半世紀に渡るたばこ価格の推移
少しずつ上昇していくたばこ価格
2010年10月のたばこ税、2014年4月の消費税、それぞれの引き上げにより、たばこは短期間に2度もの値上げを体験することとなった。それではそれより長い期間を視野した場合、どのような価格変移が生じているのだろうか。今回は総務省統計局における「小売物価統計調査 調査結果」などを基に、その動向を探ることにする。
日本ではたばこの販売はJT(旧専売公社)の独占事業で、複数社による競争価格は存在せず、また地域による価格変動も無い。小売物価統計調査では1950年以降ホープ・ピース・しんせい・ゴールデンバット、そして1960年に発売されたハイライトの計5種類の価格追跡調査が行われており、その値が取得できる。その動向をグラフに描き起こしたのが次の図。
継続監視対象の5品目では「ピース」が一番価格上昇率は低い。しかしそれでも3倍から4倍程度に値を上げている。また、1980年代後半から1990年代後半までの間はたばこ価格にほとんど変動が無かった、その時期以外はいずれの銘柄も一定期間毎に随時値上げを繰り返しているのが確認できる。「ピース」の初期をのぞき、価格が下がったことは無い。
監視対象銘柄の変更で継続確認はピースのみ
上記グラフはいずれも2009年までのもの。現行では2013年(年次)・2014年4月(月次)までのデータを取得できるにも関わらず、なぜ古い値を最新値としたグラフを生成したのか。実は「小売物価統計調査」では紙巻きたばこの監視対象銘柄を、2010年から大幅に切り替えてしまっている。喫煙者の消費性向に従った判断によるものだが、これにより1950年代・60年代から継続データを取得できるのは「ピース」だけとなってしまった。
また2010年以降では冒頭にある通り、2回もの値上げが実施されている。そこで「ピース」については長期経年価格推移のグラフを、残り4銘柄も含めた「現在」監視対象の銘柄に関しては引上げ前、そして2回のタイミングにおける値上げ後の動向をグラフ化する。
2010年10月の値上げ前後の動向を見るに、大幅な値上げが行われている。何しろ監視対象銘柄内ですら、ピース以外はすべて100円以上の値上げがなされているのだから。そして長期時系列グラフを生成できる「ピース」の価格の動きを見ると、その上げ幅がいかに歴史的なものだったかがあらためてわかる。
喫煙率の推移は「世代別成人喫煙率をグラフ化してみる」に掲載されている通り、データが存在する1965年以降男性は一律に減少、女性は若年層に若干上昇・中堅層以降は減少の傾向が見られる。銘柄の好き嫌いもあるので断定はできないが、昔と比べて今は、女性若年層における「可処分所得中のたばこへの出費割合が増加している」のではないかとの推測もできる。
2014年4月の値上げは消費税率改定に伴うもの。2010年のようなたばこ税によるものではない。たばこの販売価格引き上げは漸次論議の対象として持ち上がっていることから、そう遠くないうちに再び価格の引上げはありうる。それが現実のものとなれば、さらにグラフ上に変化が見られることになる次第である。
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