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ゴールデングローブ賞男優賞受賞! 話題の俳優マシュー・マコノヒーって誰?

渥美志保映画ライター
ああ、この人、知ってる知ってるって、感じのマシュー・マコノヒー

アメリカのゴールデングローブ(GG)賞が発表になりましたねえ……なーんちゃって!発表になってませんねー、てか授賞式が日本時間で13日だし! でも私が独自にフライングで、ドラマ部門の主演男優賞を『ダラス・バイヤーズ・クラブ』のマシュー・マコノヒーに決めましたー。ええ、完全に無許可身勝手状態ですが、世界的な影響も大きくないと思われるので大目に見ていただくということで。 まあ何が言いたいかっていうと、彼はGG賞の大本命で、同時にアカデミー賞も大本命なんですよ。なのにさあ、知名度低いよねー。「マコノヒーって誰よ?てかサイトによっちゃ“マコナヘイ”って書いてあるけどどっちなんだよ!」ってな人も多い!そらいかん!つうわけで今回は、16日に公開されるもう一本、批評家絶賛の主演作『MUD』を中心に、この人をバーンとフューチャーしちゃいたいと思います!カモン、マコナヘイ!

まずは『MUD』の物語を。

舞台はアメリカ南部のミシシッピー川沿い。14歳の少年エリスは、川の中州の無人島に隠れ暮らすマッドと出会います。デニムのお尻にデカい拳銃を突っ込んだエラく怪しい男です。彼には幼い頃から愛し続けている女性、ジュニパーと落ち合う約束があり、身を隠しながら彼女が来るのを待っていると語ります。両親の離婚話にショックを受けていたエリスは、この世には「本当の愛」だってあると証明したくて、ふたりの愛を成就させようと手助けを始めます。少年、なんてピュアなの。

さてそんな純粋な変人を演じているマコちゃん(勝手に命名)ですが、これまでの出演作は『コンタクト』『アミスタッド』『10日間で男を上手にフル方法』『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』など、ラブコメから歴史大作まで、華やかかつバラエティ豊富。05年と'07年にはピープル誌の「最もセクシーな男」にも選ばれてますが、“別に他のイケメンがやってもよくね?”くらいな印象でしたね、私は。

それが一変するのが’12年。ゲイの記者を演じた『ペーパーボーイ 真夏の引力』、男性ストリップクラブのオーナーを胡散臭く演じた『マジック・マイク』、そしてこの作品『MUD』の3本です。中でもブッ飛んだ『ペーパーボーイ 真夏の引力』では、一瞬、誰この人?って思うくらい顔つき激変。良くも悪くもイケメン俳優じゃなくなってるんですね。

その原点は、前年の’11年に公開されたウィリアム・フリードキン(『エクソシスト』)監督の『キラー・スナイパー』にあると見ました。はい、こちら。

暴力とセックスが満載、且つマヌケで大爆笑というこの作品で彼が演じたのは、ただのイケメンならまず選ばない「ロリコンで凶暴でエキセントリックな保安官で殺し屋」。普通の女子には決してオススメしませんが、もうすっごいキレッキレの怪演。クレイジーな監督の要求に応えるうちに、自分の演技や羞恥心の限界が広がり、俳優として開眼しちゃったという、園子温×満島ひかりパターンです。まちがいありません~

『キラー・スナイパー』以降の作品には、もうひとつの共通点があります。

それは舞台がぜーんぶ南部であること。彼はテキサス(西部)出身なんですが、誤解を恐れず言っちゃうと、マコちゃんには田舎っぽい役が合うんです。なんてーの、マスクも体型もどこかちょっとユルい、都会のピリピリ感がないんですね。なんつったって趣味がすごい。太鼓ですから。ドラムじゃねーよ、手でポンポコ叩く部族風味のあれですから。以前インタビューした時も「撮影が終わった後、夜の砂漠でひとり太鼓叩いたんだけど、マジ最高だったよねー」とか言っちゃって、アーバンな香りまるでナシ。ネイチャーでちょい変人な気のいい兄ちゃんなんですねえ。

演技者としての成熟とともに、そういう素地にぴったりの役がズバズバとハマりだしているわけです。

その最たる作品が『MUD』です。というわけで映画に戻りましょう。

やがて分かってくるマッドの素性は、川沿いに住む貧乏白人の典型、両親がなく教養がなく、先住民のまじないを本気で信じている迷信深い男です。そして実は、ジュニパーを妊娠させた上にボコボコにして流産させた暴力男を殺し、追われているんですねー。

彼を知る人物はみんな彼を「ウソつきだ」とか「バカだ」と言い、それはある意味で真実ですが、別の視点から見れば「純粋さ」ともいえます。何よりも胸を打つのは「愛のためならなんでもできる」という姿勢、ここでマコちゃんの演技の素晴らしさが光ります。一歩間違えれば狂気の男になってしまうマッドを、計算のないどこかスコンと抜けた素朴な愚かさで演じ、献身的で善良で「粗にして野だが卑ではない」男にしています。この映画が感動的なのは、そんなマッドを理解し思いやる人の存在を、ちゃんと描いてくれていること。ラストにじわ~っと広がる気持ち、カタルシスっていうんでしょうか、素晴らしいです~。

映画の後半はマッドが殺した男の仲間がマッドとエリスに迫り、ハラハラドキドキの連続。男の子映画ではありますが、男子の友情ものが好きな女子にもたまらない映画になっています~。そしてなにしろマシュー・マコノヒー再発見。果たしてオスカー主演男優賞を制することができるのか。てかその前に、ゴールデングローブ賞だっつーの!ノミネート作品『ダラス・バイヤーズ・クラブ』の記事も、近々アップしますので、ご注目くださいね~。

『MUD-マッド-』 2014年1月18日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか順次ロードショー.

映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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