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中国・習主席の外交姿勢は世界から否定的意見多数、一部アフリカ諸国では高評価

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 現在の中国の外交姿勢は諸外国の国民からはどのように思われているのか

アフリカ・韓国・パキスタンなどでは高評価

国単位の外交施策はその国の歴史的背景、位置関係、国民世論に加え、そのトップの政治姿勢で大きく変化しうる。中国の現トップの座にある習近平主席による外交施策について、アメリカの大手調査機関Pew Researchが2014年7月に発表した報告書「Global Opposition to U.S. Surveillance and Drones, but Limited Harm to America’s Image」から、諸外国の国民感情を探る。

次に示すのは調査各国の回答者である国民一人一人の意見として、中国の習主席の外交姿勢について、国際情勢の観点で正しい行動をしているとし、評価できるか否かを確認したもの。「大いに評価」「評価」の賛成派、「評価しない」「全く評価しない」の反対派、そして「分からない・無回答」の計5選択肢の中からの選択となる。要は今の中国の外交施策全般を支持するか否か、賛成か反対かである。

↑ 中国の習主席について、国際情勢に鑑み正しい行動をしているとして評価するか(2014年春)
↑ 中国の習主席について、国際情勢に鑑み正しい行動をしているとして評価するか(2014年春)

賛成派を青系統、反対派を赤系統で着色した。ひときわ青の色が目立つのは中国自身。中国では自国の外交施策について絶大なる評価を与えている。

全体的な色の印象としては、意見留保を意味する灰色の面積が結構大きい。中国と緊密な関係にあるパキスタンでは56%、他にもコロンビアの51%やペルーの41%、アルゼンチンの44%など、3割から5割の回答事例が多い。賛成的側面も反対的側面も認識した上で、自分の判断を留保している場合以外に、中国の外交政策そのものを知らずに「分からないので判断できない」とする事例が多いようだ。

次の印象としては青系統より赤系統の色が目立つ、つまり賛成派より反対派の方が多い印象がある。その分、中国自身やバングラデシュ、韓国、タイ、アフリカ諸国の値の高さが目立つ形となる。同じ新興国が多い地域でも、南米が(「分からない」が多いのも一因だが)反対派の意見が賛成派を大きく凌駕していることもあり、アフリカ諸国の高い値はより際立つ形となる。

中東諸国では反対派はそこそこ賛成派と均衡しているが、西欧諸国では低めの値が出ている。特にトルコの低さは注目に値する。

日本の結果も際立っている。反対派は87%で意見留保は7%、そして賛成派はわずか6%。さらに44か国中唯一「大いに評価」の値が統計値の上ではゼロ%となっている。尖閣諸島や東シナ海のガス田をはじめとした各地域での領空・領海侵犯や各種の威圧行動の「評価」の結果といえる。

明確な意思表示派のみで再計算

今件のような設問では「無回答・意見留保」も立派な意見。一方、明確な意志表示をしている人における肯定派の割合も気になる。そこで明確な意見を持つ人のうち、どれほどの人が賛意を示しているのか、あるいは反発をしているのかを算出する。意見留保・無回答者を除外し、賛成派・反対派のみで全体を再調整し、その上で賛成派のみをカウントした結果が次のグラフ。

↑ 中国の習主席について、国際情勢に鑑み正しい行動をしているとして評価するか(無回答などを除いた意見表明派のうち、賛成派の割合)(2014年春)
↑ 中国の習主席について、国際情勢に鑑み正しい行動をしているとして評価するか(無回答などを除いた意見表明派のうち、賛成派の割合)(2014年春)

中国自身の高さは別として、パキスタンの値の高さが際立つ。これは元々両国は非常に良い関係にあった(対インドの観点で「敵の敵は味方」的な面)のに加え、ここ数年ではさらに関係を強化し、エネルギー方面での関係を強化しているのが評価されている。また上記にある通りアフリカ諸国での評価が高い一方、中南米を含めたアメリカ大陸全般、ロシア以外のヨーロッパ諸国からの評価は低めに留まっている。

アジア諸国では韓国やタイ、マレーシアの高めな値が目立つ一方、フィリピンやベトナムなど中国とは国境紛争に近い状態にある当事国でも、意外に高めの値が出ていることには注目すべきといえよう。

今件はあくまでも調査期日の2014年3月から4月の時点における、国民ベースでの値。国際情勢、外交問題は日々大きく動いているため、現状でどのような動向を示しているのかは未知数。さらに今件は国民ベースでの話であるため、実際に国同士の外交方針とは必ずしも一致しない。

一方で中国の外交施策が諸国からどのような評価を受けているのかを知るのには、十分参考になるのにも違いはあるまい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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