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増える「小中学生のゲーム時間」と学力テストのアヤシイ関係

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ ゲームの時間が増えればその分他の時間を減らさねばならず…

「ゲームは1日1時間」しかし実態は

先日文部科学省から発表された全国学力・学習状況調査の最新結果によると、小中学生は共に半数以上が、平日でも1日1時間以上パソコンやゲーム機、スマートフォンなどによるテレビゲームをしている実態が明らかにされた。また、テレビゲームをする時間の短さと、学力テストの平均正答率との間には、相関関係があることも分かった。

今調査結果によると、平日にテレビゲーム(パソコンや据え置き・携帯ゲーム機、従来型携帯、スマートフォンによるもの)を1時間以上遊ぶ人の割合は、小学生で54.4%、中学生で55.9%。この比率は年々増加しており、小学生は2013年度、中学生は2014年度で初めて過半数に達した。

↑ 平日にテレビゲーム(PC、携帯型ゲーム機、従来型携帯、スマホ含む)を1時間以上する人の割合
↑ 平日にテレビゲーム(PC、携帯型ゲーム機、従来型携帯、スマホ含む)を1時間以上する人の割合
↑ 平日にテレビゲーム(PC、携帯型ゲーム機、従来型携帯、スマホ含む)をする時間(平均、時間)
↑ 平日にテレビゲーム(PC、携帯型ゲーム機、従来型携帯、スマホ含む)をする時間(平均、時間)

1日1時間以上遊ぶ人の割合、平均プレー時間は共に漸増する傾向にある。特にこの2、3年で急激に増加している実態がつかみ取れる。中でも2014年度は小学生と中学生の順位が逆転している点でも注目に値する。今調査では調査対象に無いので断定はできないが、他の調査の結果などから、中学生以降で普及著しいスマートフォンの浸透に伴い、利用者・利用時間が大きく底上げされたものと考えれば道理は通る。

ゲーム時間が長いと正答率は低くなる、ただし因果関係にあらず

子供がゲームで遊んでいる時間が長くなると、勉強がおろそかになるのではとの心配を抱く保護者も増えてくる。その不安を後押ししかねない結果が、今調査では確認されている。

次に示すのは、平日にテレビゲームをする時間区分別に、学力テストの平均正答率を示したもの。あくまでも相関関係を示したものだが、非常にきれいな形で「長時間遊んでいる子供ほど、正答率が低くなる」結果が出ている。

↑ 平日にテレビゲームをする時間と、教科の平均正答率との相関関係(小学生)
↑ 平日にテレビゲームをする時間と、教科の平均正答率との相関関係(小学生)
↑ 平日にテレビゲームをする時間と、教科の平均正答率との相関関係(中学生)
↑ 平日にテレビゲームをする時間と、教科の平均正答率との相関関係(中学生)

朝食関連の話で良く話題となる(、かつて某省庁がPRポスターなどでも用いた文言)「朝食をしっかりと食べるとテストの成績が良くなる」といった因果関係ではなく、「朝食をしっかりと食べるような、規則正しい生活をしている子供は、必然的に勉強にも規則的に取り組むようになるので、テストでは良い成績を取る傾向が出る」のように、今件は相関関係を表したに過ぎない。「ゲームをすればするほどテストの点数が下がる」という因果関係を証明したわけでは無い。つまり「ゲームのし過ぎはテストの成績を悪くする」とは、今件結果だけでは言い切れない。

しかしながら同時に、平日で1日4時間以上もゲームで遊ぶ状態が続けば、その他の行動をする時間は圧迫される。それが睡眠の時間か、勉強の時間かまでは個々の事情によるが、いずれにせよ勉学にとってマイナスとなることは容易に想像が出来る(勉強の時間が削れれば当然だが、睡眠時間が減っても生活リズムは乱れ、寝不足で集中力も減退し、学力にはマイナスに作用する)。実際、ゲームやインターネットのアクセスの時間を、勉強や睡眠時間など他の時間を削って確保しているとの実態は、多数の他調査結果から容易に確認が出来る。

「1時間未満」と「しない」との間の差がほとんど無いことから、平日でも息抜き程度のゲームはほぼ影響を与えない。しかし1時間を超えると確実に時間の伸びと共に正答率が落ちていくことから、何らかの因果関係もあることは容易に想像が出来る。

最終的には保護者の、あるいは保護者と子供との間の話し合いなどで決めることになるものの、平日における「ゲームで遊ぶ時間」については、再考慮が必要となるかもしれない。

相関関係と因果関係の違いに注意

今件調査ではさまざまな生活様式と学力テストの結果について、クロス集計のデータが公開されており、多彩な分析が試みられている。その中で先日、このような話があった。

■新聞読む子、割合は減少も正答率高く 頻度上がるほど成績上昇

新聞を読む頻度とテスト結果を分析したところ、新聞をよく読む子供の方が、平均正答率が高いとの結果が出た。新聞を読むことは学力向上に効果があるといえそうだ。

出典:産経新聞

上記ゲームで遊ぶ時間と学力テストの相関関係においても繰り返し説明しているのだが、今件調査はあくまでも相関関係の立証に過ぎず、因果関係までは説明できない。相関関係を確認した上で、両者間に因果関係まで想定できうるか、その推測までに留めなければならず、それを怠ると上で挙げた事例「朝食を食べると頭が良くなる」という首を傾げる文言が生まれてしまう。

「「新聞を読むと頭が良くなるよ」「違うよ、全然違うよ」」などでも解説の通り、確かに新聞購読の項目でも、購読頻度が高い子供ほど、学力テストの正答率も高い傾向がある。しかし同じような傾向はインターネットやテレビ経由でのニュース取得度合いの高低でも生じており、根拠は薄い。むしろ「ニュースへの関心度が高く接触頻度が高いと、学力とは相関関係があり、因果関係もありそうだ」とした方が理解はし易い。

さらにいえば、「人の気持ちが分かる人になりたい」「友達との約束を守る」といった、道徳的・倫理的な部分が高い子供も、同じく正答率が高い傾向にある。要は「良い子」の見本的な傾向にある、特性を持つ子供ほど、勉強も良くできるというところ。今回取り上げた「ゲームで遊ぶ時間」なら、平日はゲームに触れない、あるいは短時間で止める子供ほど、勉強に長けていると表現できる。今調査のみでは「新聞を読めばお利口になれる」とは導きにくい。

「新聞を読むから賢いのではなく、賢いから新聞『も』読んでいる」「新聞ではなくニュース=社会に興味のある子供はそもそも頭が良い」「バスケやバレーの選手になると背が伸びるのではなく、背が高い人が選手になりやすい」。今件に関しては多種多様な言い換え、例え方を教えてもらったが、どれもみな納得できる表現ではある。

相関関係はあくまでも相関関係に過ぎない。因果関係を想定するための材料の一つであり、確証付けるものではない。今件調査結果を確認した上で、平日で一日4時間以上もゲームで遊ぶ状況がどのような日常生活、ライフスタイルを生み出すのか、そして学力面ではいかなる結果が生じ得るのか、その想像、そして他調査との組み合わせも合わせ、生じ得る結果への対応のため、今件データは活用されるべきだろう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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