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AKB選抜総選挙岡田奈々さんの告白:機能性低血糖症と摂食障害

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
新潟駅に並ぶAKB選抜総選挙のポスター(筆者撮影)

■「私は機能性低血糖症と診断されました。そこから摂食障害、過食、嘔吐を引き起こしました。」:AKB岡田奈々さん選抜総選挙で告白

6月18日、新潟で開催された「第8回AKB48選抜総選挙 2016」。第14位に選ばれた岡田奈々さん。体調不良で休養していた理由を告白しました。

「私は機能性低血糖症と診断されました。そこから摂食障害、過食、嘔吐を引き起こしました。なかなか言えなくてごめんなさい」

有名人の病気のカミングアウトは、大きな意味を持ちます。岡田奈々さんの勇気ある告白です。

■摂食障害とは

摂食障害とは、拒食や過食など食行動の異常がある病気で、厚生労働省の難治性疾患(難病)に指定されています。

拒食になると、普通の人が見れば痩せすぎと思うほど痩せて、様々な内科的病気も併発しますが、本人はちょうど良い体型と感じたりもします。

過食は、普通の大食いの程度を超えた量を食べます。しかし、大抵はそれほど太りません。食べ過ぎた後はわざと嘔吐などをするからです。もちろん、体に良いわけはなく、長く続ければ嘔吐した胃液で歯が溶けることもあります。

■摂食障害の原因は

一般的には、行きすぎた痩せ願望や成熟拒否などが原因とされ、拒食になり、次には心は食べ物を拒否しても体は強く求めるために過食になり、食べた後は自責の念から嘔吐するといったパターンを繰り返します。

カーペンターズのボーカルだったカレンは、拒食症で命を失っています。ダイアナ元妃は、過食症だったと告白しています。

フィギュアスケートの鈴木明子さんも、摂食障害(拒食症)だったと告白しています。鈴木さんは身長160センチで体重48キロでしたが、一時、32キロにまで体重が落ちました。

本来とても有能な人が、自分ではどうしようもない困難な状況に置かれた時、摂食障害になることもあるとも言われています。

さらに近年では、機能性低血糖症など、栄養の問題が摂食障害を引き起こすとも言われています。

■機能性低血糖症と摂食障害

機能性低血糖症とは、糖尿病などではなく低血糖状態になる病気です。低血糖になると、元気がなくなります。ぼんやりしたり、うつっぽくなったり、様々な心身の不調が起きます。

そして近年、摂食障害の原因とも言われています。

低血糖状態は、体にとってとても危機的状況のために、強い食欲のスイッチが入ってしまい、過食になってしまいます。このような場合には、摂食障害は心の病というよりも、体の病と言ったほうが良いかもしれません。

■これを言ったら嫌われちゃうんじゃないかと思っていたけど:支え合いと勇気

岡田奈々さんの場合は、低血糖症からの摂食障害だったようです。それでも、過食嘔吐は、あまり人に話したくない症状でしょう。アイドルには、似つかわしくない病気かもしれません。

本当はおかしなことですけれど、しかし病気や症状には人に言いやすいものと言いにくいものがあります。

岡田奈々さんは、選抜総選挙のスピーチで語っています。

「なかなか言えなくてごめんなさい。これを言ったら嫌われちゃうんじゃないかと思っていたけど、信じて待っていてくれて、こうして目標である選抜まで押し上げてくれて、ちゃんと皆さんに言わなきゃいけないなと思いました」。

低血糖からの摂食障害、過食嘔吐という症状を告白することには、不安や抵抗があったことでしょう。それは、当然のことです。

さて、では実際はどうでしょうか。

おそらく、岡田奈々さんのすべてのファンは、彼女を応援する気持ちでいっぱいでしょう。ファンではない人々も、岡田さんの話を聞いて不快に思うような人は例外的で、多くの人はきっと好意的に見たことでしょう。

さらに、全国の摂食障害の患者さんやご家族にとって、大きな励ましになったと思います。

摂食障害は、様々な原因が考えられ、心と体と脳の問題が絡み合っていると言えるでしょう。症状を抱えながら頑張っている人も大勢いますが、長期にわたって治りにくいこともあり、拒食症の場合は命に関わることも珍しくありません。

しかしいずれにせよ、医学的な治療と共に、周囲の理解と互いの支え合いが大切です。

アイドルは、私たちに夢と元気を与えてくれます。岡田奈々さんの今後のさらなる活躍を祈ると共に、同じ症状で苦しんでいる人々に勇気と希望を与えてくださることを期待したいと思います。

*「機能性低血糖症と摂食障害2:AKB選抜総選挙岡田奈々さんの告白:どちらが原因結果?

「因果関係は逆」とのご意見を受けて、新しいページをアップしました。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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