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このままでは終われない...戦力外通告を受けた「小虎」たちの再出発

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター

先日行われたフィギュアスケートの全日本選手権は、ご覧になりましたか?ソチ五輪の代表選考会を兼ねていたこともあり、いろんな涙が流れましたね。今シーズンを集大成という選手、五輪出場を逃せば引退と決めて臨んだ選手もいます。フリーの演技が終わったあと、不本意な結果にも関わらず鳴り止まない拍手をもらい涙した高橋大輔選手。結果的には代表に選ばれ、もう一度あのステップを見られることのなったものの「これが最後になるのかもしれないと思ったら…」と絞り出した言葉が胸に残りました。

プロ野球の世界でも華やかな引退セレモニーで送られる選手はほんのわずかです。これが最後の打席、最後のマウンドと覚悟さえできずにユニホームを脱ぐ選手もいます。ことし自由契約となった育成3年目の穴田真規選手は10月20日、宮崎のフェニックスリーグの途中で帰阪を言い渡されました。また6年目の清原大貴投手は「来年に向けて、フェニックスの時に見たいから高校時代のビデオを送って」と実家に電話した直後の、9月30日夜に「あす球団事務所へ」と告げられ、そのあとの数時間は何をしていたか記憶にないと言います。

もちろん既に予感はあったという選手もいて、それはそれで切ないものですね。9月29日のウエスタン公式戦ラストゲームが実に6試合ぶりの出場だった野原将志選手は試合後、ほとんど話さず目を赤くして帰っていきました。この試合には橋本良平選手、黒田祐輔選手、藤井宏政選手も久しぶりの出場で、やはり思うところはあったそうです。

でも、ほとんどの人がもう新たな道へ向かって進んでいるところです。第一希望だったNPBでの現役続行はかないませんでしたが、社会人チームで野球を続ける選手も多くて嬉しいですね。では彼らの進路をわかる範囲で書いておきましょう。

第2の舞台は社会人野球

野原選手は希望通り地元の九州に帰って、1月から三菱重工長崎に嘱託社員として入社します。先日、1年前に入籍した奥さんとの結婚披露宴を行い、引っ越しも済ませました。とにかく披露宴、引っ越しと忙しくて大変だったみたいで、まだちゃんと聞けていないのですが、年明けの自主トレは島原でしょう。春にはパパになりますからね。ますます頑張ってもらわないと。

野原選手と同期入団の橋本選手は、トライアウトを受けず、パナソニックに入社するそうです。キャッチャーをするのかと聞いたら「ポジションはわかりません」と言っていました。また、育成から支配下になりながら自由契約となった林啓介選手もトライアウトを受けずに社会人行きを決めました。岐阜県の西濃運輸に正社員で入社予定です。

投手としてトライアウトを受験した黒田選手は、関西に残って社会人の軟式野球チームでプレーします。肩は大丈夫と言っていたので、ピッチャーをするんでしょうね。でも打つのも走るのも続けてほしいなあ。今は実家の静岡ですが年明けから仕事が始まるので、それに合わせて関西に戻ってきます。藤井宏選手は(株)カナフレックスコーポレーションに正社員として入社。本社は大阪ですが硬式野球部は滋賀県にあり、今月18日に日本野球連盟の新規加盟が認められたばかりです。来月引っ越し予定で、自主トレは母校の加古川北ですると言っていました。

穴田選手は社会人クラブチームの和歌山箕島球友会に所属します。来月中旬に和歌山へ引っ越して、下旬から仕事も始めるとのこと。実は穴田選手が選手寮・虎風荘を出る前、同期の一二三選手、中谷選手、岩本投手、阪口選手、島本投手と集合写真を撮ったそうです。カメラマンは北条選手。高校生がこんなに多く入団してきたことがなかったため、何かと目立っていた6人衆。本当に仲がよかったですね。そんな中から1人がいなくなる…。いつか訪れることとわかっていても寂しいものでしょう。思いっきり笑ってポーズを取っているのに、穴田選手の目が悲しそうで心配だったんです。でも先日、自主トレは地元の箕面?と聞いたら「おう!そんな感じです」という返事。これぞ穴ちゃんです。安心しました。

夢はトレーナー、ケガに悩む選手を助けたい

清原投手は社会人、独立リーグ、野球とは関係のない会社からも声をかけていただいて長らく悩んだみたいですね。結論は、2年目の春季キャンプ中に生まれて初めて肩を痛めた際、真剣になりたいと思ったというスポーツトレーナーの道を選択したようです。「一日も早く資格を取り、ケガに悩む選手を助けてあげたいから」。整骨院の院長である、もと阪神の萩原誠さんにも話を聞いたとか。来月には大阪へ引っ越し、4月から専門学校に通いながら接骨院で見習いの形で働く予定。「空いた日や時間で、野球教室のようなこともするつもりです!」と、夢に向かって張り切っています。

みんな関西にいたり、社会人でプレーを続けるので、また会える楽しみがありますね。パナソニックも、西濃運輸も、箕島球友会もファームはこれまで何度か試合をしていますし、カナフレックスとも対戦の可能性はあるんじゃないかと期待しています。藤井宏選手もそう言っていました。野原選手には社会人野球日本選手権で京セラドームへ来てもらいましょう!

それから林威助選手は台湾プロ野球のドラフトで指名された兄弟と交渉して、合意すれば入団という方向だそうです。浅井良選手は未定と聞きました。何かわかれば、またお伝えします。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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