図書館の 利用者数は 増えている
出版業界の軟調さの理由の一つとして挙げられているのが読書離れ。しかし図書館の利用性向を見る限り、少なくとも読書が敬遠される動きは無いようである。その実情を文部科学省が定期的に調査・結果報告を行っている「社会教育調査」から確認していくことにする。
次に示すのは日本国内の図書館における登録者数と帯出者数。登録者とは貸し出しなどの各種サービスを利用するために図書館に登録をしている人、帯出者とは図書館外への本の借り受けを行った人で、延べ人数で数えられている。例えば2010年度では1億8756万人なので、のべ1億9000万人近い人が図書館から本を借りたことになる。もちろん延べ人数なので、一人で1年間に10回借り受ければ、10人としてカウントされる。
登録者数は大きな変化が無く、3000万人前後でほぼ横ばいを維持、一方で帯出者数は確実に増加傾向を示している。直近の2010年度では登録者数3396万人に対し、帯出者数は1億8756万人。
登録者数に大きな変化が無く、帯出者数が増加していることから、延べ貸出冊数が増加していることは容易に想像が出来る。実際、調査結果ではその通りの値が出ている。
1回の帯出あたりの借り受け冊数は大よそ3.6冊前後で大きな変化が無い。一方貸出冊数は漸増を示しており、1995年度から2010年度の間に、およそ7割近く増加している。
帯出者数は増加、貸出冊数も増加、1回の帯出あたりの図書館側からの貸出冊数には大きな変化が無い。結論としては図書館で本を借りる人の借り受け回数、つまり帯出回数が増加していることになる。各値から算出した、登録者による年間平均帯出回数を見るとその通りで、じわりと増加する動きにある。
要は本を借りるために図書館に登録をしている人は、より積極的に図書館に通い、借り受けをするようになりつつある。直近では図書館に登録をしている人は年5.5回ほど本の借り受けを行い、その際に借りる本の冊数は大よそ3.6冊との平均像が浮かび上がってくる。
「社会教育調査」は3年おきの実施で、次の公開値となる2013年度(2013年4月~2014年3月)分は2016年春先の公開予定であるため、現状では2010年度(2010年4月~2011年3月)分の値が最新のものにとなっている。2013年度分はスマートフォンが急速に浸透しつつある状況においての初めての計測値となることから、大いに注目したい。読書離れ、本離れの実態が、図書館利用の観点でより確実に明らかにされるに違いない。
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