出会いに感謝 -陽はまた昇る-
今回はかなり個人的なお話しです。お許しください。ここ数年、年4回、第5日曜日のある月のみ出演できたNHKラジオ深夜便に、この4月からは第2日曜日の晩、すなわち毎月出演することになりました。「科学を文化に!」とこの10年間叫び続けてきましたが、ようやく星や宇宙の話題も、音楽やスポーツ、芸術・芸能などと同様に人々の文化的な関心の一つとして受け入れられたような気がしています。深夜11時台の生放送ですが、機会があればぜひお聴きになってください。
私の数奇な経歴を知った人から、なぜ、天文への夢を諦めずに持ち続けられたのかと問われることがあります。33年前、東大、京大、東北大にしか天文学教室が無かった時代に、信州大学を中退し、周囲の反対を押し切って東京学芸大学に進学しました。その後、14年間は都内の高校や中学校で理科教師をしていたのに、千載一遇のチャンスの恵まれ、唯一天文学者ではない身ながら、国立天文台の研究者の一員として今では、国立天文台の事業の一つとして天文学の教育や普及活動を担当しています。
振り返ってみると、生まれ育った長野県八坂村(現大町市)の星空の美しさと、小学校の小さな図書室でたまたま見つけた天文書籍のおかげで小学校時代から天文学者に憧れていました。夢を諦めなかったのは、大町高校物象部での天体観測経験と、将来への夢を語り合えた学友の存在が大きかったように思います。夢を真面目に語り合える時代で、小説家になりたいN君とミュージシャンを目指していたK君が無二の友でした。彼らは今、いったいどうしていることでしょう。
昨年7月に信濃大町観光大使を拝命しました。仁科亜季子さんや鉄拳さんと一緒です。
それ以来、住んでよし、訪れてよしの故郷、長野県の北安地域の魅力を全国に発信する機会が増えました。大町は山が、水が、そして星がきれいなところです。温泉に恵まれ、ソバや酒もうまいところです。ソチ・オリンピックのテレビ観戦を楽しんだ人たちが大挙してスキー場に来てくれたらなとも思います。しかし、現実には大町も過疎化が進み、ついに人口3万人を切ってしまいました。私自身、いつかUターンをと思いながらも東京暮らしがいつしか30余年を超えてしまいました。若者にとって地元には産業と、仲間と共有できる夢が必要なんだと痛感しています。
今年、大町市は市制60周年を迎えます。再来年には母校大町高校が大町北高校と合併し大町岳陽高等学校となることが決まりました。山岳文化の街を象徴する「岳」と昇る太陽を青春に重ねる「陽」。名は体を表すといいます。次世代を担う若者たちの活躍によって山岳の町にまた陽が昇ることを願ってやみません。