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出口の見えないトンネルに入ったタイガー・ウッズ、 このまま引退してしまうのか!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
復帰の見通しなし。「光が見えない」のウッズ発言は引退示唆!?(写真/平岡純)

「トンネルの向こう側に光が見えない」

タイガー・ウッズが口にしたその言葉に「引退」の臭いを感じ取った米メディアたちの一斉報道で、米ゴルフ界、世界のゴルフ界に動揺が広がりつつある。

【神経の回復にタイムテーブルはない】

今週は“タイガー・ウッズの大会”と呼ばれるヒーロー・ワールド・チャレンジがバハマで開催される。

その開幕前の会見に臨んだウッズが、出口のないトンネルに入ってしまった自身の現況を切々と語った。

「手術を受け、何か月ぐらい休めば復帰できると言われ、実際にそうやってきた過去のケースとは、今回は違う……神経の回復にタイムテーブルは無い。いつ復帰できるのか、本当に復帰できるのか。まったくわからない」

答えが見えず、見通しが立たない。そんな暗黒の世界に留まっていることが、今、最も辛いのだとウッズは言った。

振り返れば、ウッズの故障はプロ転向前から肉体各所に出ていた。だが、1996年にプロ転向し、97年マスターズを圧勝して華々しいウッズ時代の幕を開いてからは、公けには明かされなかった無理や我慢を秘かに重ね、その無理が高じてどうにも我慢できなくなると、ついには治療や手術を受け、欠場しては復帰し、そうやって勝利を重ねてきた。

左膝を損傷したままプレーを続け、最後にはクラブを杖代わりにしてバンカーから這い出し、それでも勝利した2008年全米オープンのウッズの姿は多くの人々の脳裏に焼き付いていることだろう。

2010年ごろからかは首痛が発症。2011年と2012年は再び左膝、それにアキレス腱へと痛みが広がっていった、2013年は左ひじ。2014年からは腰痛が悪化し、3月にヘルニア手術を受け、約4か月間の欠場を余儀なくされた。

そして今年。2月のファーマーズ・インシュアランス・オープン初日に腰の違和感と痛みを訴えて棄権。それでも復帰が叶い、15年シーズンは11試合に出場したが、成績は惨憺たるものだった。シーズンエンドのプレーオフシリーズ進出を狙い、8月のレギュラーシーズン最終戦、ウインダム選手権に挑んたのが、今のところ、ウッズが出場した最後の試合。最後の最後に食い込んだ10位タイが、昨季の唯一のトップ10入りだった。

その直後の9月に突然、ヘルニア手術を受け、10月にさらなる追加手術。この時点で「復帰の見通しは今のところ立っていない」と語っていたが、あれから1か月以上が経過した今でも見通しが立たない事態を現実として受け止め、ウッズは引退を示唆しているとも受け取れる発言に至ったようだ。

「他の道を探す」という覚悟はできている様子だ(写真/平岡純)
「他の道を探す」という覚悟はできている様子だ(写真/平岡純)

【これで終わり!?】

メジャー14勝を含む米ツアー通算79勝を挙げ、ウッズ黄金時代を築き上げてきたかつての王者は、現在、世界ランキング400位まで後退している。

9月と10月のヘルニア手術以後は、ボールを打つことはもちろんできず、子供たちと走り回ったり、サッカーをしたりもできないでいる。できることは、上体を少しかがめながら子供たちに微笑みかけること。

「ビデオゲームも、かなりうまくなった。暇つぶしの大半はビデオゲームだ」

ゴルフ関係者やメディアから、機会あるごとに復帰の時期を尋ねられてきたが、そのたびにウッズは、この一言しか答えることができなかったという。

「わからないんだよ。本当にわからない」

それならば、医師による見立てや見通しはさておき、ウッズ自身の復帰への意欲はどうなのか。

これまで挙げてきたメジャー14勝はジャック・ニクラスのメジャー18勝に次ぐ歴代2位の記録。あれほどの黄金時代を築いたウッズだが、究極の目標に掲げ続けてきたメジャー18勝には、まだ追い付いていない。米ツアー通算79勝もサム・スニードの82勝に次ぐ歴代2位だ。

「この20年間、20代のときも30代のときも、いいプレーをしてきたと思う。またツアーに戻って戦いたい。これで終わりにはしたくない」

復帰への意欲はあると言いつつも、こんな言葉を続けた。

「これで終わりにはしたくないけど、もし、そうできないのなら、他の道を探す。自分の財団を拡大していく道、ゴルフコース設計の道、あるいは今も手がけていることを、もっともっとやりながら生きていく道かもしれない」

今月30日で40歳の誕生日を迎えるウッズ。トンネルの向こう側の光は、果たして見えてくるのか。それとも「引退」の二文字を明言するのか。

ファンや関係者にしてみれば「これで終わりには、してほしくない」だろう。だが、「タイガー、お疲れ様」と言ってあげる道もあるように思う。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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