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パチンコ法的論争に決着、いわゆる「パチンコ換金」は合法です

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(ペイレスイメージズ/アフロ)

正直、もうちょっと「あぁでもない、こうでもない」のモヤモヤとした期間を楽しみたかった部分もあるのですが、昨日ご紹介したパチンコ景品買取行為の適法性に関する質問主意書、質問者の緒方林太郎議員が己のブログにおいて先出しの政府回答書の内容を紹介しています。以下、緒方議員のブログより抜粋して転載。

質問主意書(風営法)

http://ameblo.jp/rintaro-o/

【質問】

六 ぱちんこ屋で景品を得た後、その景品を金銭に交換している現実を政府として把握しているか。

七 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定されるぱちんこ屋は、刑法第二編第二十三章における罪の違法性を阻却する必要はないのか。

【答弁書】

六について

客がぱちんこ屋の営業者からその営業に関し賞品の提供を受けた後、ぱちんこ屋の営業者以外の第三者に当該賞品を売却することもあると承知している。

七について

ぱちんこ屋については、客の射幸心をそそるおそれがあることから、風営法に基づき必要な規制が行われているところであり、当該規制の範囲内で行われる営業については、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条に規定する罪に該当しないと考えている。

ということで「(風営法の)規制の範囲内で行われる営業については、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条に規定する罪に該当しない」という事が明示されまして、パチンコ業界の皆様の大勝利です。オメデトウゴザイマス。

パチンコにおける「いわゆる換金行為」(正確には景品買取行為)に関する、警察庁および政府答弁は「直ちに違法とはならない」という表現を使うのが常であり、「賭博罪には当らない」という表現は私が知る限りにおいてこれまで公式に使われた事はありません。 「直ちに違法とはならない」というのは他の法的判断においてもしばしば使われる表現ではありますが、「忽ちこの場で違法であるとは断言できない」といういわゆる「疑わしきは罰せず」の罪刑法定主義に基づく表現でありますが、一方で将来の法的判断に対しては「別の結論の余地」を残した表現でもあり、この表現がパチンコ業界が「グレー」と評される一つの根拠でありました。

それに対して今回、政府が「パチンコ景品が売却され結果的に客が現金を手にすることがある」という現状認識を明示しつつ、その営業が風営法の規制範囲で行われている限り賭博罪(刑法第185条)が適用されることはないと断言したことはパチンコ業界にとっては大きな前進であることは間違いないでしょう。業界の皆様におかれましては、今後、「嫌パチンコ」派の方々から「違法駅前賭博」などというレッテルを貼られた時は、「内閣総理大臣 安倍晋三」名で出されたこの政府答弁書を金科玉条の如く掲げることをお勧めいたします(笑

そしてこれは「奇しくも」という表現となるわけですが、パチンコ業界はこの2年ほどの間に「釘問題」、「換金問題」という業界2大タブーを乗り越えた(もしくは「事故的に」乗り越えることとなった)こととなります。この二つの法的論争は、東京証券取引所がパチンコホール企業の上場をこれまで認めて来なかった2大要因であり、まさに「奇しくも」この問題を乗り越えたパチンコホール企業の皆様は東証への上場に向けての大きく前進をしたということになります。勿論、その前に必要となるのは、目下、まさに処理の行われている「検定時と性能が異なる可能性のある遊技機」問題への対応。まずは、定められた年末までの問題対処をこなした上で、「新しいステージ」に突入されることを心よりお祈りしているところです。

という事で、長きに亘って論争を振りまいてきたいわゆる「パチンコ換金」に纏わる法的論争はこれにて終幕。関係各所の皆様の今後のご活躍を祈念しております。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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