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ドイツ、ついに「歩きスマホ」歩行者向けに道路に埋込み信号灯:路面電車との接触事故防止へ

佐藤仁学術研究員・著述家
「歩きスマホ」歩行者のトラムへの接触防止を目指して導入された埋込信号灯

「歩きスマホ」は日本だけの問題ではない。世界中でスマホの普及に伴って、欧米でもアジアでも誰もが「歩きスマホ」をやっている。そして、「歩きスマホ」による事故や事件が起きて問題になっているのも、日本だけでなく全世界で共通している。もう世界中どこでも見かける風景であり、多くの人にとっては歩く時のスマホは必需品のようになってしまい、「歩きスマホ」は「やめられない習慣」にもなってしまっている。

ドイツでも「歩きスマホ」で少女が死亡、2015年のドイツの新語は「Smombie」

日本では「歩きスマホ」による事故や事件は電車での駅やホームが多いが、道を歩きながらの「歩きスマホ」もよく見かける。信号待ちではほとんどの人がスマホを見ており、そのまま「歩きスマホ」で歩いていく人がほとんどだ。「歩きスマホ」のまま、信号で止まらなければならないこともあるが、神経はスマホに集中しているから、信号に気が付かないで、あやうく大事故になりそうな人も多い。

ドイツでも「歩きスマホ」は問題になっており、ミュンヘンでは15歳の少女がヘッドホンをしながら「歩きスマホ」をしていて、トラム(路面電車)と接触して死亡する事故が発生した。ドイツやヨーロッパの多くの町ではトラム(路面電車)が普通の道路を走っており、柵などが無い所がほとんどで「歩きスマホ」は非常に危険である。

ドイツでは毎年、若者の新語・流行語が選ばれるが、2015年の若者の新語は「Smombie」であり、これは「smartphone zombie」の略語であり「スマホに夢中になっている人」の姿があまりにも奇異であるため「ゾンビ」と称している。「Smombie」はドイツだけでなく、日本でも世界中でも見かける。

ドイツで「歩きスマホ」歩行者向けに道路に信号灯を埋込み

ドイツの「歩きスマホ」防止用の道路埋込信号灯
ドイツの「歩きスマホ」防止用の道路埋込信号灯
道路の信号灯の他に通常の信号機もある。
道路の信号灯の他に通常の信号機もある。

ドイツのバイエルン州のアウクスブルクでは2016年4月に、「歩きスマホ」歩行者のトラムへの接触防止を防ぐために、スマホに神経を向けて下を見てても、視界に入るように信号灯を道路に埋め込んだ。まずは試験的な取組みとのことだが「信号灯が赤であれば止まれ」とわかるので、「歩きスマホ」をしてても止まらなくてはならないとわかる。

いくら注意しても誰も「歩きスマホ」をやめないし、事故も減らないので、もはや発想の逆転である。そこまでやらないと「歩きスマホ」の事故はなくならないのだろう。

それでも「歩きスマホ」は視界が狭くなり、かつ神経がスマホに集中しているため、周囲での危機を察知してからの対応が遅くなるので非常に危険である。「歩きスマホ」はやらないのが一番安全である。ましてイヤホンをつけての「歩きスマホ」は、耳はイヤホン、目はスマホへ神経が集中しているので、目の前で起きている危機への対応ができなくなるので、一番危険である。それは「歩きスマホ」をしている多くの人も頭では理解している。ただ「わかっちゃいるけど、やめられない」だけなのだ。

それだけ「歩きスマホ」が危険なことを理解しておりながらも、世界的に「歩きスマホ」は減少するどころか、増加しており、それに伴う事故も多発している。これから世界中の道路で通常の信号機の他に、道路には「歩きスマホ」歩行者向けに埋込信号灯が設置されるのだろうか。

▼トラム(路面電車)が普通の道路を走っており、柵などが無いので「歩きスマホ」をしていたら非常に危険なことになることがわかる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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