Yahoo!ニュース

ATPツアーファイナル ファイナルレポ:ジョコビッチが4年連続5回目の優勝!チョコで締めくくる甘い夜

内田暁フリーランスライター
優勝後の会見で、チョコレートを自ら記者にふるまうジョコビッチ

今シーズンがどのような1年だったか――そのテーマをより明確にする、最終戦の最後の試合だったと言えるでしょう。ジョコビッチがフェデラーを6-3、6-4で破り頂点へ。

「信じられないシーズンだった。これ以上は望めない」

今季11個目となるトロフィーを紅潮した笑顔で眺めながら、王者は言いました。

わずか5日前のラウンドロビンの対戦では、フェデラーが速攻テニスでジョコビッチを圧倒。フェデラーのバリエーションの前にミスを重ねたジョコビッチは「僕が勝利を手渡してしまったようなもの」と憮然と言いましたが、数日後の決勝で修正してくるあたりは流石です。攻守一体となったストロークが深く刺さり、そして“唯一のフェデラー攻略法”の初心に戻ったかのように、相手のバックを攻めていきます。

「彼はフォアもバックも同じように素晴らしい。でもバック・バックの打ち合いは、フォア・フォアよりも僕に分がある」

手堅いバックの打ち合いで鉄壁のストロークを見せるジョコビッチに対し、窮屈そうに攻めるフェデラーは徐々にミスが増えていきました。

さらにこの日のジョコビッチが良かったのはサービス。特にセカンドサービスで、キックを多用し自分の打ち合いに持っていく展開は、準決勝のナダル戦でもジョコビッチの一つの生命線となったものです。決勝戦での、ジョコビッチのセカンドサービスポイント獲得率は、ファーストのそれを上回る84%。対するフェデラーは、セカンドサービスになるとジョコビッチに叩かれ、特に第2セットのポイント獲得率は38%。この日最後のポイントがフェデラーのダブルフォールトだったのは、ある意味で象徴的でした。

シーズン最後の会見は、ジョコビッチ曰く「恒例行事」となった、“ジョコレート”ことチョコレート配りで幕を閉じます。自ら箱を手にして、記者の間を練り歩くジョコビッチ。

余談になりますが、この際に、ちょうど自分の目前に来たところでチョコの箱が空になりました。「あ、なくなっちゃった……」。心の声のつもりが思わず漏れていたらしく、ジョコビッチはすかさず「心配しないで! まだあるから。ほーら、こっちはもっとたくさん種類があるぞ!」と新しい箱をさし出してくれました。「サンキュ!」と言い一つつまむと、「アリガトウ!」と応じるジョコビッチ。

絶対的な王者の余裕と、文字通りの心配りをチョコの甘さと共に噛みしめる、2015年のATPシーズン最後の夜でした。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookから転載。連日、テニスの最新情報を配信しています

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

内田暁の最近の記事