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育児休業、女性より男性・同僚より上司取得が不快感アップ

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 付きっきりの育児が必要な保護者には欠かせない育児休業だが…

今調査(ライフネット生命保険が実施)の調査対象母集団は有職(正社員)で既婚者の男女を対象としており、育児休業の取得経験がある、あるいは可能性を持つ人で構成されている。当然、育児休業は他人事では無く、自分自身の身に降りかかり得る、あるいは経験済みの話となる。

育児休業は法令で定められた労働者の正当な権利だが、長期間に渡り席を(そして「責」をも)外すこと、そして「育児休業は女性が取るもの」という通念もあり、男性が育児のために職を離れることに対する抵抗感が強いことから、特に男性が取得することへの不快感を持つ人は少なくない。

↑ 勤務先の育児休業取得者に対する意識
↑ 勤務先の育児休業取得者に対する意識

概して女性取得時よりも男性取得時の方が反発が強い。また対象が同じ性別でも、同僚よりは上司(管理職)の方が反発感が強くなる。これは上役が長期間休業することで、いかなる理由にせよ、回答者の業務上の負担がより大きくなることが予想されるからに他ならない。

さらに回答者の性別で区分して見ると、女性よりも男性の方が、育児休業取得に対する反発は大きい。

↑ 勤務先の育児休業取得者を不快に思う人の割合
↑ 勤務先の育児休業取得者を不快に思う人の割合

これは男性自身が出産を経験し得ないこと、男性による育児休業取得が女性と比べると稀な事例であることから、育児休業の必要性について(自分の身をもって)心底理解できる割合が少ないからだと考えられる。陣痛の痛みを心底理解できるのは女性のみ、という話があるが、それに近い。

「回答者別では男性の方が反発心が強い」「取得者別では男性取得の方が周囲からの反発が強い」。この2つが合わさることで、男性が育児休業を取得した際に、周囲の男性から受ける不快感は異様に高くなる。同僚では1/4、上司が取得することで部下からは3割もの反発を被ることになる。このような雰囲気では、男性が育児休業を取得しにくくなるのも当然である(無論、男性は概して家計の大黒柱であることから、金銭上の問題も小さくないのだが)。

育児休業が浸透しにくい理由の一つとして、職場内における育児休業に対する雰囲気、姿勢、他の人の意識があるとする意見も多い。今件調査結果は、特に男性取得において、それを裏付ける形となる。家計や復職時の業務サポートと共に、育児休業取得そのものに対する啓蒙と理解の浸透が、企業・行政側に求められているのは言うまでもない。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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