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「日本の戦争責任への謝罪は十分か」「原爆投下は正当化できるか」太平洋戦争に関する日米国民の認識を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 真珠湾攻撃時に日本機から撮影されたとされる情景(米海軍公式サイトより)

太平洋戦争終結から70周年を迎える今年、日米双方の戦争に関する意識調査が多方面で行われている。米調査機関Pew Research Centerが2015年4月に発表した調査結果「Americans, Japanese: Mutual Respect 70 Years After the End of WWII」から、同戦争に対する両国民の認識について見ていくことにする。

まず最初に示すのは、1945年8月に広島・長崎に相次ぎ投下され、日本の終戦を決定づける一因となった原子爆弾(原爆)の投下について、これを正当化できるか否かについて。

↑ 1945年の米軍による広島・長崎への原爆投下は正当化できるか
↑ 1945年の米軍による広島・長崎への原爆投下は正当化できるか

日本では正当化できないとの意見が多く79%。出来るとの意見は14%のみ。他方アメリカは正当化できるとの意見は56%で、出来ないとの意見は34%。経年変化による調査結果が無いので比較は出来ないが、思った以上に肯定派が少ない。

原爆を相手国の都市部に投下したことへの賛否は今なお両論相次ぎ、どちらか一方の意見が正当化され、他方が完全な間違いというものでは無い。ただし当時は現在と比べさまざまな影響に関する検証が成されていない・遅れており、アメリカ軍部でも多分に「非常に威力の大きな兵器」で、「少々通常兵器とは異なる影響が生じる」程度の認識しかなかったのは否めない。仮に戦後直後に同様の調査が行われていれば、アメリカでは圧倒的多数で「正当化できる」との意見が占められたことだろう。

太平洋戦争においてもう一つ気になる事案として挙げられるのが、日本における戦争責任問題。

↑ 第二次世界大戦における日本の戦争責任への謝罪は十分か
↑ 第二次世界大戦における日本の戦争責任への謝罪は十分か

日本では48%が十分とし、15%が謝罪の必要はないとの回答。不十分との認識は28%。アメリカでは十分謝罪済みとの認識は37%に留まっているが、その代わりに元々謝罪の必要はないとの認識は24%と高め。不十分との意見は日本とほぼ同率の29%。

なお直接今件に関係は無いものの、日本の姿勢と引き合いに出されることが多いドイツに関して、ドイツ自身の責任についても同様の調査が行われており、その結果が報告書では提示されている。それによれば謝罪は十分とする意見は33%、謝罪の必要は無いとの意見は21%、不十分との意見は37%。不十分の意見がやや高めだが、認識はアメリカのそれに近い。

最後に一部太平洋戦争とは直接関係も無い部分もあるが、そして聴取対象がアメリカ人限定だが、アジア周辺国における軍事問題などへの認識について。

↑ アジア関連の問題におけるアメリカ人の認識(どれ程知っているか)
↑ アジア関連の問題におけるアメリカ人の認識(どれ程知っているか)

北朝鮮の核開発問題は自国にも直接関わり合いがあるため、認識度は極めて高めで8割以上が知っている。ところが尖閣諸島など中国と日本などをはじめとした諸外国との領土問題への認識度は6割に留まり、知らない人も4割近くいる。さらに日本の「従軍慰安婦」とされる問題は認識率が4割、全く知らない人も6割近く。

今結果からはこれらの問題に関するアメリカの具体的な動向、認識度の一端がつかみ取れるに違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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