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世代別で完全失業率の推移を確認する

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 世代により失業率にはどのような違いが生じるのか

世の中の景気動向、特に労働市場を推し量る指標の上で欠かせないのが完全失業率。働きたいのに働き場が得られない人たちの割合を示したものだが、世代により大きな違いがある。その動向を、総務省の労働力調査における公開データを基に算出していくことにする。

完全失業率とは労働力人口に占める完全失業者の割合。算出式は「完全失業率=完全失業者 ÷ 労働力人口」となる。この完全失業者には含まれない「仕事はしたいが求職活動はしなかった」人の存在を呈して、完全失業率は失業の実情を反映していないとの意見もあるが、一方で「求職活動をしない人を失業状態と計上して良いのか」との話もある。ともあれ、完全失業率はILOの国際基準にも従った、正当な値ではある。

それではまず男性から、世代別の完全失業率を算出する。

↑ 完全失業率(男性、1973年~、世代別)
↑ 完全失業率(男性、1973年~、世代別)

完全失業率の全体値は漸増していくが、バブル景気時代には減退に転じ、その後バブルの崩壊と共に再び上昇、それどころか上昇幅を拡大する。意外にもITバブル(日本では1999年から2000年)においても減少はせず、ITバブル崩壊時に最大値を示す。その後はジワリと下がり、直近の金融危機直前までは下落傾向を続けるも、2007年の金融危機ぼっ発と共に上昇に転じ、震災の前年2010年に直近ピーク(5.4%)をつけ、その後は漸減していく。

世代別ではバブル期までは最若年層と定年退職直前期層(55~64歳)がほぼ同率で推移していた。前者は新規採用にあぶれるなどのパターン、後者は早期退職組(自主、会社都合)によるもの。ところがバブル期を経て両者の差は開き、最若年層の完全失業率は他世代との差を大きなものとしていく。若年層の高失業率は先進国、特に労働市場が成熟した国でよく起きる現状だが、日本もまたそれに習う結果が出でいる。

バブル期の減退、バブル崩壊後の上昇、ITバブルとその崩壊や、金融危機に伴う上昇などは全体値の動向に連動するものだが、世代によって振幅に違いが生じている。特に若年層は景気動向の影響を大きく受けやすいことが分かる。見方を変えれば、若年層の失業対策には景気回復が一番のカンフル剤になっていることを意味する。

続いて女性。

 ↑ 完全失業率(女性、1973年~、世代別)
↑ 完全失業率(女性、1973年~、世代別)

景気動向による上下感、ITバブル崩壊時に最大値をつけたことは男性と変わりがない。ただし女性は男性と比べて労働力人口が少なく、特に高齢層でそれが顕著なこと、完全失業者も合わせ労働力調査の結果は万人単位での公開となるためぶれが出ることから、65歳以上のグラフがやや不自然な形に。また男性と比べると最若年層とそれより年上の層との差異が小さい。最若年層の完全失業率がやや控えめなのが原因。

男女とも景気動向に左右される部分が多く、そして男女の雇用状況の違い(女性は兼業主婦のパート・アルバイトが多い)も出ているが、大よそ完全失業率は漸増し、今世紀に入ってからは高止まり、そして下落傾向を見せ始めている。景気を推し量る値でもあるだけに、特に若年層の値の動向は、最近富に語られるようになった世代間格差を示すことからも、今後の動向には大いに注目したいところではある。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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