二十歳前後の過半数は実家暮らし…米国若年者たちの暮らしぶりを探る
金銭的な問題や親の頼みなど多様な理由で、学校を卒業して就職しても独立せずに親と同居する、つまり実家暮らしを続ける人は少なくない。若年層の実家住まいの度合いは、社会の実情を知る一つの切り口となる。今回はアメリカ合衆国国勢調査局の公開値を基に、同国の若年層の実家住まい率を確認していく。
「実家暮らし」の定義は親=世帯主の子供として実家に居住し、その世帯の構成員として生活している状態。この状態にある18歳から24歳、大よそ成人した直後において、もっとも古い収録データとなる1960年時点では、男性がすでに過半数の52.4%、女性は1/3強の34.9%がアメリカでは実家暮らしだった。
今データだけでは各世帯の内情まで推し量ることは難しいが、経済的に独立出来ない人が含まれているのだろう。また今件値は「世帯主の子供」なので、いわゆる二世代住宅的な居住スタイルは対象外となる。つまり未婚が前提。上下を繰り返しながらも実家住まい率が上昇していることは、この世代の未婚率が上昇していることをも表している。これは「アメリカ合衆国の初婚年齢推移などをグラフ化してみる」で具体的に解説しているが、1960年代以降に初婚年齢が上昇していることとも一致する。
直近の18~24歳における実家住まい率は男性で58.2%、女性でも51.5%。男性の方が実家住まい率は上で、1984年に付けた最大値61.7%には及ばないが、この数年は6割近くで推移している。
また上昇の傾向だが、大きな不景気時期に大きく値を上げる傾向があるようにも見えるが、事例がまだ少数のため、裏付けは難しい。景気が悪化すると失業率の上昇や経済的困窮から一人暮らしが難しくなる、と考えれば道理は通る。男性で最大値をつけた1984年を見ると、1980年から1982年にかけて断続的に不景気が発生しており、これが影響をもたらしたと考えると納得はできる。直近の2007年から2009年における金融危機も直近の上昇と連動しているようだ。
年上の25~34歳ではさすがに実家住まい率は大きく減るが、その動き方は18~24歳層とあまり変わらない。
直近の2014年では男性17.7%、女性11.7%。男性は2割近く、女性も1割強が実家暮らしをしている。女性の実家住まい率が過去と比べて大きく上昇しているのは、単に景気の良しあしだけでなく、結婚観の変化をはじめとした社会生活様式、文化の変化も影響しているのだろう。
日本同様アメリカでも平均初婚年齢は上昇し、結婚に対する価値観の変化が生じている。今件の「若年層における実家住まい率の上昇」の事実もまた、アメリカにおける結婚観が変容を見せている一端をうかがい知ることが出来る。社会観、文化様式が大きく異なるためそのままトレースするのは無理があるが、社会様式の変化を知る上では、アメリカの動向は大いに参考になるに違いない。
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