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弁当持参率35%・サラリーマンのおこづかいと昼食代の関係を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 昨今では健康重視等の理由で男性も自ら弁当を作る話も

ケース1:出勤日すべてで昼食代が必要だった場合

サラリーマンにとって数少ない息抜きのひとときが昼食の時間。昨今ではお財布事情や健康への配慮からお弁当を持参する人も増えているという。その実態を定点観測的に調査を実施している新生銀行の調査報告書「サラリーマンのお小遣い調査」から確認していく。

次に示すのはサラリーマンの一か月あたりの平均出勤日数を分かりやすく20日とし(1か月を4週間、週5日勤務)、休日は自宅で食べることから昼食代は使わない状況を設定、1日の昼食代を20倍し、一か月の昼食代を暫定的に算出、おこづかい額に占める割合を計算した結果。実際にはサラリーマン全体では出勤日の一部、あるいは日常的に持参弁当を食する人もいる。今件昼食代の項目における調査様式でも「弁当持参時をのぞく」とあるため、こづかい全体に占める比率はもう少し低くなる。その状況設定における検証は次の項目で行う。

↑ サラリーマンの小遣いと昼食費が占める割合(月平均勤務日20日すべてを要昼食代と仮定した場合)(-2015年)
↑ サラリーマンの小遣いと昼食費が占める割合(月平均勤務日20日すべてを要昼食代と仮定した場合)(-2015年)

・サラリーマンの昼食費はおこづかいの2割から3割。

・ITバブル崩壊、前回の金融恐慌時(2002年以降)にこづかいは激減するが、それには当初昼食代を削ることで対応しようとしている。しかし「昼食係数※」が上昇していることからも分かる通り、食生活の変化にはしばらく時間を要している。

・昼食係数の上昇は2004年がピーク。その後ようやくこづかい額も回復し、余裕が出てくる。しかしその後も昼食代の額面減少は継続する。

・2007年に昼食係数はITバブル崩壊水準にまで回復。その後直近の金融危機に伴う不景気でこづかい額は減少するが、先の不景気で慣れたこともあり、昼食費も漸減し、昼食係数は横ばいを見せる。

・2011年はおこづかい額の激減もあり、昼食係数は一時的な増加。しかし翌年には再び減少し、それ以降は一定水準を維持している。

・直近2015年はおこづかい額は減少し、昼食代は増加、結果として昼食係数も大幅増加。

※「昼食係数」……おこづかい全体に占める昼食費の割合。生活の豊かさを示す指標として使われている「エンゲル係数」を模した設定

おこづかいの中の使用先では欠かせない存在の昼食費だが、額面そのものは少しずつ削られる傾向にある。2001年当時は710円だった昼食代は前不景気以降漸減し、景気が回復しても戻る幅は最小限のものとなり、ここ数年は500円台を維持している。いわゆる「ワンコインランチ」(500円玉一枚。実際には500円玉にプラス100円玉が必要だが)時代が続いている。今年2015年は久しぶりに前年から60円プラスの600円台をつける形となったが、これは昼食の質向上に加え、消費税率の引き上げも含めた食品価格の上昇によるところが大きい。

ケース2:「持参弁当」で昼食代が不要だった場合を考慮

次に示すのは調査対象母集団のサラリーマンにおける、出勤日での昼食回数の比率内訳。例えば2015年の「持参弁当」は35%なので、全サラリーマンの全出勤日における全昼食のうち、ほぼ1/3は持参弁当となる。「全サラリーマンの1/3が、毎日持参弁当を食している」わけではないことに注意。毎日以外に、一日おきに持参弁当、そうでない時は外食といったパターンもありうる。

↑ 平均的な一週間の昼食(勤務日)における昼食回数の内訳(-2015年)
↑ 平均的な一週間の昼食(勤務日)における昼食回数の内訳(-2015年)

一時期増加の動きを示した「弁当(コンビニなど)」だが、この4年に限れば確実に減少中。2012年以降トレンドが変化している。また似たように外食も減っており、高コストの選択肢を避ける動きが推測される。

今年はいくぶん上昇したが、この数年「社員食堂」の利用性向が減っているのも目に留まる。安くて確実、安定した昼食との特性から、サラリーマンにとって味方のはずなのだが、回答者の企業すべてに社員食堂があるとは限らず、社員食堂そのものの設置比率が減っている可能性はある。企業側の経費削減のおり、社員食堂が閉鎖されるとの話は決して稀有なものではない。

一方で「持参弁当」はこの4年の間に増加の一途をたどっている。2009年以降に限れば最高値の35%。金融危機ぼっ発以降持参弁当が一種のトレンドとなり、サラリーマンの間にもお弁当を持参する動きが活発化したことは承知の通り。今件調査では2012年に一度値を大きく減らしたものの、再び持参率は上昇を続けている。予算調整の意味合いの他に、健康志向も一因なのだろう。

これら昼食の選択肢のうち、昼食代を使わない「持参弁当」分を除き、上記における計算式と同じように「月昼食費」「こづかいに占める昼食費率」を算出したのが次のグラフ。こちらの方が、より実態に近い。

↑ 月昼食費(実算、円)とこづかいに占める純昼食費率(-2015年)(月勤務日20日、弁当持参時のみ昼食代ゼロと試算)
↑ 月昼食費(実算、円)とこづかいに占める純昼食費率(-2015年)(月勤務日20日、弁当持参時のみ昼食代ゼロと試算)

勤務日20日すべてを要昼食代とした場合の昼食係数は2011年に大きく跳ね、それ以外は2007年以降ほぼ漸増の動きを示している。しかし持参弁当を考慮に入れると、純昼食係数(純昼食比率)は横ばい。おこづかい額に対する昼食費の負担が増したよう見えていたが、実際には持参弁当率が上昇していることで巧みなバランスが取られており、金額的な負担率はさほど変化がない状態なのが分かる(あるいは逆に、負担が大きくなりそうなので持参弁当率が増加しているのかもしれない)。

ただし2015年に限れば有意な形で比率は上昇している。おこづかい額の減額度合いが大きく、全体のバランスにも大きなゆがみを生じさせていることがうかがえる。

もっともこれはあくまでも、持参弁当派とそうでない人たちを全部まとめた上での平均値。「弁当持参派とそうでない人それぞれにおけるおこづかい額」は公開されていないため、個人ベースでの「弁当持参による、実質的な『昼食代を除いたおこづかい額』」動向までは把握できない。また持参弁当でも飲み物を必要とするため、昼食代が毎食ゼロなのも難しい(水筒持参や会社で出されるお茶などを飲む場合もありうるが)。

いずれにせよ、昼食動向を見ても、サラリーマン諸氏の懐事情が厳しいことに変わりはあるまい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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