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コンビニではどのような種類の商品が売れているのか(2014年)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 特にコンビニのレジ前からは商品の販売動向が見えてくる

店舗数の増加で全体売上を底上げ

多種多様な商品を店内に並べ販売しているコンビニ。流行を敏感につかみ対応することから、食品を中心とする小売業界のトレンドの指針ともなる、そのコンビニの商品構成別の売上推移を、経産省の商業動態統計調査の結果を基に確認していく。

まずは年次データ。全店(既存店(1年前にも存在していた店舗)に新店舗含む)を対象とし、データが公開されている1999年以降のものをグラフ化する。なおこのグラフは年ベースのもののため、現時点ではまだ2013年が最新のものとなる。

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(1999年-/前年比、全店=既存店+新店舗)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(1999年-/前年比、全店=既存店+新店舗)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(前年比、全店=既存店+新店舗)(2013年)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(前年比、全店=既存店+新店舗)(2013年)

「タスポ導入に伴うコンビニでのたばこ購入特需」「震災による乾電池などの非食品商品特需」「日配食品やサービスなどの注力の効用」などがよく分かる動きを示している。直近2013年は、雑誌やたばこの低迷の代替品として各種コンビニが急ピッチでリソースをつぎ込んでいる「日配食品など」「サービス」が大きく伸び、期待に応えた成果が出ている。

一方次に示すのは、既存店のみの売上の前年比推移。1999年以降は「1999年」と「タスポ効果が明確化した2008年」以外はすべてマイナス。そして2011年は「たばこ値上げ騒動の反動」と「震災特需」で大きくプラス。しかしそれらの影響も翌年になると薄れ、再びマイナス圏に逆戻り。直近の2013年では下げ幅をさらに拡大する。

↑ コンビニエンスストア売上推移(1999年-/前年比、既存店のみ)
↑ コンビニエンスストア売上推移(1999年-/前年比、既存店のみ)

つまりコンビニ業界では「突発的な出来事が無い限り、新店舗の売上の積み増しで、全体の売上額のアップを支えている」スタイルを有している。よく言えば「常に前進する」「店舗数レベルでの拡大政策」、見方を変えれば「止まったらしぼむ」と表現できよう。

あるいは店舗数による商用領域の拡大で、一層の汎用化・普及化・地域浸透を促進することにより、類似競合他業種の客(の消費)をシフトさせる、刈り取る施策を無意識のうちに行っているのかもしれない。日常における行動範囲・距離が短めとなる中堅層以降、特にシニア層の需要をつかむには、莫大なるリソースが必要となるものの、もっともシンプルで確実な方法ではある。要は「網を広く張る」戦略である。

月次動向を探る

続いて月次データでグラフを生成して状況を確認する。取り扱い期間を2007年1月以降にしたグラフをベースとしている。

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(2007年-/前年同月比、全店)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(2007年-/前年同月比、全店)

「タスポ効果」によりもたらされた2008年5月以降の「非食品」の急激な伸びが一目で分かる。合計売上も大きく伸び、他の分野でも一部プラスを見せていることから、「ついで買い」による相乗効果も合わせてコンビニの業績に大きく貢献している。

2011年はやや状況が複雑。「2010年のタスポ効果反動」の反動による底上げでややプラスへ、2011年3月の東日本大地震・震災以降は特需発生によるプラス化・「サービス」の自粛行動によるマイナス化、そして2011年9月以降は「2010年10月のたばこ値上げに伴う乱高下」の反動による大きな振れが生じている。「非食品」の動きだけでも、「震災起因の需要増加も小さからぬ影響を与えているが、それにも増して2010年10月のたばこ値上げの影響は大きく、持続性は低いものの2008年のタスポ効果すら上回っていた」のが見て取れる。

2013年に入ってからは「日配食品など」と「サービス」が堅調に推移し、それらが全体を支えている。前者はカウンターコーヒー、惣菜やファストフードの健闘、後者はプリペイドカードの伸長や情報端末経由による各種予約サービスの利用に伴うもの。幅広い商品の取り扱い、サービスが利用され、売り上げに貢献している。まさにコンビニは多様なサービスの宝石箱状態である。

なお2014年では4月1日からの消費税率改定に伴い、駆け込み需要とその反動が生じている。しかし上昇幅が小幅であったところから、特需と反動も小規模なものに留まっているのが興味深い。

話題の日配食品

そして特に注目すべき項目「日配食品など」(お弁当や総菜など日持ちしない食品)だが、たばこ購入者による「ついで買い」で発生する底上げ効果を考慮すると、2012年中盤以降は低迷しても不思議ではない。しかし実際には前年同月比でプラスを維持している。振れ幅こそ違えども2010年6月以降プラス値は継続しており、たばこが主要商品の「非食品」との連動性は薄れている。直近1年間では前年同月比2ケタ台の成長を多数はじき出すなど、大いに盛り上がりを示している。

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(2010年-/前年同月比、全店)(日配食品と非食品)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(2010年-/前年同月比、全店)(日配食品と非食品)

「日配食品など」は震災後に限れば、商品の入荷困難などを原因としてやや凹んでいるものの、それでも前年同月比でプラスを維持。その後も順調に伸び続け、2012年に入ってからも5%強の伸びを示し続けている。特需やイベントなどのプラス的な影響は表れにくいが、地道に、そして確実に成長を続けている。

とりわけ2013年に入ってからは順調な成長ぶりを示しているように見受けられる。フライヤーによる各種揚げ物系食品に加え、家計単位での消費動向にも数字として表れている、カウンターコーヒーの堅調ぶりがこの数字の動きからも改めて認識できる。

グラフの形で売上推移を見ると、「タスポ効果」「大幅値上げ前後の動き」だけでなく、コンビニの売上が「たばこ」に代表される、「世の中の仕組みの変更」で左右される場合が多い実態が分かる。とりわけここ数年においては、「たばこ」に影響を受けている。一方、今回スポットライトを当てた「日配食品など」は、世の中の仕組みの変化にとらわれず、むしろ自ら流れを創る形で確実に成長を続けている。

さらには「たばこ」、そして「雑誌」のような、かつてはコンビニの主役的立場にあった商品の代替品的位置づけがなされている、ドリップコーヒーの提供も積極的に行われており、良い結果が出ている。安定した売り上げとリピーターの確保、イートインコーナーの設置によりアロマ的効果に加え、雑誌がその効力を失いつつある「ガラス越しに店内のお客を見せることによる呼び水的な集客効果」をも期待できる。

これからしばらくの間は、引き続きカウンターコーヒーへの注力が各コンビニでも続けられることだろう。売り上げがしぼみつつある「たばこ」「雑誌」と比べればリスク要因は小さく(輸入元の状況変化や為替レートによるコストパフォーマンスリスクはある)、他商品との連動性も期待が出来る。そしてその間は「日配食品など」の売上を底上げしていくに違いない。

もっともコンビニは常にトレンドを追いかける存在でもある。世の中の動きを捕え、敏速に対応していく。数年後には別の商品に大きな注力がなされ、商品構成別売上動向にも変化を生じさせているかもしれない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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