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全豪OP2回戦:大坂なおみ 世界9位の巧妙さに破れるも、相手から学んだ“自分が一番欲しい物”

内田暁フリーランスライター

●大坂なおみ 4-6 2-6 J・コンタ

この一戦で勝敗を分けた最大の要素は、サービスだったと言えるでしょう。

サービスが武器となったのは、時速200キロを誇るなど、何かと話題にのぼる大坂のそれではありません。

あまりにスキのないコンタのサービスが、大坂に反撃の機を与えなかったのです。

「サービスに驚いた。特に彼女のファーストサービスの確率は、かなり高かったと思う」

試合後に、最も脅威に感じた相手のプレーについて問われると、大坂そう即答しました。

そして彼女は、こうも言います。

「awarenessって、日本語ではなんて言ったらいいのかな?」。

日本語では、自身の想いを表現するのに、適した言葉を見つけられなかったのでしょう。会見の席で、彼女は報道陣にたずねてきました。

「相手のサービスを読むことができなかったということ?」

そう確認の問いを向けると、彼女は「うん」と首を縦に振りました。

大坂が試合中に感じていたように、事実この日のコンタのファーストサービスは、70%の高確率を記録しました。しかしこの数字以上に驚くべきは、89%(33/37)を叩きだしたポイント獲得率。特に第1セットの第6ゲームまで、コンタのファーストの確率は90%、ポイント獲得率は100%だったのです。リターンゲームで全くリズムがつかめなかった大坂は、試合が進むにつれ打つポジションも上げてくるコンタに、真綿で首を絞められるようにジリジリと……しかし確実にプレッシャーを掛けられました。第1セットは並走状態で進んだ第9ゲームで、コンタにバックの逆クロス気味のウイナーを決められ失います。以降は、大坂のプレーが決して悪い訳ではないながら、ミスが少なく崩れる気配のない世界9位から、反撃の糸口を見いだせませんでした。

「楽しかったし、多くを学んだ」

試合後、意外なまでに清々しい表情の大坂は、「彼女の方が、テニスというゲームを良く知っていた」と敗因を簡潔に振り返りました。

テニスを知る……それは実は大坂自身が昨年末から、最も重点的に取り組んでいる課題でもあります。だからこそ今日の一戦で、彼女は自分が探している物の、輪郭を見た気がしたのでしょう。

一方、そのような大坂の成長は、対戦相手のコンタが肌身で感じたことでもありました。

「彼女はサービスが速く、ボールを強く叩いてくることは以前の対戦から分かっていた」

大坂に抱いていた印象をそう振り返るコンタですが、「実際に彼女のショットは、思った通り強烈だったか?」と問われると、「そこが面白いところなのよね」と笑みを浮かべて続けます。

「彼女は実は、スピードを緩めたボールを多く使ってくるの。だから、いつ物凄い一撃が来るか分からないのよ」

緊張感溢れる打ち合いの中で、両者の間で交わされた駆け引きと精神戦――。

「去年は緊張したけれど、今年は楽しかった」と笑顔で振り返るロッドレーバーアリーナから、成長著しい19歳が持ち帰ったものは、周囲の目に映る以上に大きかったようです。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。連日大会レポートを掲載しています。

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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