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フィリピン台風被災地支援、赤十字への寄付の前に…(追記あり)

関口威人ジャーナリスト
フィリピン緊急救援への寄付を呼び掛けるNPO法人「ICAN」のサイト

台風30号(ハイエン)によるフィリピンの被害が拡大している。900hPaを下回る猛烈なエネルギーが引き起こした高潮は、まさに津波の様相を呈していたのだろう。東日本の被災地を思い起こさせる衝撃的な映像が続々と配信されている。

04年津波では赤十字に100億円

現地には行けないけれど、何かしたいと思う人はまず寄付を考えるだろう。2004年のスマトラ島沖地震・津波のときは、日本赤十字社に5年間で100億円近くの救援金が寄せられた。今回も赤十字への寄付は殺到するだろう。それを見越した準備や現地の混乱かららしく、同社によれば今回の救援金の正式な受け付けは12日以降になるという(追記・インターネットでの受け付けは11日中に開始、ただし22:00現在かなりつながりにくい状態。ゆうちょ銀での取り扱いは12日から)。

もちろん赤十字で構わない。でもその前に、周りもよく見回してほしい。

フィリピン支援は国際協力のいわば「常道」だ。日本から大小さまざまな団体が日常的な支援を続けてきている。私の知る西日本の団体に限っても少なくない。

名古屋の認定NPO法人アジア日本相互交流センター(ICAN=アイキャン)は、マニラ近郊のパヤタス地区のスラムに暮らす女性たちに裁縫を教え、自立を促す活動などで20年近くの実績と経験がある。今回もフィリピン国内の3つの事務所のスタッフをいち早くレイテ島に向かわせ、日本の支援者には緊急救援への募金を呼び掛けている。

大阪に本部事務所を置くNGO日本国際飢餓対策機構もフィリピンの子どもたちへの給食支援などを続けてきた。今回は現地駐在の日本人スタッフ2人に加え、日本からもスタッフ2人を派遣する予定で対応を始めている。

阪神・淡路の経験を海外支援に生かすCODE海外災害援助市民センターも神戸からのスタッフ派遣を検討、岡山からはAMDA(アムダ)の看護師が現地へ向かった。

「人ごと」にしないために

いずれも東日本大震災では長期的な支援を続けている団体ばかりだ。海外での経験が日本国内の支援に生かされ、その経験がまた海外に還元されようとしている。

スマトラ島沖のとき、あれほどの惨事が現代日本でも起こりうると想像できた日本人がどれだけいただろう。

「これまでに経験したことのない」気象災害はすでに日本で常態化しつつある。島嶼部の救援の困難さは、伊豆大島の大水害で経験していることだ。

フィリピンの被害を「人ごと」にしないため、支援の窓口もできるだけ身近に見つけられてほしい。

【追記・14日】こちらも私が直接知る医療NPO、ジャパンハート

18年以上にわたってミャンマーで子どもの無償医療支援を続ける異端の小児科医、吉岡秀人さん率いる若き医師、看護師らのネットワーク。

アジアの途上国の過酷な環境下での活動は並みの国際機関に負けず劣らず。東日本では石巻にプレハブの小児クリニックを開き、現在も活動を続けている。

報告によると昨日から第一陣の医師、看護師3人がフィリピン入り。続いて私がミャンマーでお世話になった長谷川さんという看護師さんもバンコク経由で現地に向かっているそうだ。

ぜひ支援のご検討を。

ジャーナリスト

1973年横浜市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学)修了。中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で社会問題をはじめ環境や防災、科学技術などの諸問題を追い掛ける。2022年まで環境専門紙の編集長を10年間務めた。現在は一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」代表理事、サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」編集委員、NPO法人「震災リゲイン」理事など。

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