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子連れ出勤・子連れ出張という選択肢

五十嵐悠紀お茶の水女子大学 理学部 准教授

4月からの職場復帰にあたり『保活』をしてきた方もようやく一段落した頃でしょうか。認可保育園に入れた人。無認可や保育ママが決まった人。そして育児休暇の延期を決意した人…。その他の選択肢はいかがですか?

学会併設ベビーシッターサービス

3年前の今日。私は学会に参加しており、東京お台場にある日本科学未来館にいました。

集まっているのは、国内の工学系・理学系の研究者。あの地震が発生した直後から、会場の机の下に隠れつつも、ノートPCでネット上の情報を集めようとする人。携帯のワンセグでテレビの情報を集めようとする人。たくさんの技術者が、信頼できる情報を入手するために動いていました。

地震がおさまり、避難することに決まる直前。私が真っ先にしたことは、会場の託児部屋でベビーシッターさんに預けていた長男のお迎え。学会が、託児所を用意してくださっており、そこに預けていたのです。迎えに行くと、表情をなくして声を出せなくなった息子がいました。

「もしも、自宅近くのいつもの保育園に預けていたら・・・。」

何度そう考えたかわかりません。

結局その日は、いつもは1時間ほどの道のりを、5時間以上もかかってようやく自宅にたどり着いたわけですが、同分野の研究者である夫と、学会会場の託児所に預けていた息子。地震が起きた直後に家族が顔を合わせられたことが安堵でした。(当時、次男はお腹の中。)

それ以来、可能性が少しでもあるなら、子どもを現地に連れていって出先で預ける、ということも検討するようになりました。

大学施設内の保育園

大学院に通っていた間は、息子は大学キャンパス内の保育園に通っていました。自宅から大学までは通学1時間の道のり。ベビーカーで電車通学をしていました。

子どもが熱を出したとの連絡がきたときはもちろんすぐに行けますし、研究やゼミの合間に保育園に出向いて、母乳をあげていました。粉ミルクも預けていましたが、保育園に預けるまでは完全母乳だったため、保育園に通いつつも、母乳をあげられる生活は、母にとっても子にとっても助かりました。

冷凍母乳を預かってくれる保育園も増えましたが、預かってくれない保育園もいまだ多いです。そして、夏の暑い日には保育園につく前に解凍されてしまい、使えずに捨ててしまうことも多くありました。

また、預ける時間が最小限で良いというのも、私にとっては大きなメリットでした。(公共交通機関を利用する時間を自分で調節できるという、学生の身分だったからかもしれませんが。)

空港にも保育園が

羽田空港にも保育園があるのをご存じですか?

羽田空港アンジュ保育園が始まり、地方から東京出張に来る際、子連れでやってくる。そして空港で子どもを預けて、そこからは単身で出張先へ向かう。そんなことが可能になりました。慣れない土地での電車移動を子連れでするのは辛い。でも、なるべくそばにいたい。そんな贅沢な悩みを叶えてくれる保育園だと思います。

わたしはそれをどこで知ったかというと、なんと、女子トイレ。トイレの個室に入って座ったちょうど視線の位置に、「空港内施設のお知らせ」として保育園の情報が書いてあるのです。

男子トイレにも同様の情報があるかどうかは未確認ですが、多くの人が利用する空港で適切に保育園を必要としている人に伝えるための手段の1つとしてトイレの中の張り紙というのは面白いな、とも思いました。

もちろんデメリットも

保育園や託児所完備の職場も増えてきています。「市町村の認可保育園や無認可保育園はすべてダメだったけど、会社の保育園に入れたよ。」という友人の話も、先月にはちらほら聞きました。

しかし、もちろんデメリットもあります。

  • 職場まで連れていくための公共交通機関が辛い
  • 「出張で職場に行かないけど預けたい日」にも職場まで連れていかないと預けられない
  • 小学校に上がったときに地域のお友達がいない状態になる

などをよく聞きます。

それでも私はメリットも大きいと思います。保育園で悩んでいるお父さん、お母さん方、視野を少し広げて、子連れ出勤や子連れ出張も検討してみてはいかがですか?

お茶の水女子大学 理学部 准教授

東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).日本学術振興会特別研究員PD, RPD(筑波大学), 明治大学総合数理学部 専任講師,専任准教授を経て,現職.未踏ITのPM兼任.専門はヒューマンコンピュータインタラクションおよびコンピュータグラフィックス.子ども向けにITを使ったワークショップを行うなどアウトリーチ活動も行う.著書に「AI世代のデジタル教育 6歳までにきたえておきたい能力55」(河出書房新書),「スマホに振り回される子 スマホを使いこなす子 (ネット社会の子育て)」(ジアース教育新社),「縫うコンピュータグラフィックス」(オーム社)ほか.

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