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ノルウェー連続テロ受刑者、オスロ大学入学が決定

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
窓模様のカバーで覆われたままの政府庁舎  Photo:Asaki Abumi

2011年7月22日に発生したノルウェー連続テロ事件で、爆破や銃乱射事件を引き起こし、77人もの命を奪ったアンネシュ・ベーリング・ブレイビク受刑者。7月17日、同受刑者の大学入学許可が受理されたことを、オスロ大学が公式HPで発表した。申請は6月18日に受理されていることが既に発表されており、現地ではその動向と大学側の対応を巡って、国民の間に動揺が広がっていた。

ノルウェー連続テロ受刑者、「大学で政治学を学びたい」

ノルウェーでは全ての受刑者は高等教育を受ける権利がある。大学側は、同受刑者は獄中で自習をするかたちで学ぶこととなり、キャンパスへ出向いたり、教員や学生と直接的な接触はできないとしている。

「この申請者のためだけに規則を変更することは、平等という社会システムに背を向けることになる」と、オーレ・ペッテル・オッテルセン学長はコメントを発表。現在、ノルウェーは夏休み期間。同受刑者は、今年度の秋学期8月より、オスロ大学で政治学の学士号取得のために、通常の過程であれば、3年間は正規の「大学生」となる。

ノルウェー国営放送局の報道によると、政治学科で必修科目とされる4科目は自習で単位を取得できる。しかしながら、その他の5科目は、クラスメートとの討論が目的とされたセミナーへの出席が必須となるため、最終的に学士号を得ることは難しいのではとされている。

筆者は、現在オスロ大学大学院でメディア学を学んでいるが、この一件が大学の教員や生徒になんらかの不安要素を与えることは必須だろう。テロ事件が発生して4年目となる日が数日後にせまる中、ノルウェーが目指す平等社会のあり方に、個人的に疑問を感じざるをえない。

オスロ大学公式発表Anders Behring Breivik har fatt opptak ved UiO

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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