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「黒子のバスケ」脅迫事件第2回公判。渡邊被告のコメント公開

篠田博之月刊『創』編集長

2014年4月30日「黒子のバスケ」脅迫事件第2回公判が東京地裁で開かれた。渡邊博史被告は上下灰色のジャージ姿で出廷。本人が証言する機会はなかったが、2月26日と3月26日に起訴された事件について認否が行われ、被告は全て起訴内容を認めた。2つの起訴は、前者が「ジャンプフェスタ」中止を狙った脅迫事件、後者は「黒バス」の同人誌即売会ダブルクラッチ中止を狙った脅迫事件。それぞれ威力業務妨害に問われたもので、検察側が証拠説明を行った。さらに本日付でもうひとつ最後の起訴が行われ、次回6月6日に検察側の立証が行われることになった。これで起訴は全て終わり、6月27日の被告人質問を経て、論告と最終弁論が行われる。

きょうの公判は約1時間で終了したが、実は渡邊被告がこの公判直前に書いたコメントを入手している。日付は本日4月30日で、前回の冒頭意見陳述への補足と、最終意見陳述についての希望だ。前回の冒頭意見陳述はネットで大きな反響を呼び、50万以上のアクセスがあった。その反応や渡辺被告への批判についても、今回のコメントで意見を述べている。

それから、冒頭意見陳述を発売中の月刊『創』に全文掲載しているのだが、その解説で一部誤りがあったので訂正しておく。2013年10月の脅迫状で、渡邊被告は毒入り菓子以外にもレトルトカレーなどに異物を混入させるとセブンイレブンなどを脅迫した(これは当時ほとんど報道されていない)のだが、菓子と異なり、カレーなどへの異物混入は実際には行われていない。ヤフーブログの解説は問題ないのだが、『創』の解説では、実際に異物混入が行われたように書いてしまった。お詫びし訂正したい。

さて、以下は本日付の渡邊被告の見解である。原文のまま公開する。

4月30日付の渡邊被告のコメント

第2回公判ですが、内容は罪状認否だけです。自分が喋る予定はありません。

第1回公判での意見陳述ですが、誤って挿入を忘れた文章がありました。本当は以下の2段落がグリコ森永事件への関与を否定した部分に続いて入る予定でした。

また、一部の脅迫状は1987年に発生した赤報隊事件の犯行声明を参考にして作成しました。その中に「黒子のバスケは反日的である」などとの記述がありました。それを根拠に「犯人は過激な活動で知られる右派系市民団体のシンパ」という説がネット上に存在しました。そのような団体を批判・監視している活動家の一部が唱えた説ですが、それもはっきり否定します。

さらに「犯人はマンガ・アニメ・ゲームにおける性表現の法的規制を求める活動をしているNGOや宗教団体のシンパ」との説もネット上に存在していました。これもはっきり否定します。

自分は「オチャー」と呼ばれるアンチ在特会の有名活動家が、

「黒バス事件は在特案件」

とtwitterで言い出したのを見つけた時には、腹を抱えて笑いました。オチャーたちは些細な根拠ですぐに在日認定を繰り広げるネトウヨを散々に批判しています。しかし、自らも脅迫状の一部のみを根拠にネトウヨ認定をしているのです。この両者に何か差はあるのでしょうか? オチャーには元ネトウヨが多いと聞いてとても納得しました。昔の転びアカみたいですね。

自分の意見陳述は誤解を招く非常に拙劣なものでした。ネット上の反応を見たのですが、自分に言わせれば全くもってトンチンカンな反応が多いのです。仮に現在がバブル時代のような好況下でも、政府が再配分に熱心でも自分は絶対に事件を起こしています。非正規雇用云々の話は動機には何も関係ありません。

また、

「努力しないお前が悪い」

「藤巻先生だって努力したんだぞ」

というのが最も数の多い自分に対する批判ですが、少なくともその批判をする人物は、動機のポイントを全く理解していません。

「夢が叶わず挫折した人間がどれだけいるのか知らないのか」

という批判も同様です。

その誤解を解くために最終意見陳述の機会を利用させて頂こうかと思っています。ただ、自分の拙い文章で世の誤解を解くつもりが、誤解をこじらせてしまうのではないかと今から危惧しております。

追伸 自分は+民でもなく旧速民でもなく、もちろん東亜民でもなく、嫌儲民でした。

2014年4月30日 威力業務妨害事件被告人 渡邊博史

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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