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「41度」日本記録への疑問

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
高知県江川崎アメダス(2013年8月13日撮影 四万十市役所提供)

高知県・江川崎では、8月10日から13日まで4日間連続して40度以上という、とんでもない高温を観測しました。

もともと江川崎は高温の出やすい所で、参考記録ながら、委託観測所時代の1929(昭4)年7月20日にも、41度の気温を記録しています。

今回の高温は、直接的には高気圧圏内で良く晴れて、沈降昇温が起きたこと、またフェーン現象や谷沿いで風が収束したことなど、複合的な理由が考えられます。

マスコミなどでは高温の理由を一つに限定してしまいがちですが、41度というような突出した高温は、色々な条件が重なった時に起こるものといえるでしょう。

そしてその一因に、外部的な要因もあるのではないかというのが、私の考えです。

ところで2010年9月、京田辺(京都)で、39.9度を観測したことがあります。

この時、地元の京都新聞の記者がアメダスを取材にいき、温度計に雑草(つた)が絡まっていることを見つけました。その後、この気温は雑草による温度計の不具合ということで、記録からは削除されました。

さて掲題の写真は、昨日(13日)市役所の方に撮影していただいたものですが、よく見ていただくと、アメダス周辺部はアスファルトや踏み固められた土に囲まれています。しかも、このアスファルト(駐車場)は、二年半前の2011年1月に舗装されたばかりだそうです。このアスファルトが、今回の高温に何らかの影響を与えている可能性はないのでしょうか。

気温などの測器が設置してある場所を「露場(ろじょう)」といいますが、地上気象観測法には、この露場は「芝草を植えて風通しのよい柵で囲む。芝草は時折刈り込み、雑草を取り除き地面の状態を一定に保つように維持する。」となっています。その意味では江川崎のアメダスは、この条件を完全に満たしているようには見えません。

今回の江川崎の場合は、高温記録が出たあとに気象台職員が検分に出向き、測器の不具合はないということで、この高温記録も正式発表になりました。しかしアメダスの設置ポイントとしては、最良の条件とは言い難く、周辺のアスファルトが気温の上昇に影響を与えたことは否定できないでしょう。

ただアメダスというのは、無人観測所であるがゆえに管理も逆に大変で、メンテナンスには時間も労力もかかります。

おそらく全国には、江川崎のように条件の悪いアメダスはいっぱいあると思われます。

気象関係者は、突出した観測データを見たとき、こうした観測所の特性なども頭の片隅に置いて、適切な判断をすることが求められます。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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