若者とシニアの意見、国への全体意見として通るのは?
回答者全体では「社会福祉の整備」がトップ
国に対する国民の要望は千差万別で、社会全体のことを考えているつもりでも、つい自分の立場で回答してしまうもの。内閣府が毎年調査・結果公開を行っている「国民生活に関する世論調査」でも、それがよく分かる。
次のグラフは調査時点において、今後日本国政府はどのようなことに力を入れるべきかを複数回答で尋ねた結果。直近2013年6月時点で最上位の回答率を示したのは「医療・年金などの社会保障の整備」だった。
最上位の「医療・年金などの社会保障の整備」は前回調査(2012年6月)と比べると0.2ポイントだが減少している。しかし前回第1位だった「景気対策」が大きく回答率を減じており(59.6%、6.9%ポイント減)、相対的に順位が上昇し、最上位に上がることとなった。
誤差の範囲ともいえるが、経済状況の改善が要望の優先順位を変えたように見える。一方、昨年のデータと比較すると全体に占める高齢者の回答者数・率が増加しており、これが全体値の算出の際に影響を与え、「医療・年金」と「景気対策」の順位を入れ替えた要因となっていることも否定できない。
世代別に見ると若年層では「景気対策」が最上位に
これを世代別に見ると、各項目の世代別関心事項が透けて見える。
「景気対策」「雇用・労働問題への対応」は50代までに高い関心が寄せられているが、60代を超えると急速に低下する。一方で「医療・年金等の社会保障の整備」「高齢社会対策」は60代まで一方的な上昇を見せ、該当世代における順位も変わってしまう。社会全体の状況を鑑みた上ではなく、「自分自身にとって何が一番望まれるのか」を第一に考えてしまい、それがそのまま値に反映されているのが分かる。いわゆる「我が身恋しや」というべきか。概して要望への関心が低い高齢層でも、「高齢社会対策」以外に「物価対策」においても他世代とさほど変わらない高い値を見せているのが好例といえる。
また金銭周りに絞った観点で見ると、
若年層…「景気対策」。手元のお金、稼ぎに不安が募るので景気を良くしてほしい
高齢層…「物価対策」。手元のお金にはそれなりに余裕があるものの、日々の生活で買い物をする際に値段が高くては叶わないので物価を抑制してほしい。
という、自分の立場による視点の微妙な違いが見えてくる。ちなみに両回答項目の順位が逆転するのは60代以降である。
若年層と高齢層で回答傾向に違いがあるにも関わらず、全体として集計すると高齢層寄りの結果が出てしまう。これは今調査が層化2段無作為抽出法によって標本が抽出されるため、元々人口比率的に標本数が配分されるのに加え、回答率も高齢者の方が高く、結果として高齢層のウェイトが高めに出てしまうからに他ならない。
とはいえ、選挙などの投票率動向にもある通り、意思表示をしない人の意見は汲み取ることが出来ないのも事実ではある。今件調査は「現在の生活や今後の生活についての意識、家族・家庭についての意識など、国民の生活に関する意識や要望を種々の観点でとらえ、広く行政一般の基礎資料とする」のが目的であり、その結果が何らかの形で政策に反映される可能性は多分にある。「若年層の意見が取り入れられない、無視される」と嘆くより、まずは積極的に声を挙げ、意見を述べ、調査に応え、数字を出すことをお勧めしたい。
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