、私なら結婚と答えるだろう。結婚すると決めること、そしてそれがどんな相手かということは、決定的に重要事項だ。トップの座にある女性で、パートナーの全面的なサポートを得られていないという人を私は一人も知らない。一人も、である。』

出典:LEAN IN

育メンブームの今、私の身の回りの共働き家庭でも、男性の育児参加率は非常に高いように思います。また、キャリア女性の講演会などに出向いても、みなさんパートナーの支えの下、両立ができているとの話をよく聞きます。

分担の仕方は千差万別。我が家でも分担していますが、『自分のやり方を押し通すのではなく、相手のやり方を受け入れる。』をモットーに、多少やり方が違っても任せたことには口出しをしないようにしています。

育児と仕事とのバランス

子どもが成長すればするだけ悩みも変わってくるため、今でもリアルタイムで育児と仕事とのバランスに悩み続けています。

外で働く母親は常に仕事と家庭の両立の問題を指摘される運命にある。仕事より家庭を優先していると思われてキャリアアップに響くのではないか、子どもを持っていることが、仕事に対する熱意が男性に劣るとか、独身女性に劣るとか思われたくない。

出典:LEAN IN

まさに、そんな思いを常に抱えていますが、育児と仕事のバランス。正解はありません。でも、こんな企業のトップの人でもたくさん悩んでいるんだ、という事実が励みになりました。

様々な立場の女性の経験談を聞いたり、本で読んだりして自分なりの『バランス』を見つけたいと、今も模索中です。

お茶の水女子大学 理学部 准教授

東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).日本学術振興会特別研究員PD, RPD(筑波大学), 明治大学総合数理学部 専任講師,専任准教授を経て,現職.未踏ITのPM兼任.専門はヒューマンコンピュータインタラクションおよびコンピュータグラフィックス.子ども向けにITを使ったワークショップを行うなどアウトリーチ活動も行う.著書に「AI世代のデジタル教育 6歳までにきたえておきたい能力55」(河出書房新書),「スマホに振り回される子 スマホを使いこなす子 (ネット社会の子育て)」(ジアース教育新社),「縫うコンピュータグラフィックス」(オーム社)ほか.

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