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ひとりぼっちにならないための「自己紹介」の秘訣!?

中原淳立教大学 経営学部 教授
(写真:アフロ)

もうすっかり春ですね。

今日は首都圏は、かなりポカポカした陽気です。

3月を終え、やがて、4月になり、新学期が生まれれば、世の中の至る所で、人々がはじめて出会う場面がでてきそうです。

新学期、新入生、新入社員。新たな人生の門出には、必ず、人と人との出会いがあります。

ところで、人と人とかが、はじめて出会うときには「自己紹介」ということがなされます。

はじめて対面するグループのメンバー、クラスのメンバーに、自分をわかってもらうために、「名前などの自己に関する情報」をお知らせする機会です。

先だって、あるところで授業をしていた際、僕と学生さんで

「そもそも自己紹介とは何か?」

ということを議論しました(ヒマだね・・・でも、授業のコンテキスト的には必然だったのです)。

文脈を説明すると長くなるので、はしょりますが、「自己紹介を効果的に為すためには、自己紹介とは何かを、そもそも考えなくてはならない」というお話でした。

一般に、

自己紹介とは「自己に関する情報提示」である

と思われています。

要するに、「自分に関係する情報を並べること」が「自己紹介」だと思われている。

しかし、それは「間違い」ではないとは思いますが、確かにそうなんだけど、決定的に何かが抜けているように、僕には感じられるのです。自己紹介をして、「他者のどのような行為」を喚起するのかに関する考察が抜けているように感じるのです。

僕の定義では、

自己紹介とは、「他者からあなたへの声かけ」を増やすための「情報の種まき」である

ということになります。

要するに、僕の考えでは、自己紹介とは、自己紹介が終わったあとに、あなたをはじめて知る人々に、「気兼ねなく」、あなたへの「最初の声かけ」を増やしてもらうために、存在します。そのためには、多くの人々の「フック」にひっかかるように、多種多様な情報を自己紹介の中に「散逸」させておくことが求められます。

限られた時間のなかに、なるべく他人が「共通点」を見いだして「最初の声かけ」を行えるように、多種多様な観点から、情報を散逸しておくことが求められるとよいのかな、と思います。

はじめての人々が出会うときに、もっとも緊張するのは「最初の声かけ」「最初の一声」なのです。

共通点があった方が、最初の声かけの可能性は高まります。

「ねーねー、さっき、合気道をやってるって言ってたけど、オレもやってんだよね。どこに流派?」

(マニアックですね)

とか、

「ねーねーねー、さっきの自己紹介で、北海道出身だっていってたけど,北海道のどこなの? 北海道の人って、みんな、ルールルルルとかいって、キツネ飼ってんの?」

とかね(笑)。

だから、自己紹介では、「名前」と「所属」だけ言っても仕方がありません。だって、名前と所属だけじゃ、話しかけようがないでしょう。また、情報をひとつの観点だけから提供しても、多くの人にフックがかかるとは思えません。

むしろ、なるべく多くの人々が、あなたに最初の声かけを行ってくれるように、様々な、多様性あふれる情報をちりばめておくことがポイントです。

自己紹介は、「最初の声かけ」を増やすために、意図的に「デザイン」しなくてはならない

のです。

今日は、そもそも自己紹介とは何か、ということから私見を述べさせてもらいました。私見では「自己紹介とは、最初の声かけを誘発する種まきである」ということになります。

「自己紹介とは何か?」は学校ではなかなか教えられない知識です。しかし、あなたが新たな組織に入るとき、そうした時間は、必ず、ともなってきます。

ぜひ「声かけを誘発するような種まき」を!

皆さんの春がよき出会いに満ちあふれますことを願っております。

そして人生は続く

(本記事は、中原の個人ブログ「NAKAHARA-LAB.NET」の2015年3月13日の記事に、加筆・修正を行ったものです)

立教大学 経営学部 教授

立教大学 経営学部 教授。経営学習研究所 代表理事、最高検察庁参与、NPO法人カタリバ理事など。博士(人間科学)。企業・組織における人材開発・組織開発を研究。単著に「職場学習論」「経営学習論」(東京大学出版会)、「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)「フィードバック入門」(PHP研究所)、「働く大人のための学びの教科書」(かんき出版)などがある。立教大学経営学部においては、リーダーシップ研究所・副所長、ビジネスリーダーシッププログラム(BLP)の主査(統括責任者)をつとめる。

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