魚肉ソーセージの生産量の移り変わりを確認する
今やスーパーやコンビニだけでなく、ディスカウントストアやドラッグストアなどでも見かけるようになった魚肉ソーセージ。元々魚肉ソーセージは牛豚肉の代替品的な側面もあったのだが、輸送・保存技術の発達で容易にそれらの食用肉が入手できるようになると共に、摂取量は減少している。その生産量の実情を日本缶詰協会の公開データから探る。
次に示すのは、その公開データを元に生産量の推移をグラフにしたもの。
日本缶詰協会の歴史ページをひも解くと、大正時代から魚肉ソーセージ・ハムの開発は進んでいたが、1938年にはマグロを原材料にしたツナ・ハムの製造がスタートする。太平洋戦争中は生産が一時中断していたが、戦後に入り1948年にはツナハム、1952年には魚肉ソーセージの本格的生産が始まっている。グラフのデータが1953年からスタートしているのは、そのころから「魚肉ソーセージ」の量産が開始されたことを示している。
1970年代前半には生産量がピークを迎えるが、使用していた食品添加物に発がん性などが指摘されて使用禁止となり、魚肉ソーセージの歴史は大きな転機を迎える。1974年には問題視された防腐剤の使用を取りやめると共に、「高温高圧殺菌(高温殺菌製品)」「pH、水分活性を調節し過熱殺菌(pH調製品・AW調整品)」「防腐剤を使用せず 従前同様の加熱殺菌をして10℃以下で流通保存(低温度流通製品)」の3通りによる製造方法へとシフトする形となった。
さらにその後材料費の高騰(200海里問題が要因)、冷蔵庫の普及や輸送・保存技術の進歩による牛肉や豚肉などの食肉の浸透に伴い、代替品の魚肉ソーセージの価値は相対的に低下していく。それと共に生産量も減退。企業努力や突発的な出来事(直近ではBSEによる代替品の需要増加、新型インフルエンザ流行に伴う非常用保存食料としての着目)により生産量がある程度増えた時期もあったが、1990年後半以降は年間6万トン前後の生産量を維持している。ピーク時の生産量は1972年の18万0491トン。直近データの2013年分は5万5506トン。実に1/3以下にまで減少している。
それなりに長い保存期間を誇り、そのまますぐに食べることもできれば(中身を取り出すのが容易で調理が要らない点は、特に幼少時向けへの非常食としてのポイントが高い)、料理に使っても美味しく食べられる、さらに価格も比較的安めな「魚肉ソーセージ」。積極的に口にする機会は少なくなったかもしれないが、1本単位、あるいは数本まとめた束で気軽に手にいれることが可能。今回の記事を機会に、魚肉ソーセージの再評価をしてみてはいかがだろうか。
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