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安倍政権を揺るがす!?学生団体SEALDsが今週3日間連続で安保法制強行採決反対の国会前抗議

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
SEALDsの渋谷ハチ公前での安保法制反対アピール
SEALDsの渋谷ハチ公前での安保法制反対アピール

日本が直接攻撃を受けなくても、米軍等と共に武力行使を行う、米軍等への補給活動(後方支援)を行うなど「憲法違反の法案」と批判が高まる安保法制。この安保法制に反対する学生グループ「SEALDs(シールズ)」の活動が、注目を集めている。学生のみならず、学者や著名人、各野党の議員たちも巻き込んだ大きなうねりが、安保法制を強行採決しようとする安倍政権を脅かしつつあるのだ。

○国会前に集まる若者たち、共感する学者、著名人、国会議員

「憲法守れ!」「PEACE NOT WAR」…様々なメッセージが書かれた、カラフルなプラカード群が国会前を覆っている。SEALDsが呼びかけ、毎週金曜日の晩に行われている安保法制への抗議行動だ。今年6月5日に開始されて以来、回を増すごとに参加者数が増え、先週金曜日には、1万5000人以上(主催者発表)にまで膨れ上がっている。こうした動きを、報道ステーション、報道特集、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞etc、メディアも大きく報道。NEWS ポストセブンによれば、「若者に自分は支持されている」と思っていた安倍首相もSEALDsの活動の盛り上がりに神経をとがらしているという。

10代、20代の大学生たちが中心メンバーであるSEALDsだが、その活動に賛同し、国会前で発言するのは、若者たちだけではない。6月5日の国会前アクションでは、憲法学者の小林節・慶應義塾大学名誉教授が突如現れ、マイクを握った。かつては、自民党改憲派のブレーンであった小林教授だが、自らの解釈で憲法違反の法案を「合憲」だと押し通そうとする安倍政権に強い憤りを感じ、「間違ってこのまま『世界の警察』までやってしまったら、アメリカと同じで経済的に滅びるし、世界中を敵に回す」と危機感を抱いているという。土砂降りの中、びしょ濡れになりながらも小林教授は「私も66歳の年寄りで、きみたち世代のために、よきものを残さなければとたたかっておりますけれども、きみたちも連綿と続く民族のなかで、さらに次の世代への責任があります。こういう歴史の流れの中で、次の世代への責任をとるという想いでたたかっていただきたい」とSEALDsの若者たちにエールを送ったのだった。ほかにも、「I AM NOT ABE」で知られる元経産省官僚の古賀茂明氏や、国文学者の小森陽一東大教授、ジャーナリストの津田大介氏など、毎回、国会前アクションでは各分野で活躍する学者や著名人の誰かしらがSEALDsと共に安保法制反対を訴えている。

左から民主党の小西議員、維新の初鹿議員、社民党の佐藤八王子市議
左から民主党の小西議員、維新の初鹿議員、社民党の佐藤八王子市議

SEALDsが力を入れているのは、国会前での抗議行動だけではない。国会議員らに働きかけ、党派を超えた安保法制反対の動きをまとめるよう、促している。6月27日に渋谷駅ハチ公前で行われた街頭アピールでは、民主党の菅直人元首相、小西洋之参院議員、共産党の志位和夫委員長、維新の党の初鹿明博衆議院議員、生活の党の山本太郎参議院議員、社民党の吉田忠智党首の代理として佐藤あずさ八王子市議らが参加。SEALDsメンバーらが見守る中、「オール野党」として握手を交わした。公の場で安保法制反対で野党メンバーが勢ぞろいし共闘を約束したのは、大きな成果だろう。

○打算も「大人の都合」もない、純粋でまっとうな訴え

街頭の人々に訴えるSEALDsメンバーの小林さん
街頭の人々に訴えるSEALDsメンバーの小林さん

SEALDsの訴えが多くの人々の胸を打つのは、それが、打算も「大人の都合」もない、純粋でまっとうな訴えだからだろう。例えば、27日の街頭アピールで大学4年生の小林叶さんは、政府が格差貧困の深刻化を放置している一方で、安保法制を国民の平和と安全のためだと主張する矛盾を突いた。

「この国は貧困大国。毎年2000人が餓死している(中略)多くの先進諸国で高等・大学教育が無料化されているのに、この国では授業料は高くなるばかり(中略)この国では、派遣社員が不当に無限に安く搾取され続けている。つまり、政府は私たちの生活なんかどうでもいいのです。その政府が国民を守るためと安保法制を通そうとしている。でもそれを信じられるでしょうか?政府が国民に十分な食べ物や教育を与えない中でどうして国民のためと信じられるでしょうか?」(小林さんのスピーチより抜粋)

街頭アピールするSEALDsメンバーのミキさん
街頭アピールするSEALDsメンバーのミキさん

看護師を目指して勉強中だというミキさんも、戦争被害にあった各国の子ども達のケアをするNGOでのインターン経験から、米国が主導する戦争に日本も加担することの危うさを訴えた。

「3年前、生きるために親元を離れて治療をするアフガニスタンの子供たちに出会い、数カ月を共に過ごしました(中略)手足がなくても、顔に火傷を負って差別されても、子供たちは助け合い、大抵のことは自分たちで出来るようになります。けれど時間はそうはいきません。もっと色々な経験ができたはずの時間が治療やリハビリに費やされています。そして、大切な成長期に親元にいられないことや、恐怖や憎悪の記憶は彼らの心にしっかりと刻みつけられているのです。怪我や病は確実に彼らの可能性を奪っています。これが、これこそが、報復戦争の結果で、戦争の現実にほかなりません。子供たちがあんな思いを今しているのは、『アフガニスタン人だから』ではなく、憎悪にかられた武力行使のせいでしょう。それさえなければ彼らがあんなに苦しむ必要はなかったでしょう。私が出会った子どもたちの人生は、物語でもないし美談でもありません。アフガニスタン人が傷つくことは普通じゃないし、そんなことはあってはならないんです。彼らがこれ以上傷つくことを私は許せないし、日本人がそれに加担し、私自身がその責任を背負いながら、彼らにまたどう向き合っていけばいいのか分かりません」(ミキさんのスピーチより抜粋)

○今週は3日連続で国会前行動、強行採決に反対

奥田愛基さん
奥田愛基さん

広報戦略やスピーチの質、行動力に秀でるSEALDsだが、基本的には特別なことを言っているわけではなく、「政府は憲法を守れ」というのは、民主主義国家では大前提。誰しもが賛同しうることのはずだ。SEALDsの中心メンバー、奥田愛基さんは「一人一人が主体的に動いてほしい。とにかく、国会前に来てください。何万人、何十万人という人々で、国会を取り囲みたいです」と呼びかける。

今週中にも安倍政権は安保法制の衆議院での強行採決を狙う中、SEALDsは今週15日、16日、17日のそれぞれ18時半から、3日間連続で国会前北庭エリアでの採決反対の抗議活動を行うという。仮に衆院で強行採決を行えば、ますます大きな抗議の声に安倍政権は悩まされることになりそうだ。

(了)

※本記事の写真は全て志葉玲の撮影です。

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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