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黒夢の商標権オークションの落札者について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

もう2ヶ月以上前のことですが、ロックバンド「黒夢」関係の商標権が所属事務所の事業清算に伴い、国税庁によりオークションにかけられ、総額百万円強の金額で落札されたというニュースがありました。商標権や特許権も企業の資産なので不動産等の資産と同様、当局に差し押えられ、競売にかけられることはあります。有名な例では、WiMAX事業をやっていたYOZANが倒産して「着メロ」という登録商標が競売で売却された件などがあります。

本日、特許庁のデータベースが更新され、これらの登録商標の新しい権利者が明らかになりました(一般に登録系の情報はアップデートが遅いです)。個人の女性の方です。ネットでオープンにされている(というかオープンにすること(公示)が目的である)情報なので別に隠すこともないのですが、名前をここで書くのはやめておきます。グーグルサーチしても特に業界関係者としてはヒットしないので、黒夢の一ファンなのではないかと推測します(と書きましたがどうやら清春さんの現在の事務所関係者という可能性の方が高そうです(追記:かねてから買取り意図を表明していたマネージャーさんのようです))。一般論として、個人で商標や特許を出願・取得すると個人情報が公報等を通じて公示されてしまいますので注意が必要です。

落札者は、万が一でも「黒夢」の名前が全然関係ない他人に使われることを避けたかったのでしょう。黒夢メンバーによる使用には権利行使しない、それ以外の者については権利行使するという姿勢を明らかにしておけば、別に商標権を黒夢メンバー等に売却するまでもなくこの目的は達成されます。

再来年には更新期限が来てしまいますので、忘れずに更新していただきたいものです。

なお、仮に「黒夢」商標がファンや関係者ではない他人の手に渡っていたとしても、たとえば、「元黒夢・清春」といった使い方にはどちらにしろ商標権は及ばないと思われます。商標としての出所表示機能を発揮しているとは言えず、単なる説明に過ぎないと考えられるからです(クリスタルキング事件なる裁判例があったりします)。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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