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たばこ販売の現状を確認する

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 自販機にずらりと並ぶたばこ群。10円積み増しの形で値上げがされるのか?

来年4月から消費税率が現行の5%から8%へ引き上げられることが確定し、これに伴いJTでもたばこの値上げ(自販機での運用を考慮し10円か20円)の検討に入ったとの報が伝えられている。仮に現在410円のメビウスで8%の適用がされれば、単純計算で422円ほどになるので、10円または20円という値上げ額は現実的。

そこで今回は、前回2010年10月に行われた値上げ以降、直近の2013年9月までにおける、紙巻きたばこの販売本数・販売代金の動向を確認しておくことにする。次のグラフは日本たばこ協会が毎月定期的に発表している月次データをまとめて生成したもので、直近値及び値上げの前後の特異値には吹き出しを設けて具体値を表示している。

↑ 紙巻きたばこ月次販売実績(本数・億本)(-2013年9月)
↑ 紙巻きたばこ月次販売実績(本数・億本)(-2013年9月)
↑ 紙巻きたばこ月次販売実績(販売代金・億円)(-2013年9月)
↑ 紙巻きたばこ月次販売実績(販売代金・億円)(-2013年9月)

直近の値上げは2010年10月に開始されたが、それに先立つ形で同年9月には「駆け込み特需」が発生している。そして同年10月以降は価格の上昇による喫煙者の減少、喫煙継続者の利用本数の減少、値上げ前の特需による大幅な需要のぶり返しもあり、販売本数・金額共に大きく減る状態がしばらく続いた。

さらに翌年2011年の3月には東日本大地震・震災が発生。それ以降はその影響(生産・輸送ラインの機能停止・稼働率低下、原材料の調達困難による生産数・種類調整)で、販売本数は大きく減少する。ところが販売金額は値上げ分がカバーする形でプラスを維持し続けているのが特徴的。

そしてさらなる時間の経過と共に、震災の直接被害と影響から状況は回復する一方、2010年の値上げ、そして中期的な健康志向の高まりに伴う禁煙・減煙促進で、販売本数は漸減状態を続けている。

2010年10月より過去においては、2003年7月と2006年7月にもたばこの値上げは発生している。その際にも起きた現象だが、たばこの販売本数と販売実績(売上)は、

(1)販売本数減の売り上げ面でのマイナス影響を打ち消すほど、値上げ分の売上増の影響が大きく、総売り上げは増加(本数-、売上+)

(2)販売本数の減少幅が拡大し、値上げ分ではカバーしきれず、売上も前年比プラスからマイナスに(本数-、売上-)

とのプロセスを経るパターンがある。2010年10月の値上げは過去事例と比べても大幅な引き上げ幅だったため「値上げ分の売上増の影響」は長く続いたものの、値上げから2年近くを経た2012年6月以降は(2)の「本数-、売上-」の状態に移行しつつある。値上げによる特需…ではなく特売上の効果が無くなり、見方を変えれば、つまり「特売上効果があるうちは、再度値上げをするのはもったいない」という考え方ならば、今はすでに「値上げを模索しても良い時期」に突入しているともいえる。

消費税率変更に伴うたばこの販売価格引上げが確定となれば、来年3月には再び特需が発生し、4月以降は販売本数が大きく減退、しかし売上はプラスを維持するという状況が続くのだろう。ただし値上げ幅が小規模なため、特需効果も小さなものに留まるものと思われる。そして中長期的なたばこの販売減退の方向性に影響は与えないと考えて間違いはなかろう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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