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北欧ではCD は化石?「デジタル化なんて最悪だ!」録音音楽の収益8割を占めるストリーミング 

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
北欧音楽の変化を見続けたスウェーデンのE-Type Photo:A Abumi

北欧では、今や音楽を聞く手段はストリーミングだ。2008年にノルウェーに来て以来、筆者はCDを1枚も購入しておらず、Spotifyの有料版で音楽を聴いている。

iTunesはSpotifyの後にきたため、業界関係者以外では、一般市民のノルウェー人で使っている人はあまり見かけない。飲み会やイベントでは、Spotifyで音楽を流すことが日常となっている。

IFPIノルウェーの2016年度上半期の発表によると、ノルウェー国内の録音音楽の売り上げの83%は、Spotify、Tidal、Apple Musicをトップスリーとしたストリーミングサービスから。昨年度に比べて3%上昇。

CDなどのフィジカル音楽の売り上げは13%と軒並み傾向。LPレコードは新たなトレンドとなりつつある。フィジカル音楽でのLPレコードの収益は、昨年は24%だったが、今年は33%と上昇中。

You Tubeに関心が低いノルウェー音楽業界

一方、You Tubeからの売り下は1.5%以下と下降を続ける。You Tubeからの収益が少ない原因について、IFPノルウェーは、人口の25%しかデイリーユーザーがいないことを指摘している。

しかし、そもそもノルウェーのアーティストは、プロモーションする際にビジュアルに力を注ぐことが少なく、音だけをネットにアップすることが多い。ビデオは作らず、作ったとしても積極的にYou Tubeにアップしないことがよくある。ビデオがそもそもアップされていないのであれば、誰も聞かないだろう。

低コストで抑えられるという理由で、デジタル化が進んでいるが、ビジュアルやビデオの効果を過小評価する傾向を、ノルウェーの音楽業界は改善する必要があるのではと筆者は感じている。

15~70歳の1700人のノルウェー人を対象にした調査によると、84%がスマートフォンで音楽を毎日視聴している。

スウェーデンでは?

Spotifyを産んだ国といえば、スウェーデンだ。IFPIスウェーデンによると、今年度上半期で録音音楽の全体収益で占めるストリーミングの割合は85,8%、CDは8,1%、レコードは3,5%を占める。

10月中旬、ノルウェーの首都オスロから電車で1時間ほど離れた町ローデで、食と音楽の祭典ローデ・パークフェスティバルが開催された。大物ゲストとして招かれたのは、北欧のユーロダンスを代表するスウェーデンのイー・タイプ(E-Type)。

シンガーのボー・マルティン・エリク・エリクソンさんに、インタビューをした。

これまで、スウェーデン、フィンランド、カナダ、英国を中心にツアーを行い、ノルウェーにも100回以上訪れているという。まだ来日はしたことないというが、来年はプライベートで日本食を食べに行きたいと語る。

「デジタル化なんて最悪だ!」

90年代より活躍するE-Typeは、音楽サービスがデジタル化される変化を目の当たりにしてきた。

スウェーデンでも、iTunesやSpotifyで音楽を聴くことが今や当たり前となっていると話すエリクソンさん。「デジタル化をどう思うか」聞いたところ、「デジタル化なんて最悪だ!」とすぐさま言い切った。

「ビデオを作る楽しみとかが、全部なくなってしまった」と、音楽を作る過程や、音楽を聴く過程そのものが変わってしまったと、昔を懐かしむ。

「以前はアルバムを買って、“これはいいかも、これはまぁまぁ”と、複数の曲を聴きながら、全体を楽しんでいた。そういう思考は、1曲聞いているだけでは生まれない。今はヒットチャートで1曲しか聞かなくなってしまった。CDを聞く手段さえ、今はなくなってきている。CDを直接入れることのできるノートパソコンだって減ったし、今なんて家にCDを聞く機械さえない人もいる」。

これまで購入してきたアルバムは、すべて所有しているというエリクソンさん。「家に数千枚あるよ。段ボール箱に入っているものもあるけれど、いつか孫ができたらプレゼントするんだ」と語る。

CDだけではなく、コンサート会場でのグッズ販売も昔のこととなった。E-Typeでは、すでに10年前にTシャツなどの販売は終了したという。

「北欧に比べて、日本ではまだCDを購入して楽しんでいる人がいるから、いつか来日してコンサートをしてみたら」と伝えたら、とても興味を持っていた。アーティストが、デジタル化を心の底から楽しめるまでには、まだ課題が多い。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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