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消費税引上げの駆け込み需要で大幅増・3月のたばこ販売本数は26%増

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 3月になると値上げ前のまとめ買いを薦めるセールスも随所でみられた

3月のたばこは駆け込み需要で本数26%、代金25%の増

消費税率改定に伴い日本たばこ産業では2014年4月1日から、主要たばこ商品の小売定価について10円から20円の値上げを行った。この値上げ前最終月となる3月では、いわゆる「駆け込み需要」が発生し、紙巻きたばこの販売実績は大きな上昇を示した。日本たばこ協会の月次発表値によれば、2014年3月のたばこ販売実績は204億本となり、前年同月比で25.6%の増加、販売代金は25.4%増の4210億円を示した。

↑ 紙巻きたばこ月次販売実績(本数・億本)(-2014年3月)
↑ 紙巻きたばこ月次販売実績(本数・億本)(-2014年3月)
↑ 紙巻きたばこ月次販売実績(販売代金・億円)(-2014年3月)
↑ 紙巻きたばこ月次販売実績(販売代金・億円)(-2014年3月)

たばこの税率引き上げに伴う大幅なたばこの販売価格の値上げは、2010年10月に開始されている。それに先立つ形で同年9月には「駆け込み特需」が発生した。そして同年10月以降は価格の上昇による喫煙者の減少、喫煙継続者の利用本数の減少に加え、値上げ前の特需による大幅な需要のぶり返しもあり、販売本数・金額共に大きく減る状態がしばらく続いた。

さらに翌年2011年の3月には東日本大地震・震災が発生。それ以降はその影響で、販売本数は大きく減少している。他方販売金額は先の値上げ分がカバーする形でプラスを維持。時間の経過と共に、震災の影響による損失からはほぼ回復を果たしたものの、2010年の値上げ、さらには中期的な健康志向の高まりに伴う禁煙・減煙促進によって、販売本数は漸減状態を続けている。

今回月も値上げ前の「駆け込み需要」による特需で上昇を示したものの、上昇幅は2010年10月からの値上げ関連の規模には達していない。値上げ幅が10円から20円と小規模に留まったため、特需も小規模なものに留まっている。

たばこの値上げと売上の中期的動きと今後の動向

たばこは物価上昇や市場、その他各方面からの要請に伴い、何度となく値上げされている。その値上げ後における販売数変移の傾向は「(1)販売本数減の売り上げ面でのマイナス影響を打ち消すほど、値上げ分の売上増の影響が大きく、総売り上げは増加する」「(2)販売本数の減少幅は拡大し、値上げ分ではカバーしきれなくなる。売上も前年比プラスからマイナスに」といったパターンとなる。2010年10月の値上げは上げ幅が非常に大きく、必然的に販売本数の減少分を補う単価上昇分も大きいため、売上プラスの状態が長期化した。

↑ たばこ税推移(円)(1本当たり)(従量税)(消費税含まず)
↑ たばこ税推移(円)(1本当たり)(従量税)(消費税含まず)

しかし2012年の6月以降はほぼ販売本数・販売代金共に前年同月比でマイナスを維持。時折プラスに転じる場面があっても長続きせず、再びマイナスに戻る動きを示している。現状ではほぼ「(2)」の段階に移行した。そして今回月の動きにある通り、たばこの実売価格の値上げにより、実質的に販売数推移傾向のサイクルは「(1)」に戻ったものと考えられる。今後はしばらく「販売本数はマイナス」「総売り上げ増加」の状況が続くことが予想される。

↑ 紙巻きたばこ月次販売実績(販売本数、前年同月比)
↑ 紙巻きたばこ月次販売実績(販売本数、前年同月比)

コンビニでは売上全体に占めるたばこの比率は高い(2割から3割程度)。さらに来店時の「ついで買い」による相乗効果も期待できる。しかしたばこ販売の減退状態は継続中で、各コンビニとも代替品の模索と普及を急ピッチで続けている。近頃大手コンビニでは相次ぎ「淹れたてコーヒー」を導入しているが、それが代替品の代表商品に他ならない。

今後しばらくはたばこの販売本数は大きな変動、売上はプラスの動きを示すことが予想される。しかしたばこ市場の規模が縮小していることに変わりは無い。今回の値上げに伴う駆け込み需要の反動が収まったあと、たばこの消費性向はどのような変化を遂げるのか。注意深くその動向を見守りたい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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