育児と仕事の両立に必要なのは「受援力」
「受援力(じゅえんりょく)」という言葉を聞いたことはありますか?
受援力とは、「他者に助けを求め、快くサポートを受け止める力」です。育児と仕事の両立に追われている日々、皆さんは助けを求めることに罪悪感を感じてはいませんか?
2010年、内閣府が「ボランティアを地域で受け入れるためのキーワード」としてパンフレットを作成し、3.11震災後に少しずつ広まり始めた言葉です。そして、今現在、より広い意味で再定義されつつあります。
私は、情報系の学会の昼食時間を利用して、女子学生や女性研究者が集まる「女子ランチ会」を企画してきて早4年目。今年は、産婦人科医でもあり、5人のお子さんのお母さまでもある、吉田穂波先生をお招きして、トークしていただきました。
自己責任の強い人ほど、人に頼れない現状
「自分ががんばらなくては」と自己責任の強い方、我慢してしまいがちな方、毎日が何となくせわしなくイライラと過ぎてしまっている方、ご家族や仕事での人間関係がうまくいかない方にとって、知っておきたい知識として、「受援力」を挙げてくださった吉田先生。
やりたいことをやるためにタスク化して洗い出しをする。それは仕事でも家庭でもすでに行っている人も多いと思いますが、その際にも、自分だけで抱えずに、人へ任せられるタスクは外に出すことが大事だとおっしゃっていました。
1. タスクの洗い出し
2. タスクの細分化
3. タスクの優先順位付け
4. 優先順位に基づいたスケジューリング
5. 他の人への作業委譲
6. 目標達成!
このようにステップごとの項目に分けてみると、5のステップが抜けている人がとても多いとのこと。自分にとって『自分だからできること、自分にしかできないこと』は何でしょうか。「子どもに健康的な食事を食べさせたい」というときでも、「毎日自分が作った手料理でなければダメ」なのか、「手料理はヘルパーさんに作ってもらい、その時間で私はもっと子どもの話を聞いてあげたい」のかなど、もう一歩踏み込んで考えることができそうです。
頼れますか? 頼めますか?
「頼るって難しい。ですが、頼られるのってうれしいですよね。」吉田先生はそうおっしゃって、席が隣同士の方でエクササイズをしてみることになりました。
今まで人に助けてもらった経験、頼った経験を話してみましょう。
小学校の時、大学生の時、社会に出てから、どれか一つのエピソードを詳しく思い出してみてください。
どんな風に感じましたか?
「恐縮した」「申し訳なかった」「みっともないと思った・・・」?
「有難いと思った」「救われた」?
「頼ること」というのは、「相手を信頼している」からできることであり、「人間関係が良いからできること」。そして、「相手に対する最大の賞賛・承認」であるとおっしゃる吉田先生。
頼ることは絆づくりでもあり、頼ることで相手もこちらに頼りやすくなる。そのようにして、人間関係、信頼関係を作っていけると寿命も延びるし健康にも良い、とおっしゃっていました。参加者に問いかけ、考えさせ、口に出して実践する参加型のワークショップを取り入れることで、視点を変えていくことができるようなそんな形式のトークでした。
「すみません」ではなく「ありがとう」を
実際に頼ってみるときのお作法も教えていただきました。
まず、「すみません」ではなく「助かります」や「ありがとうございます」という言葉を使う。そうすることで、相手の自己価値観も高まり、自分がみじめな思いをすることも避けられます。また、頼む前から既に「断られたらどうしよう」、と考えてしまい、なかなか頼めない時もあります。しかし、断られても、これを相手からの意地悪や拒絶だと受け取るのではなく「フィードバック」だと受け止め、自分が軌道修正する材料を教えてもらえた、何かを学ぶチャンスだ、ほかの方法を示してくれたんだ、と前向きに捉え、改善するために活用するといいそうです。
さらに情報が知りたい方は
私はこのトークを聞いて、これまで「頼られることはうれしいことである」ということを考えたこともなかったため、目から鱗が落ちるような気持ちがしました。参加者も同様だったようで、トーク後にはとてもたくさんの方から、「この話を聞けてよかった」「早速実践してみます」などとご感想をいただきました。
こういった内容に興味を持った方は、吉田先生の著書『「時間がない」から、なんでもできる!』(サンマーク出版)や、TEDxHanedaでのトークなどをぜひご覧ください。