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オスカーノミネート作品も続々!2月におすすめの「絶対面白い映画」6本!

渥美志保映画ライター

今年に入ってもう1か月が終わっちまい、アカデミー賞が近づいてきましたねー。このあたりのネタ、毎年恒例(って去年やっただけだけど)「レオは果たしてオスカーを獲れるのか?!」なーんてことを中心に、今月はちょいちょい出していこうと思いますが、まずは今月の「絶対面白い映画」をご紹介いたします。オスカーノミネート作品がバンバン出てくる今月は、ちょい多めで6本をご紹介!主演・助演賞候補は4作品は監督の力量的にも安定のハイクオリティですが、それ以外の予定調和をぶっ壊す2本が、意外とオシだったりして!

『オデッセイ』

火星に取り残されたマット・デイモン。原題は「火星人」
火星に取り残されたマット・デイモン。原題は「火星人」

火星での探査ミッション中に巻き込まれた嵐で行方不明になり、死亡したと思われていたワトニー。だが奇跡的に生き伸びて人工居住施設に戻った彼は、次の探査ミッションのクルーがやってくる4年後まで生き抜こうと決意。自身の化学的知識と施設にある乏しい物資、さらに持ち前のポジティブさを総動員して、途方もないサバイバル生活を始める――

って書くと、ものすごいハードな映画っぽいけれど、驚くほど陽気な作品です。植物学者でエンジニアのワトニーが次々と繰り出すアイディアは「こんなもので、こんなことができるんだ」という驚きの連続だし、孤独や苦難に苦しみながらも決して諦めず、前向きに進み続けるワトニーは人間の可能性を信じさせてくれます。

さらにこの手の映画で音楽がすべて70年代ディスコっていうのも斬新で、その選曲も場面に合わせていちいちシャレが効いていて笑っちゃいます。リドリー・スコット監督らしいスペクタクル映像もありますし、この映画でオスカーにノミネートされた主演のマット・デイモンもすこぶる魅力的。後味もすごく気持ちのいい作品です。

『オデッセイ』

2月5日(金)公開

『ディーパンの戦い』

このスチール地味すぎ。結構迫力の画も多いのに、なんで使わないのかなー。
このスチール地味すぎ。結構迫力の画も多いのに、なんで使わないのかなー。

見知らぬ女と少女とともに“家族”を偽装し、内戦下のスリランカから脱出した元兵士ディーパン。だが難民審査をへて落ち着いたパリ郊外の団地は、多くのごろつきがたむろし、麻薬取引が横行する場所だった。

新しい文化に馴染もうと懸命に努力し、偽の家族たちを気遣い、荒れ果てた団地を変えようと手足を動かすディーパンの、ささやかな安住を必死に求める様は、今のようなご時世では特に心に刺さるものがあります。団地を牛耳る麻薬組織との緊張が徐々に高まってゆき、寡黙で真面目なディーパンの隠された過去が、苦悩とともに暴発するかのようなラストの展開は、単なる「家族のために戦う男」とは違う苦さを感じます。

監督は『君と歩く世界』のフランス人監督ジャック・オディアール。アカデミー賞の注目作『キャロル』などを差し置いて、昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを獲得した迫力の一本。

『ディーパンの闘い』

2月12日(金)公開

『キャロル』

ルーニー・マーラにロックオンしたケイト・ブランシェット、な瞬間
ルーニー・マーラにロックオンしたケイト・ブランシェット、な瞬間

恋人の求婚に幸せを感じられないでいたテレーズは、売り子として働くデパートに客として現れたキャロルに一目惚れ。幼い一人娘と過ごすはずだったクリスマスを離婚協議中の夫ハージに奪われたキャロルは、心惹かれるテレーズとともに旅に出ることにするのだが……。

女性同士の恋愛を真正面から描いた作品ですが、そこにある恋の切なさや別れの辛さには性別なんて無関係に心がきゅーんとなります。夫といる時はエレガントな妻で、テレーズといる時はイケメンというケイト・ブランシェットの演技は、アカデミー賞主演女優賞候補も納得の舌を巻く上手さ。『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』でも超可愛かったルーニー・マーラも、この作品のひたむきな演技でカンヌ映画祭の女優賞を獲得、アカデミーでも助演女優賞にノミネートされています。

ふたりともすごく果敢な作品選びをする女優さんですが、この映画では女×女のベッドシーンにも挑戦。監督は『エデンより彼方に』のトッド・ヘインズ。クラシック映画の粒子の粗さにこだわった映像の空気感や、50年代のエレガントなファッションも見どころです。

『キャロル』

2月11日(祝)公開

『スティーブ・ジョブズ』

指揮者?
指揮者?

