Yahoo!ニュース

国民が考えるこれまでとこれからの自衛隊の存在意義

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 国民が抱く自衛隊の存在意義とは……(陸自公式HPから引用)

軍事的能力をはじめとする様々な能力を有する自衛隊は、他の公的機関以上の責務を持ち、また期待を受けている。昨今では災害対応や、国内の治安維持や国の安全の維持確保が特に注目されているが、それ以外にも自衛隊の存在理由は多種多様に及ぶ。そこで内閣府が定期的に調査を実施している「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」を基に、日本国民が考えている自衛隊の存在理由、そして今後力を入れるべきとする点を確認していくことにする。

実際法的などの面での定義では無く、回答者自身の認識として、現在における自衛隊の存在理由について、複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。もっとも多くの人が同意を示したのは「災害派遣」だった。8割以上の81.9%が同意を示す形となった。東日本大地震・震災における活躍ぶりで改めて評価されたと考えて良い。

↑ 自衛隊の存在理由(複数回答)(内閣府調査)(2012-2015年)
↑ 自衛隊の存在理由(複数回答)(内閣府調査)(2012-2015年)

次いで多くの人が回答したのは「国の安全の確保(周辺海空域安全確保、島嶼部への攻撃対応等)」。こちらは74.3%。これまで定期便的に展開されていたロシア機に加え、頻度とリスクの上で急増した中国機の領空及び近接空域への侵犯行為や、領海への侵入行為、竹島や尖閣諸島などの状況を受け、自衛隊の存在理由・意義を再確認した・させられた人が多数に及んだと考えられる。次いで「国内治安維持」「国際平和協力活動への取り組み」が続き、一段下がる形で「弾道ミサイル攻撃への対応」「民生協力」などが並んでいる。

広い範囲で「外敵の侵略から国を守る」との観点では、直接的な表現の「国の安全の確保」以外に間接的な平和環境の整備も有益に違いない。その他の項目も皆、自衛隊本来の意義が大いに評価されていることに変わりは無い。

前回調査からの変移を見ると、差し引きされた項目が多く比較が難しいものの、「国内治安維持」の回答率が増加していることが分かる。先の珊瑚礁周りの事案・報道が影響したのだろうか。

一方、「これまで」ではなく「これから」の意義、言い換えれば今後どのような面に力を入れて行くべきとの点でも、トップ2は「災害派遣」と「国の安全の確保(周辺海空域安全確保、島嶼部への攻撃対応等)」で変化はない。

↑ 自衛隊が今後力を入れていくべき面(複数回答)(内閣府調査)(2012-2015年)
↑ 自衛隊が今後力を入れていくべき面(複数回答)(内閣府調査)(2012-2015年)

「これまで」と比べ順番にほぼ変化は無い。現状の存在理由の認識がそのまま、今後も重点を置いてほしいとの希望につながっている。

「現状」「今後」双方の項目で目に留まるのは、「災害派遣」の相変わらずの高値と共に、「国内治安維持」の値が前回から大きく増加したこと。自衛隊が活躍する場面における国内での治安維持への期待の高まりは、「国の安全の確保」の高さと合わせ、昨今の国際情勢(特に周辺環境)に対し、緊迫感を覚える人が増えているのが推測できよう。

■関連記事:

日本の高さは竹島・尖閣が原因か…戦争やテロのリスク、国民はどれほど懸念しているか(2010-2014年)(最新)

安倍外交をアジア・アメリカはおおむね評価、反発するは中韓のみ

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事