自衛隊の防衛力への国民の要望、増強は3割、現状維持6割、そして縮小は5%足らず
国際社会情勢の変化、兵器技術の向上、近隣周辺諸国の外交姿勢の変貌・圧力の増加などを受け、自衛隊に対する期待は高まりを受けている。それではその期待の基板となる防衛力そのものに対する要望は、どのような状況にあるのだろうか。内閣府が定期調査をしている「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」の結果から、その実情を確認する。
「全般的に見て」との但し書き付きの上で、自衛隊の防衛力について回答者の意見として「増強」「縮小」「今の程度」のいずれの状態(変化)を望むかを尋ねた結果が次のグラフ。「増強」を望む人は29.8%と3割近くに登った。現状維持を望む「今の程度」は6割近くで最大多数の回答率。一方「縮小」回答者は4.6%。
男女別では男性の方が、年齢属性別では高齢層の方が「増強」を望む声が強い。ただし20代は例外で、60代に近い形で「増強」を望む声が強い。一方で「分からない」は女性や70歳以上の人が多い。いずれにせよ、「縮小」を望む声は少数派には違いない。
これを前回調査となる2012年当時の回答と比べ、その差を算出したのが次のグラフ。プラス値が大きいほどその意見が増加した、マイナスほど減少したことを意味する。
ほぼ全世代で「増強」が増え、「分からない」「縮小」が減っている。特に20代と60代以降の増加が著しい。また全属性で「分からない」の回答率が減り、防衛力に関して何らかの意見を持つ人が増えている。賛否はともあれ、理解啓蒙の類が浸透していることに違いは無い。
これを経年別に見ると、2009年にややイレギュラーな動きがあったものの、ほぼ一様に「増強」意見が増加、「縮小」意見が減少し、「現状維持」がそのままの値を維持している。
2009年から2012年にかけては「増強」意見が10ポイント以上も増加しており、これまでの「割合上では縮小派分が増強派に移行し、現状維持派はほぼ変わらず」の状態に変化が生じてきた可能性がある。2012年から2015年にかけても同じように「縮小派の減少」「増強派の増加」が同時に起き、さらに直上のグラフの通り「分からない」派も「増強派」に転じている。
原文では今件設問に関しては「防衛力」「自衛隊は増強・縮小」との表現のみ用いられ、具体的な説明は無い。「防衛力」(≒戦力)との表現では戦車や戦闘機、護衛艦など「直接の正面戦力」のみをイメージしがちだが、実際には、特に「防衛力」という言葉からは正面戦力だけでなく、各種支援体制、情報・補給システム、整備能力、柔軟性に富んだ「決まり」の整備、果ては各隊員の士気維持・向上のための仕組みまでもが意味するところとなる。
2012年以降の「増強派」の増加は震災での活躍ぶり、そして昨今の国際情勢を受けてのものであることは容易に想像できる。しかし正面装備だけでなくそれ以外の「普段は眼に留まることの無い、自衛隊の『力』の一側面」も防衛力を担う大切な要素なことを認識し、全般的・包括的な観点における「防衛力」の整備こそが望まれよう。
■関連記事: