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「黒子のバスケ」脅迫事件実刑判決についての渡邊被告のコメント発表!

篠田博之月刊『創』編集長
渡邊被告の自筆のメッセージ

2014年8月21日、「黒子のバスケ」脅迫事件の判決公判が開かれ、渡邊博史被告人に求刑通りの懲役4年6月の実刑判決がくだされた。ただし未決勾留日数160日が算入される。渡邊被告は白いワイシャツに黒いズボンで出廷。今回の判決で事件はひとつの区切りを迎えることになった。ここに、渡邊被告本人の「判決を受けての所感」を公表する。

昨年秋以降、渡邊被告と接触し、特に12月の逮捕後は何度も接見を重ねてきた篠田の感想も、その所感の後に書き加えることにする。

判決を受けての所感

「黒子のバスケ」脅迫事件犯人の渡邊博史です。実刑は逮捕前からの想定通りですから、このことについて特別な感慨はありません。ただ正直に申し上げますと、もう娑婆に出たいという気持ちがほとんどありませんから、刑務所に4年以上も住まわせて頂けることが決定した今回の判決に自分は喜んでおります。「こんなクズを社会で面倒を見ないといけないのかよ。本当に腹が立つ」と自分についてコメントしていた某ミクシーの住人さんには、「努力教の自明性に溺れたお前らが納めた税金で、自分はプリズンニート生活を満喫させてもらうわ。ざまあwwww」

と申し上げておきます。

自分は論告求刑で検事が「法律で可能な限り最も長い期間、矯正教育を受けさせる必要がある」と述べたのを聞いて「法律で可能な限り最も長い期間、この被告を公的に保護してやらないといけない」と仰ってくれていると理解しました。

ただ検察に対してこちらから申し上げたいこともあります。論告求刑で「一般予防の見地から厳罰が必要だ」というフレーズが出て来ました。はっきり申し上げまして、たった4年6ヶ月の求刑で一般予防の効果があると検察が本気で考えているのなら、それはお笑い草です。「一般予防」とは、つまり見せしめにするという意味です。検察は自分を見せしめにすべきパブリックエネミーと断じているのです。それならどうして自分にグリコ法なり法技術的に無理筋でも強引に殺人未遂を適用しなかったのかと申し上げたいのです。自分は計画していた書店への放火用に液体燃料を民家から盗んで入手していたことも自供しました。これも検察がその気になれば放火予備と窃盗で立件できたはずです。見せしめでしたら最低でも二桁懲役を求刑しないと効果はないと思います。最低でもグリコ法の懲役10年と複数件の威力業務妨害の懲役4年6ヶ月の併合罪で、懲役14年6ヶ月の求刑は絶対に必要だったと思います。このことは検察も本当は分かっているはずです。自分に懲役4年6ヶ月を求刑したモノマネ芸人のノブ&フッキーの太っている方に似た検事の顔には「コイツにこれしか求刑できないのは、どう考えてもおかしい」と書いてありましたから(笑)。

自分は少しだけ申し訳ないと思っている相手がいます。それは断じて「黒子のバスケ」の作者氏や被害企業や作品のファンではありません。「傲慢な犯罪を起こしたことを悔い改めて頂きたい」と供述した集英社のお偉いさんが検察側証人として出廷したら、

「出版社なんて世論誘導を生業にしているてめえらの方がずっと傲慢だろうがクソ野郎!」

と野次ってやるつもりでしたし、グリコ森永事件当時にグリコの社員だったという体験に基づいて徹底した厳罰論を捜査員に展開したバンダイのお偉いさんが検察側証人として出廷したら、

「こっちは2013年1月から怪人801面相と名乗っていたんだぜ。グリ森事件を体験してんなら、どうして『黒子のバスケ』のお菓子を作るのは危ないって思わなかったんだよ。こっちを責める暇があんなら、まずてめえの危機察知能力の欠如ぶりを自己批判しろよボケ!」

と面罵してやるつもりでした。

自分が申し訳ないと思っている相手とは、逮捕直前の頃におふざけで「藤巻×怪人801面相」というカップリングで妄想していた腐女子たちです。Twitterで《藤巻「801!お前は俺がマンガ家になるのを応援してくれていたじゃないか。それをどうして……」801「悪いことだとは分かっていたさ。でもどうしても藤巻さんに振り向いて欲しくて……」藤巻「801!」801「藤巻さん!」二人はしかと抱き合った》なんてネタを見つけた時には本当に大爆笑しました。自分の逮捕によってその妄想を木っ端微塵に粉砕してしまったであろうことが申し訳なくて仕方がないのです。怪人801面相の正体がこんな小汚いツラのおっさんで本当に残念でしたね(笑)。しかし「コイツのツラをどうしても見てえから早く捕まれ」という意見もありましたので、そういう向きの期待に応えられる程度には、自分のツラはキモかったと思います。

斯様に無反省な人間が逮捕されて「ごめんなさい」と言うと思いますか? 以前にも申し上げましたが、自分が逮捕時に「ごめんなさい。負けました」と言ったという話が、マスコミによる虚報だということが分かると思います。この「ごめんなさい」捏造につきましては、自分は本当に心外で心外で仕方ないのです。

今夜は自弁で事前に購入したお菓子でささやかな実刑判決のお祝いをします。宴の会場はとても快適なホテル東拘インA棟11階の独居房です。

それでは最後に「祝!喪服実刑!」などとツイートして下さってくれているであろうTwitterの黒バスクラスタの皆様たちに申し上げます。

「自分と一緒に喜んでくれて本当にありがとう!」

2014年8月21日喪服の死神こと渡邊博史

渡邊被告と接触してきた『創』編集長・篠田の感想

懲役4年6カ月の実刑判決。ほぼ予想通りだった。裁判所としては見せしめ効果も考えて求刑通り、威力業務妨害事件としては目いっぱい重い判決をくだしたのだろう。それに対する渡邊被告のコメントは、この間の彼の発言と同じく、やや意識的に偽悪的な、世の中の反発を敢えて喚起するような内容だった。渡邊被告とこの間、接触してきた私としては、思いはやや複雑なのだが、とりあえず彼があと4年余は生きていることが決まってほっとしたという心境だ。

渡邊被告は自ら謝罪はしないと言明しているように、死を覚悟して起こした犯罪だから、出所したら自殺するという意志は今も変わっていないと思う。ただ、私が着目したのは、獄中で彼はたくさんの本を読み、自分自身についても自分の犯した犯罪についても多くのことを考えるようになったことだ。大きな反響を呼んだ冒頭意見陳述を彼は最終意見陳述で撤回すると宣言したが、別に冒頭意見陳述が間違っていたわけでなく、何カ月かの間に、いろいろなことを知って考えを進化させたといえる。

本当は、機会や環境さえあればこれまでにも変わる可能性があったわけだ。そして、あと4年余の歳月は、彼にさらなる進化の可能性を委ねた猶予期間といえるだろう。絶望して死を覚悟し、一連の犯罪を犯した彼がこの4年余で何か生きていく理由を見つけることができるのかどうか。我々は見守らないといけないし、彼のような絶望の果てに「無敵の人」に転化していく人が増えて行くのを社会がどう止めるのかという課題をつきつけられたといえる。

先日、秋葉原事件の加藤智大被告が自発的に送って来たコメントはこのヤフーブログで公開したが、渡邊被告は、加藤被告が多くの人を殺傷し、自分がそうならなかったのはたまたまだ、と語っている。2つの事件の背景には、今の日本社会の病理ともいえる深刻な状況が横たわっている。それに社会の側が真剣に向き合わないと深刻な事態を迎えてしまうということを、この2つの事件は示していると思う。

渡邊被告は冗談めかして東京拘置所を「ホテル東拘イン」と呼んでいるのだが、聞いてみると彼はこれまでエアコンの効いた部屋で暮らしたことがなかったという。年収200万を超えたことがないという、ワーキングプアともいえる生活を長いこと送ってきた彼にとっては冗談でなく本当に拘置所は快適らしい。拘置所や刑務所の生活の方がランクが上だという人たちが今の日本社会にたくさんいること、そしてそういう現実とこの犯罪はやはり結びついているということも考えないわけにはいかない(本人はそういう生活にもそこそこ満足していたのでそこへの不満から犯罪を犯したという見方を否定するのだが)。

渡邊被告の犯罪と彼の幼少期のいじめや虐待がどう関わっているかについては、月刊『創』で香山リカさんや斎藤環さんら精神科医が分析している。渡邊被告本人にとっては、そのいじめ・虐待の方が今や自分の犯罪との関わりにおいて大きなウエイトを占めているのだが、これについては、ぜひ多くの精神科医の発言や分析に期待したいと思う。

月刊『創』編集長・篠田博之

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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