人口増減も含めた世代別の正規・非正規就業者数などの詳細な推移を確認してみる
先日の「世代別に正規・非正規就業者数の詳細な推移を確認してみる」では世代別に正規・非正規の従業員数などの動向を確認したが、各世代の就業者数にはその世代の人口そのものも多分に影響している。そこで今回はその点を詳しく確認するため、同じく労働力調査の公開値を用い、男女別・世代別における、例えば正規・非正規だけでなく、完全失業者や非労働力人口まで含め、労働に係わる観点から区分した人口動態を見ていくことにする。
今件では労働力となりうる15歳以上の人すべてが対象だが、雇用者の正規・非正規別の区分で値を確認できるのは公開値上では2002年以降であることから、2002年以降について精査を行う。その15歳以上の人に関して、就業状態別に仕切り分けしたのが次の図・箇条書き。なお今件では自営業者と家庭従業者は「自営業者など」でまとめている。
・労働力人口…就業者と完全失業者の合計
・完全失業者…仕事が無く調査期間中は仕事をしていない、仕事があればすぐに就ける、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた、以上のすべての条件を満たしている人
・非労働力人口…15歳以上人口のうち労働力人口以外の人
・就業者…仕事をしている人(育児休業なども含む)
・自営業者…個人経営事業を営む者
・家族従業者…自営業主の家族で、その事業に無給で従事している者
・雇用者…会社、団体、官公庁または自営業主や個人家庭に雇われて給料、賃金を得ている者および会社、団体の役員
・正規、非正規の職員・従業員…勤め先での呼称による。「正規の職員・従業員」以外はまとめて非正規の職員・従業員(パ-ト、アルバイト、労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員、嘱託、その他)
次に示すのは、その仕切り分けで精査した、全体と世代別の人数区分。冗長になることから今回は男性に絞って動向を確認する。
15歳以上人口全体はほぼ横ばい。非労働力人口が少しずつ増えているが、これは主に65歳以上の人口比率が増加しているために起きている。また正規や自営業者などが漸減し、非正規が漸増しているのも、大よそ高齢層の増加に起因していることは、先の「世代別に正規・非正規就業者数の詳細な推移を確認してみる」でも解説した通り。さらに2010年をピークとし、完全失業者も減少していることは注目に値する。
世代別に見ると、15~24歳の非労働力人口の多さが目に留まるが、これは学生が含まれているため。それよりも少子化に伴い、総人口が減退しているのには注目したい。正規は漸減、非正規は横ばい、完全失業者も漸減している。
25~34歳は総人口が漸減、35~44歳は漸増から頭打ち、さらには漸減に移行している。人口が減る過程では正規が減り、非正規は横ばいか、やや増加の動きを示すのが共通している。完全失業者は横ばいか漸増する気配もあったが、ここ数年では減少へとかじ取りを変えている。
高齢化の気配を覚えるのは45歳以上。45~54歳では総人口が漸減から漸増に転じている。それに伴い正規・非正規、さらには自営業者なども増えている。完全失業者は横ばいで、この数年はやはり漸減。55~64歳ではいくぶんの人口減少の動きを見せるが(団塊の世代が歳を取って抜けたことによるもの)、非正規が大きく増えて雇用者数の維持が図られている。これは退職者による再雇用が非正規で成された事例が生じているものと考えられる。非労働力人口・完全失業者が共に減っていることが、その裏付けとなる。
最大の増加傾向を示すのは65歳以上。正規の数は漸増しているが、それ以上に非正規と非労働力人口の増加が著しい。15歳以上全体としての非正規および非労働力人口の増加は、多分にこの世代が担っていることが改めて実感できる。そして非正規の増加理由は55~64歳区分同様に退職者による再雇用が非正規で成されたものであり、非労働力人口の増加は定年退職を迎えたのちの悠々自適生活へ移行した人たちがカウントされている。特にこの数年の急増ぶりは注目に値するが、これはいわゆる「団塊の世代」が今世代区分に突入したのが大きい。
女性は兼業主婦によるパートやアルバイトにより非正規の数が大きいこと、専業主婦が兼業主婦に転じて中堅層による非労働人口が漸減していること、男性よりも寿命が長いことから65歳以上の非正規が大きく増加していることが男性と異なるが、大意ではあまり違いはない。
正規・非正規の人数だけでなく、その他の就業状況、そして世代別総人口も照らし合わせてみると、違った一面が見えてくる。2014年分のデータ更新は来年春先になるが、先行記事の「世代別に正規・非正規就業者数の詳細な推移を確認してみる」で用いた2014年第1四半期の値、そして現状のさまざまな他の経済指標などを見る限り、2013年よりも好ましい値であると共に、特にシニア層において大幅な雇用状況の改善が確認できる結果が出るものと考えられる。
そして今件の各種データから、昨今の労働市場に関する指標に対する論調の多分は、シニア層の動向が影響していることが改めて確認できよう。
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