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トトロにみるコミュニティでの子育て   ~都会でも地域に知り合いを作るためには~

五十嵐悠紀お茶の水女子大学 理学部 准教授

子どもたちの大好きなトトロ。本日の金曜ロードショーでは「となりのトトロ」が放送予定ですね。最近、我が家でもDVDを借りてきて子どもたちとトトロを見たのですが、母になってから見るトトロは子どものときに見たのとは異なった印象を持ちました。そんなトトロの舞台を軸に、最近の子育て環境について考えてみたいと思います。

(一部ネタバレを含んでしまっていますが、ご了承ください。)

トトロの舞台は町民を巻き込んだ子育て

「となりのトトロ」は、森の中の一軒家に引っ越すところから始まります。引っ越しのお手伝いに近所のおばあちゃんが来てくれますが、このおばあちゃん、サツキとメイのおばあちゃんではなく、ご近所のおばあちゃん。その後も、電話を借りに行ったり、メイがいなくなってしまったときに町中総出で探したりします。

そんな町民を巻き込んだ子育てのトトロの舞台。

一方、都会での子育てはどうでしょう? 核家族、共働きが当たり前になり、出産育児が難しくなる現状。保育園事情、小学校での学童保育、親の介護…。さまざまな壁が次々と襲い掛かってきます。

数年前よりよくなってきた今

まさに、私が長男を産んだときの子育ては、トトロの舞台とはかけ離れたものでした。核家族で育ち、赤ちゃんを抱っこもオムツ替えもしたことがないような夫婦が2人きりでの初めての子育て。保育園は待機児童。両実家は特急に乗ってはるばる上京しなければならないので、どこまで頼ってよいか悩む日々…。おそらく同じ状況の人はたくさんいらっしゃると思います。

しかし、子育て6年目に入り、状況は随分と良くなってきました。サツキとメイの母親は病院に入院しています。このように、母親が動けなくなると状況は一変して大変です。そんな事態でも、我が家では近所のママ友がうちの子どもを自宅まで送ってきてくれたり、預かってくれたりするなど、助けてくれました。ご近所には子どものお弁当作りをお互いし合って助け合っているママ友もいます。そんな経験を経て、『隣近所どんな人が住んでいるかを知らないような都会』での暮らしの中で、『地域に知り合いを作ること』を気にするようになりました。

コレクティブハウジングって?

「広い土地を買って、共有スペースのある家に、親子共に気の合う友達同士、楽しく住みたい」という話も聞いたことがあります。従来なら、家というのは「家族で住むもの」でしたが、最近聞くようになってきたのが「コレクティブハウジング」。

コレクティブハウジングとは、

既成の家族概念、福祉概念、住宅概念にとらわれず、人と人との新しいかかわり方をつくりながら、より自由に、楽しく、安心安全に住み続ける暮らし方です。

それぞれが独立した専用の住居とみんなで使ういくつかの共用スペースを持ち、生活の一部を共同化する合理的な住まいです。

自分や家族の生活は自立しつつも、血縁にこだわらない広く豊かな人間関係の中で暮らす住まいのかたちです。

出典:NPO コレクティブハウジング社

このように、高齢者や子育て核家族、女性の一人暮らしなど様々な人が寄り添って、助け合い、お互いの自由も保ちながら暮らす、という新しい暮らしの提案がコレクティブハウジング。よく聞く「ルームシェア」はマンションの一住戸をルームメイトと共同で住むような状態を指しますが、「コレクティブハウス」では個々の住戸にトイレ、浴室、キッチンが完備されており、住まいの延長としての共有スペースをもっている、といった、住宅の独立度が高いのが特徴。シングルマザーのための「シェアハウス」などのように、同じ境遇同士が協力しあう共同住居も増えてきています。

また、地域には「ファミリーサポートセンター事業」というものもあります。

乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦等を会員として、児童の預かりの援助を受けることを希望する者と当該援助を行うことを希望する者との相互援助活動に関する連絡、調整を行うもの

出典:厚生労働省

このようなファミサポ事業も新しい人と人との関わりの一種なのかもしれません。託児所や保育園とは違い、家庭で預かってくれる「近所の知り合い」を役所を通して作るようなもの。相性の合う人と知り合ったときには、子育ての悩み相談をしたり、させていただいたり、なんてこともできます。

姉妹で助け合う「2.5世帯」

また最近、ハウスメーカーがこぞって紹介するようになってきたのが、2世帯ではなく、「2.5世帯」。

2.5世帯住宅とは親世帯と子世帯、そして親世帯にいる単身の子(子世帯夫婦の兄弟姉妹)も一緒に暮らす二世帯住宅の発展型。

出典:旭化成ホームズ

ということで、「あら、だったら我が家がまさに2.5世帯だわ!」なんてご家庭もあるのではないでしょうか?

こちらはコミュニティではなく血縁での助け合いですが、私自身、妹家族が近くに住み始め、姉妹で助け合うことのありがたさを身に染みて感じています。

また、住宅展示場などでは、兄弟・姉妹で住む二世帯住宅というものも提案されていたりもします。兄弟姉妹だと同世代であるため、ライフサイクルも似たような経過をたどることになり、親と同居するのに比べると、世代間のギャップなどの心配がない、ということをウリにしていました。

コミュニティとつながりを作るには

先日、私の住む町の区長さんに「ご近所の方と仲良くなるにはどうしたら良いでしょう?」と問いかけたところ、『防災』と『お祭り』の2つを挙げてくださいました。

確かに東日本大震災が起きたあとは、ご近所同士お互い仲良くしたいと意識が高まりましたし、防災訓練なども力を入れるようになったと思います。そして、都心でも大雪となった今年の1月、ご近所と協力して近隣道路の雪かきをしたりもしました。

また、私自身、おみこしや盆踊りなど、夫婦だけの世帯だったときには顔すら出さなかった町内会のお祭りにも、子どもが生まれてからは毎年顔を出すようになり、ご近所に知り合いが増えてきました。古きよき時代はおそらくコミュニティとのつながり作りなんて自然にできるものだったのかもしれませんが、今は『つながりを自ら欲して作っていく時代』になったように思います。

夏はお祭りが増える季節。コミュニティとつながりを作るために、まずは地域のお祭りに顔を出してみてはいかがですか?

お茶の水女子大学 理学部 准教授

東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).日本学術振興会特別研究員PD, RPD(筑波大学), 明治大学総合数理学部 専任講師,専任准教授を経て,現職.未踏ITのPM兼任.専門はヒューマンコンピュータインタラクションおよびコンピュータグラフィックス.子ども向けにITを使ったワークショップを行うなどアウトリーチ活動も行う.著書に「AI世代のデジタル教育 6歳までにきたえておきたい能力55」(河出書房新書),「スマホに振り回される子 スマホを使いこなす子 (ネット社会の子育て)」(ジアース教育新社),「縫うコンピュータグラフィックス」(オーム社)ほか.

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