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「世界で一番の脅威な問題とは」で分かる各国が抱える問題

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 世界に襲い掛かりうるさまざまな危機。もっとも驚異的なものは……!?

世界全体の安寧を揺るがすような問題は一つでは無く、多様な事案が存在する。それらの中でもっともリスクの高いものは何だろうか。アメリカの民間調査機関であるPew Research Centerが2014年10月に発表した各国の人々に尋ねた結果「Middle Easterners See Religious and Ethnic Hatred as Top Global Threat」からは、その国々のお国事情が透けて見えてくる。自国内において強く懸念が生じられている要件を、世界全体としても一番脅威であると考える傾向があるようだ。

20世紀末までにおける世界最大の脅威・リスクといえば、多くの人が挙げたであろう「米ソ対立による核戦争」。核兵器が多数存在する以上、そのリスクは今なお世界の脅威であることに違いはないが、21世紀は世界の、そして人々の脅威が分散、複雑化、多様化する世紀ともいえる。今調査では「宗教・民族間対立」「不平等」「エイズなどの病症」「核兵器」「汚染や環境問題」と5つの「世界全体の脅威となり得るもの」を挙げ、どれが一番世界にとって大きな脅威となるかを回答者に答えてもらっている。

あくまでも「世界における驚異」ではあるが、結果としては次の通り、大よそ回答者の国が抱えている問題が驚異・懸念として強く出る形となった。

↑ 次のうちどれが一番世界にとって大きな脅威であると思うか(2014年)
↑ 次のうちどれが一番世界にとって大きな脅威であると思うか(2014年)

グラフの並びは「宗教・民族間対立」が多い順。レバノンやパレスチナのような紛争地域、そして昨年スコットランド独立住民投票が行われ分割の危機が体現化する可能性が生じたイギリスで、高い値を示している。それらの国以外も上位陣では、国際ニュースで色々と民族間問題、宗教問題で騒乱の話を見受ける機会が多い国が並んでいる。

一方「不平等」はヨーロッパ地域で多めの値が出ている。欧州債務危機で景気が低迷した期間が続いていること、EUという形で経済的な統合がなされ、それがかえって国毎の差を大きく見せる形となったことが要因。他方「エイズなどの病症」はアフリカ大陸の国家で圧倒的に多く、対象国の状況がうかがい知れる。

「核兵器」はトルコやウクライナ、パキスタン、そして日本などの値が高い。隣国が保有し、あるいはその懸念があり、自国周辺で使用される可能性が少なからずあることが、懸念を底上げしている。

これらの選択肢において、もっとも高い値を示した項目ごとに国を区別したのが次の図(報告書から抜粋、加工)。

↑ もっとも高い懸念種類別国分け
↑ もっとも高い懸念種類別国分け

「不平等」「エイズなどの病症」は一定エリアとしての地域特性、それ以外は個々の国の事情が色濃く出ている。中国やフィリピンで「汚染や環境問題」への懸念が一番高い値を示していることには、なるほど感を覚える人も少なくあるまい。各国の国内・周辺環境における状況が、そのまま「世界全体の脅威」として多分に認識されていることが分かる。

今件調査はほぼ同じ条件下で7年前の2007年にも実施されている。その7年の変移のうち、「不平等」「宗教・民族間対立」の値が大きく増加した国、あるいは元々大きかった国に関して、報告書では特記事項として例示している。

↑ 次のうちどれが一番世界にとって大きな脅威であると思うか(前回調査から大きく伸びた項目がある国、一部)
↑ 次のうちどれが一番世界にとって大きな脅威であると思うか(前回調査から大きく伸びた項目がある国、一部)

金融危機や欧州債務問題の深刻化などを経て、ヨーロッパ各国で「不平等」感が強く認識され、それが世界全体の脅威でもあるとの判断が下されている。ギリシャは前回調査では対象国では無かったようでデータが存在しないが、スペインに続き高い値を示している。

また「宗教・民族間対立」ではレバノンやエジプト、トルコなどで大きく上昇している様子がうかがえる。いわゆる「アラブの春」を経て混乱がより深まる、悲しい結果・状況が数字となって表れた次第ではある。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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