アップルの創業者でプレゼンの天才と言われたスティーブ・ジョブズ、その人物像を、彼の人生で最重要な3つの新作発表会――’84年の「Macintosh発表会」、’88年の「NeXT Cube発表会」、’98年「iMac発表会」――の舞台裏を通じて描く。

部下に対し、友に対し、敵に対し、娘に対し、彼がどんな人間だったか――はっきり言えば、マジ面倒くせえクソ野郎なんですが、時折見え隠れする人間らしい「ゆらぎ」のようなものをマイケル・ファスベンダーがすごく繊細に演じていて、オスカーでも主演男優賞にノミネートされています。

映画が描くのはそれぞれの発表会が始まる前の40分の鉄火場で、誰もが天才ジョブズはテンションMAXで頭フル回転させて指示出しまくり、そんな中でプライベートな人間関係のややこしさが絡んでくる、その怒涛のセリフラッシュは、見てるこっちは情報処理で脳内がカピカピになりそうなほど。アップルからの追放劇とか、周囲の人たちの名前とか、iMacがどんなものかとか、そういう予備知識をある程度入れておいたほうが見やすいかもしれません。

監督は『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル。基本は会話劇ですが、映像的にすごく面白いシーンもあったりします。

『ステーブ・ジョブズ』

2月12日(金)公開

『偉大なるマルグリット』

伝説のオンチ、と呼ばれたオバさんをモデルに描くトラジ・コメディ
伝説のオンチ、と呼ばれたオバさんをモデルに描くトラジ・コメディ

1920年代のフランス。オペラを愛するマルグリット・デュモン男爵夫人は、自邸で開催する慈善クラブの音楽会で歌声を披露するのが恒例となっている。だが実は自分が「壊滅的な音痴」であることを、拍手喝采に包まれてご満悦の彼女だけが知らない……。

皮肉も嘲笑もまったく響かず「歌ってなんて素晴らしいの!」と始終うっとり、リサイタルを開くことを目標に血を吐くほどのスポ根ばりの訓練も厭わず突っ走るマルグリット、その純粋さと無邪気さが周囲を飲み込んでゆく様はコミカルながらハートフルなのですが、その純粋さと無邪気さゆえに誰も本当のことを切り出せないわけで、どこかシニカルで残酷でもあります。

マルグリットの夫である男爵には愛人がいて、この設定がただの「変なおばちゃん」に収まらないマルグリットの悲しさとして、ラストの驚きの展開へと導いてゆきます。

主演のカトリーヌ・フロはフランスのベテラン女優ですが、周囲を魅了するマルグリットの愛すべき純真さは彼女だからの説得力、そして、えええええ~!って思うほど見事なオンチぶりも最高に笑えます。

『偉大なるマルグリット』

2月公開

『ヘイトフル・エイト』

タラ作品お約束のSLJの長台詞は、今回も絶好調です。
タラ作品お約束のSLJの長台詞は、今回も絶好調です。

南北戦争後のアメリカを舞台に、猛吹雪で荒野の一軒家の雑貨店「ミニーの店」に閉じ込められた、7人の男と1人の女。戦争を引きずった男たちの対立から始まり、高まってゆく緊張感の中、何者かがコーヒーに毒を入れ……。

賞金稼ぎに女賞金首、南軍の老将軍に北軍の黒人少佐、保安官に処刑人に――といわくありげな8人の、やがて始まる殺し合いを描くクエンティン・タランティーノ監督作。疑心暗鬼の中で互いを探り合いう会話劇は、サミュエル・L・ジャクソンのいつもの長広舌、ティム・ロ

スの嫌味っぷり、偉そうでいてマヌケなカート・ラッセル、小心者の卑劣漢をやらせたらピカイチのウォルトン・ゴギンス、そしてどの男たちより血まみれの汚れ役を嬉々として演じてオスカーノミネートの紅一点、ジェニファー・ジェイソン・リーなど、もうキャラだけで腹一杯になれるほど。

血の吹き出し方とか殺し方もサービス満点で、タラファンなら爆笑必至だと思います~。どこにも正義のない「全員クズの殺し合い」の乾いた後味は、私の大好きなタランティーノ流ハードボイルドで、個人的には『レザボア・ドッグス』に似てるなーなんて思いました。男子度の高いエンタテイメント作品。

『ヘイトフル・エイト』

2月27日(土)公開

それでは皆さま、今月も楽しい映画ライフを!

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映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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