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際立つガンホーの急成長…国内主要ゲーム関連企業の時価総額をグラフ化してみる(2013年)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

総務省が2013年7月16日付で発表した、最新(2013年版)の情報通信白書には、多彩な情報通信界隈の分析が行われている。今回はその中から、日本国内の主なゲーム関連企業の、この一、二年における株式時価総額動向を見ていくことにする。

同白書ではデジタル系企業の業績や提供商品のすう勢と共に、株価が大きく変動し、企業そのものの規模・勢いを示す一つの指針となる株式時価総額(株価×発行株式総数)にも変化が生じていると解説している。一概には言い切れないが、時価総額が大きいほど、その企業は規模も大きく、勢いがあることになる。単純計算でその企業を買い取るには、それだけの金額が必要になるからだ。

次のグラフは、ソーシャルゲームの動向で大きな変化を見せる、日本国内ゲーム関連主要企業の時価総額の推移。白書内では2012年1月から2013年6月にかけての、ガンホー・任天堂・GREE・DeNA・スクウェアエニックスの5社、そして日経平均株価の動向を記したデータが配されている。今回はそれに、記事執筆時点での最新値(週単位で記録されているので、2013年7月29日分)までを同様の形式で計算した上で追加し、グラフを生成している。

↑ 主要国内ゲーム関連企業の株式時価総額比較(各社は億円、日経平均株価は円)
↑ 主要国内ゲーム関連企業の株式時価総額比較(各社は億円、日経平均株価は円)

対象とした企業内で一番目立つ動きをしているのがガンホー。そこでいくつか同社の株価(と時価総額)を動かす原因となる要件に吹き出しを入れてみた。

同社は今年に入ってから株価が大きく上昇し、それに伴い時価総額も積み増しされている。昨今ではわずかな期間ではあるが(2013年5月下旬)、任天堂すら追い抜いている。これは同社が2012年2月にリリースした、スマートフォン向けパズルゲーム『パズル&ドラゴンズ』(パズドラ)が、大きな大きなセールスを上げ、2013年5月に行われた2013年12月期第1四半期決算説明で、前年同期比で売上838.9%増・営業利益7383.9%増と発表されたことをはじめ、同社の業務成績に大きな貢献をしたことが挙げられる。また2013年4月に行われた公開買い付けで、ソフトバンクが実質的な親会社となったことも、業務上の安定度を増す一因となり、これも好感されたようだ。

ガンホーの時価総額は2013年4月には1兆円を突破。横ばい、やや減退気味なDeNAやGREEをはるかに超え、スマートフォンにおけるソーシャルゲームの成功事例として、国内だけでなく国外においても知られることとなった。一部には「ジャパニーズ・ドリーム」として伝えられ、スマートフォン向けの自社開発ゲームアプリ市場が一層活気を帯びるきっかけにもなった。また上記にある通り、一時期ではあるが任天堂の時価総額を超えたことも、同社の成長ぶりを示す出来事となった。

一方、任天堂だが今年の6月から急激に時価総額が上昇している。これは同社が海外ではやや不振さが伝えられていた携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」について(7%目標未達、北米・その他地域では3DS LLに主力が移るも不振が続く…ニンテンドー3DS販売数動向(2012年度4Q))、6月に「とびだせ どうぶつの森」の海外での発売以降好調さを見せるようになったこと、さらに一部証券会社の目標株価引き上げが原因となっている。現在ではガンホーとの差は再び開いた状態にある。

時価総額は株価動向で大きく変動するため、あくまでも企業動向・規模を示す指標の一つでしかなく、それで企業実態のすべてが決まるわけではない。しかし一方で、その企業の勢い、特に市場がどのようにその企業の現状と行き先を見ているかを推し量ることができる指針には違いない。これから伸びる、業績が上向くことが市場から予想される企業の株価は上がり、必然的に時価総額も押し上げられるからだ。

今回のグラフにおいて、ガンホーの事例はやや特殊にも見えるが、昨今のゲーム市場の一端を表していることもまた事実には違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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