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将来やりたいことがない学生の皆さん、まずはこれをやってみて

遠藤司皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー
(ペイレスイメージズ/アフロ)

マイナビが運営する「学生の窓口」というサイトに「将来の夢・やりたいことがない大学生は約4割! 「打ち込めるものがない」」という記事が掲載された。

将来の夢ややりたいことのある学生は、62.4%。ようするに4割近くの学生が、少なくともやりたいことがあるわけではないと回答しているということだ。

筆者の感想としては、意外とやりたいことのある学生は多いんだな、といったところだ。この大学生のなかには、大学1、2年生も含まれる。それでもこの数字である。しかも記事をみると、結構ポジティブな回答が並んでいる。

やりたいことが見つからない理由は簡単である。社会に出たことがないからである。よって、どの仕事が「やりたいこと」につながるのかが学生にはわかりにくい。とりわけ地方の学生は、情報不足ゆえに、それがわかりにくいのである。それなのに就職活動では、志望動機が求められる。志望動機につながる自己PRが求められる。もうほんと、いろんな切り口から、そればかりめっちゃ聞かれる。酷な時代だ。

新卒採用の弊害はいずれ述べるとして、ここではやりたいことをみつけるための方法について述べたい。皇學館大学の学生であれば「よし、うちのゼミにきなよ」で済むのだが、ここではそうはいかない。いろんな意見があるなかで、経験上、これが一番みつかりやすい方法である。それは、目的論といわれるものを現実に落とし込んだ、とてもシンプルな方法である。

やりたいことを見つけたければ、最初に自分の好きな人のことを考えたらいい。恋愛ではない。なんていうか、恩返しがしたい人である。恋ではなく、愛を向けたい人、といってもいいかもしれない。人でなくてもいい。動物でもいい。大切なのは、恩返しをしたい対象である。幸せにしたい対象である。

次に、その人はどういった人かを、自分なりに考えてみよう。どこにいて、どんな特徴があって、どんな生き方をしている人か。色々考えてみる。だいたいイメージできてきたら、その人はどんなことに困っているかを考えてみる。これは想像するだけでもいい。直接聞くよりも、むしろそのほうがいいかもしれない。母の日に、お母さんにあげるものを想像する感じだ。わくわくしてくる。

ここで、その人ではなく、「その人のような人」の困っていることを解消し、幸せにするにはどうしたらいいかを考えてみよう。ようするに、その人に届けようとした愛を、「その人のような人」に届けるにはどうしたらいいかを考えるのである。ここでつまずきやすいのだが、何とかして考えてみる。本を読んだり、ネットで調べたりして、自分なりの回答を探っていこう。

時間をかけて育んだ回答が目の前にある。あなたらしくて、よい回答だ。これをいまの自分のミッションにしてみよう。すなわち、ミッションとして書き表してみるのである。うまく言葉を駆使して書いてみよう。何度も書き直してみよう。自分がそれをカッコイイと思えるまで、やってみることが秘訣である。

ちなみに筆者の大学時代のミッションは「くすぶっているヤツこそ幸せにしてやる」であった。懐かしい。ゆえに筆者はそういう目的のサークルを作った。

ここで終わりではない。本当にそれでいいのか、検証してみよう。ミッションにおいて、いまの自分にできることを考えてみようではないか。ここでは二つの観点が必要になる。ミッションに向けた道筋のなかで、いかに自分が成長するか。それから、ミッションに当てはまる幸せにしたい人は、いまの自分ならどうしたら少しでも幸せにできるか、である。

考えてみたら、それを実行してみよう。やってみると、そのやり方が正解かどうかよくわかる。小さなことから始めてみるといい。失敗したときの影響が少ない。それゆえ、やり方が違ってもいい。修正すればいいのだ。だからまずは、色々なことを試してみよう。

そうするとどうなるか。ミッションが書き換えられていくようになる。最初に書いたものとは変わってくる。経験すればするほどだ。ときにまったく違うものにまで変化する。

しかも、ポジティブなミッションにどんどん変わっていく。やってみるとわかるが、最初は抽象的なミッションしか描けない。しかし、どんどん具体的なものに変わっていく。ミッションを叶える具体案のために、色々と調べるようになっていく。ここまでくれば、そのミッションはどの場所で叶えられるかがわかってくるようになる。すなわち、将来の仕事が定まってくるのである。

この記事で、筆者はなにを言ってきたのか。就職アドバイザーの人たちの大半は言ってくれないのだが、就職先というのは、あくまでも手段なのである。自らのミッションを実現するための手段である。すべての手段には、目的がある。手段の先に、叶えるべき目的がある。それを意識できない学生はいらない、というのが、昨今の就活である。

だから結局、「やりたいこと」を見出すためには、その目的が必要になるのである。つまり、「なしたいこと」や「なすべきこと」がないと、「やりたいこと」は見つからない。よって、単に「やること」に目を向けてはいけない。そうではなく、やったあとに何があるのかにこそ、目を向けなければいけないのである。

人生の成功をもたらす黄金律を示そう。この順番で考えたらいい。必ずうまくいく。

目的   ⇒ ~のために

ビジョン ⇒ ~をなしとげる

戦略   ⇒ だからこれをやる

かたち  ⇒ 成長する

目的とビジョンから始めなければならないのである。単にやることを始めると、困難に陥ったときにオロオロするし、何のためにやっているのかさえわからなくなる。よって、困難は乗り越えられない。

目的に応じてビジョンが定まり、そのビジョンに向けたいまの行動が生じる。行動することで、自らは変わる。これが人の成長である。

頑張って欲しい。

皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー

1981年、山梨県生まれ。MITテクノロジーレビューのアンバサダー歴任。富士ゼロックス、ガートナー、皇學館大学准教授、経営コンサル会社の執行役員を経て、現在。複数の団体の理事や役員等を務めつつ、実践的な経営手法の開発に勤しむ。また、複数回に渡り政府機関等に政策提言を実施。主な専門は事業創造、経営思想。著書に『正統のドラッカー イノベーションと保守主義』『正統のドラッカー 古来の自由とマネジメント』『創造力はこうやって鍛える』『ビビリ改善ハンドブック』『「日本的経営」の誤解』など。同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了。

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